1話 腐敗臭に囲まれて
少しばかり時間がたち落ち着いた俺は、周りを見渡した。見渡した瞬間ここが確実にではないことを理解した。
なぜなら俺の周りには俺と同じようにゾンビ的なやつらがいたからだ。ある者は矢が体に何本も刺さってたり、ある者は体に穴があいて内臓的な何かがちょっと出てたり……いずれも致命傷を負っていて動けないはずの者たちばかりだったのだ。ぼろぼろすぎてもはや女か男すらも分からない奴もいた。そんなやつらが広めで暗い洞窟で動き回りながら「アァー」とか「ヴァァー」とか言ってる光景はなかなかシュールだ。
俺はとりあえず立ち上がり洞窟を探検しようと思った。正直、頭が展開についていけないが体が動いていないとそのまま頭がいかれそうだったからだ。幸い同業者(?)の他のゾンビたちは俺には襲ってこないようだった。同じゾンビだからだろうか。
――――洞窟の探検は意外とスムーズにできた。暗かったがゾンビの特性なんかか知らんが夜目がきくらしい。探検の結果だが俺が倒れていた洞窟はそこそこの広さで――――探索で確認したゾンビ10体が誰ともぶつからず徘徊できるだけの広さだった。一体一体に部屋のようなスペースが確立しているらしく、同じ場所をうろうろと歩いているようだ。俺のスペースは俺が仰向けに倒れていた場所だろう。寝床の心配はなさそうだ。
しかし、今はそんなことより俺に最大と言ってもいい危機が訪れていた。
(お腹……減った……)
ふざけているように見えるかもしれないが別にふざけているわけじゃない。ただ今俺は強烈な空腹感に襲われていた。これってまずいんじゃないかと思う。あくまでゲーム情報だがゾンビはよく食欲だけで動いているという。だからどんな者でもかまわず食らいつくのだ。
つまりこの腹減りを納めないといつか自我が崩壊してしまうのではないか。不安がぬぐいきれないままどんどん腹は減っていく。……もう我慢が出来くなった俺は一つ決心をした。
(そうだ、狩りに行こう)
俺は洞窟の外へ向かった。洞窟の外はまだ日光が射していて昼だということが分かる。そういやファンタジーとかのゾンビって日の光に弱いって設定が多いがここではどうなんだろうか。
恐る恐る右腕だけを伸ばして日光に手を出す。・・・うん。大丈夫みたいだ。日光にさらされた俺にグロイ右腕はさらにはっきり白く見えて死体であることを再確認した。でも良かった。ずっと日の光を浴びれない体質とかになってたらシャレにならない。引きこもりは嫌だし。
安心して外に出る。意気揚々と外に出た俺をなぜか羨ましそうに出入り口近くのゾンビが見ていたが気にしない。
どうやらここは山のような場所でまさに未開の地で人間が踏み入れた形跡はなく、見たことも無い木やら草やらが生い茂っていた。
適当に散策していると兔のような魔物を発見した。なぜ魔物だと思ったかは頭に角が生えてたからだ。白い毛皮に包まれていて小さい頭の天辺にはその頭には不相応な30センチぐらいの角が生えていた。名前を付けるならホーンラビットという名前が妥当だろう。しかし、ここは俺のネーミングセンスをフル活用してあえて違う名前を付けようと思う。
よって、この魔物はツノウサギと名づけることにした。
異論は認める。反論も認める。
俺は(名前が即決した)ツノウサギの後ろの草の茂みに隠れていた。ツノウサギは体格こそ小さいが頭に生えている角がまさにあなたを突き刺します!と光っている。今のツノウサギは草を食んでいて周りをそこまで警戒していないようだ。草食動物なのに警戒を怠るとは!それが俺にとっては好都合なんだが。とにかく腹が減ってきた。たぶんあれは食える。俺の本能がそう告げている。問答無用で食うしかない。よし……1・2の3!……で行こう。まてよ、3!の ん のとこか ん の後で出るか……。話はまずそれからだ。
転生をしてもなお、ビビりでへたれな俺であった。
しばらくしてとりあえず行く決意は固まりそして3の ん で行くことも決まった。←これ重要!
ツノウサギは俺の茶番に付き合ってくれるかのようにいまだに草を食んでいた。
1・・・2の・・・3!!
「ヴォオ゛オ゛オ゛!!」
口から変な声が出たが気にしない、これがゾンビクオリティー(?)
背後からの奇襲でツノウサギは戸惑っているようだった。俺を見ておろおろとしているようだ。
俺はそのスキを見逃さずに手に持った武器……武器?待てよ……。あわてて自分の手を確認する俺。当然俺は何も装備していなかったため、その手の中には何も入っていなかった。
(あれ?俺・・・武器持って無くね?)
書きためた物です。次も投稿します。
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