0話 プロローグはデッドエンド
よくある転生物です。人外転生が好きなのでこの話を書きました。不定期更新ですがなんとか完結まで持っていこうと思います。話の途中、グロテスクな表現があるかもしれませんがなるべくコメディっぽくする予定です。読んでいただければ幸いです。
ゾンビを知っているだろうか?いろんな解釈はあるだろうが……簡単にいえば動く死体ってやつだ。アンデッドとかリビングデッドとも呼ばれている。だが日本人的にはゾンビって呼ぶ方がいいかもしれない。
俺こと五十嵐大助は日本に住むごく一般的な高校2年生だ。健全な男子高校生である。所属部活は帰宅部。凡人中の凡人で最近は俺には何もないところが特徴なんじゃないかと思うぐらい何もない。帰宅部によって空いた時間ゲームやったりパソコンやったり……赤点になっては困るのでそこそこの勉強ぐらいはしている。
が、そんな俺にも好きなものはある。それはゾンビだ。
これだけ言ったらそれこそ変人扱いだろう。俺はゲームでゾンビを殺すのが好きなんだ。ゲームは全般やってるけどゾンビ物のゲームは特に好きだ。バイ〇ハザードやらデッドラ〇ジングやら……。「ゾンビって言っても人間の姿だからカワイソウ!」……なんて思うだろうか?だがゾンビはもう死んでるしあのグロイ外見、化け物じみた顔、特に躊躇がなく殺せるだろう。それにあっちは殺しにかかってるんだから正当防衛だ。
まぁ所詮ゲームの話。現実にもしアウトブレイクとやらが起きたら俺は真っ先に死ぬ自信がある。なぜかと言うと俺は自分がヘタレだと自覚しているからだ。ゾンビ映画で言えば最初に殺される人間Aって感じだ。俺は力があるわけでも無い、頭もよくない、女にもモテない、特技も無いしイケメンってわけでもない。なんの面白みも無い人間、それが俺だ。
そんな俺が今日、いつもと同じように歩いて、高校に登校する。面倒だし行きたくないけど不登校になる勇気もない。まさに無いないずくしだ。
眠い目をこすりながら、歩いて20分ぐらいの高校へ通う。変わらない日常、特に何の事件も無い……と思っていた。そう思っていたのだ。
事故が多い道。そんな道を俺は歩いていた。通称、地獄道とか言ったか。
地獄道なんて大層な名前が付いていると思うだろうが実際にこの道での車の事故率はかなり高いらしい。見通しが悪い上にミラーも設置されておらず事故率が高いのはうなずける道だった。
そんな危険な道が俺の通学路なわけなんだが、どうせ自分は事故なんかには無縁だろう……と、思ってた時期が俺にもありました。
プゥーーーーーーーーーー!!!!
車のクラクションの音が聞こえた。なんだろうと振り返ると……大型トラックが迫ってきていた。
かなり近く、もはやよけることは不可能だと言える距離だった。もしこれが現実とかじゃなく小説やゲームの話だったらなんだこの急展開、とか思っていただろう。しかし現実は小説より奇なりという。こんな奇妙な展開は正直ごめんだが、この奇妙な展開のせいで確実に俺は死ぬだろう。
(死ぬ前って……なんだか変に冷静になれるな……)
そんな事を思いながら俺は走馬灯とやらを見ていた。と言っても特に何でもない人生だったから面白い走馬灯なんて一個も無かった。少し泣けてくる。死ぬと分かり切っていたからなのか周りがスローに感じた。悲しい人生だった。しかも童貞で死んでしまうなんて……。普通の人生歩んで、普通の女性と結婚して、普通に子供を儲けて、そして老いで自分の子供に見守られながら死にたかった。日本って交通事故・・・多いんだなぁと、しみじみ思う。今まで他人事のように思ってたし。こういう時にしか気づけないものなんだね。もう遅いけど。
ははは……。もう笑うしかなかった。大型トラックは確実に俺の命を奪おうと迫っていた。……こういう時に遺す言葉で言いたかったものがある。
「我が人生にいっぺn」バッコーーーーーン!!!!!
言いきれなかった……。俺が早口で言いきる前に大型トラックは俺を無情に轢いたのだ。俺の最後の言葉は『我が人生にいっぺn』か……。
大型トラックに撥ねられた後相当地面にたたきつけられて頭の中でグシャ!と嫌な音が響いた。おそらく脳か、なにかがつぶれたのか、よく分からなかったが確実に死んだとは断言できる。
俺の死をゲームで言えばいわゆるバッドエンドとやらなのか。
次の人生は何だろうか――
――――眠るようにして俺は息絶えた。
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目が覚めた。いや覚めてしまった。俺は見知らぬ洞窟のなかで仰向けに寝ていたようだ。いったいここはどこなのか?なんでこんなとこにいるのか?地獄道で死んだから地獄なのか?様々な疑問が脳内で飛び交う中ただ一つ最も気になることがある。それは……。
(なんだこのにおい!臭い!とにかく臭い!)
とりあえず起きてから意味不明なことはいろいろあるがとにかくそれが最初に思ったことだ。強烈な肉の腐敗臭のようなにおいが鼻をついてくる。
とりあえず精神を落ち着かせるために、五体満足かを確認する。
(右腕よs……は?)
俺は自分の右腕を見た。一瞬、自分の腕かどうか疑ってしまった。なぜかその右腕はありえないくらいボロボロでドロドロでぐちゃぐちゃだったのだ。子供っぽい表現だが驚きでそんな表現しかできない。
もっと詳しく言えば血かなにかがこびりついていて……いやこれ以上はやめよう。まるで切られたような傷が無数にある。そしてお世辞にも血色が良いとは言えなかった。これが自分の腕かを認めたくなかったがまぎれもなく自分の腕である。なんて言ったって自分で動かせるんだから。
(ひ……左腕は……ってうお!?)
左腕もボロボロでまるで死体のような腕だった。右腕と同じように無数に切り刻まれていてかなりグロテスク。ゾンビ物のゲームをやってなかったらおそらく卒倒して再び眠ることになっていただろう。
俺は自分の体を見るため視線を下へ送った。あきらかに死体に似ている体。無数の切り傷の痕、穴だらけの布の腰巻、そして――。
そして心臓があるはずの位置に短剣のようなものが突き刺さっていた。もはや驚きで声が出ない。
何も言わずそれを抜く俺。不思議なことに痛みと血が全くでなかった。しかし……これ、死体に似ているんじゃない、死体だ。
……もうなんとなく予想はついていた。だが俺はその予想が間違いであることを全力で懇願していた。しかし自分の貫かれていた心臓をみて予想は確信へと変わった。こんな致命傷を負っても動ける……俺の日常のようにやっていた好きなゲームのジャンルを思い出す。そう、つまり……。
俺はゾンビになっていた。
……冗談だろ?ドッキリか?まさかこれって稀によくある……転生ってやつなのか?実際にこんなことってあるのか?ダメだ……意味不明すぎる。もしや肉の腐敗臭とは自分から発せられた臭いだったのか。
なぜこうなったのかは分からない。しかし俺は言いたい。
(なんでゾンビなんだあああああ!!?)
……心の叫びだった。人間……は高望みだとは思ってるがどうしてゾンビになったんだ!?俺はゾンビは好きだがなるのが好きなわけじゃない!いったいどういうことなんだ!?
神様……これはあんまりだよ……。
そんなこんなで転生(?)した俺は新しいヒューマンライフ……いやゾンビライフがここに始まったのだ。
読んでくださりありがとうございます。感想等で指摘などをしてくれると助かります。