AOI 第87話
弟は、熱々のラーメンを途中に、こたつから出て、カーテンを開けて庭を見た。
「自転車無理かなぁ。」
と、庭の向こうに見える道路をつま先立ちをして見ていた。カーテンを閉めて、今度は、居間を出て、玄関のドアを開けて、外を見に行った。見えなかったのか、長靴を履いて、玄関を出て、道路まで見に行っていた。弟は、
「よし、よし、これで行ける。」
と、居間に入ってきながら言っていた。自転車で行こうと決めたみたい。そして、寒い寒いとしきりに大きい声を出しながら、こたつに入って、ラーメンをすすった。
「雪、大丈夫だったの?」
と、聞くと、弟が、
「除雪車が通ったみたい。」
と、言ったので、道路の端に雪の山ができているなと思った。いつも歩く歩道が雪山で見えなくなっているので、自転車や歩く時は、車道を歩かなければならなくなる。雪道では、人が車道を歩くと、車は人との距離をとってくれるので安心だけれども、対向車がある時は、すれすれで体の横を走っていくので、少し怖くなる時がある。転んだらひかれてしまう。学校がある時は、事あることに、雪の日の道路の歩き方についての話がある。みんな、それとなく、頭の片隅に記憶されている。自転車は車輪が雪にのってしまうと滑ってしまうので、私は怖いので乗らない。弟は、違うのだなぁ。弟の友達は、そういえば、みんな、自転車乗っているなぁ。自転車に乗って、大きい声で話しながら笑いながらの集団を見かけた時があったな。学校帰りの、スーパーの前の道で集団の自転車を見かけて、その中に弟の姿があって、前を向いてと思うほど隣の子と話したりしていて。きっと、今日、これからそんな感じで、スーパーに集まって、それぞれにお菓子を買って、ワイワイ家に遊びにくるんだろうなぁ。私も早くラーメンを食べなきゃ。こたつにラーメンを運んで弟の隣で、食べはじめた。弟には、雪道すべらないように気をつけて自転車乗るんだよと言った。弟は、
「ハイハイ。」
と、短く言った。そして、こうも言われた。
「お母さんみたい。」
って。私は、とっさに、
「似てる?」
と、聞き返した。弟は、ラーメンの麺を箸で持ち上げて、
「うん。似てる。」
と、一言。急いでいるからか、それからは無言でラーメンを食べていた。私は、頭の中で、(お母さんみたい。)の言葉がループしていた。ラーメンを食べながらでも、ずっとループしている。TVの話も耳に入ってこない。少し悲しくて淋しくてなんでこんな気持ちになるのかなぁと、無言でラーメンを食べ続けた。




