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大切な家族とほろ苦い思い出

作者: 紫 涼夏
掲載日:2026/02/17

5作目です。

開いていただきありがとうございます。

前4作はローファンタジーだったので、今回少し違うものを書かせて頂きました。

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。


俺は普通のサラリーマン。

仕事が嫌になるときもあるが、俺には大切な家族が居る。

今日も少し残業して家路を急ぐ。





家に帰ると、小学生の息子がリビングのソファーで膝を抱えて暗いオーラを出していた。


「ただいま……ん?どうしたんだ?」


「あなた、ちょっと……」


妻にそう言われ、俺はキッチンへとついていった。


「どうしたんだよ。」


「あのね。今日あの子、好きな子に告白して振られちゃったんだって……」


「ほーん。なるほどねぇ」


「だから、そっとしといてあげて」


なるほど。なるほど。俺が思っていた以上に俺の息子は成長していたらしい。

まだまだ、子供だと思っていたが子供の成長は早いもんだなぁ。


俺はスーツから着替えて、風呂に入ってから妻が作ってくれていた飯を食べた。

その間も息子はソファーからピクリとも動かなかった。


ふむ。どうしたものか……。

そうだ!良い事思いついたぞ!


俺はソファーへと近づいた。


「なぁ。明日、父さんとキャンプに行かないか?」


「……気分じゃない」


息子は俺の誘いに、チラッとこちらを見てそっけなく答えた。


「まぁ、まぁ、たまには父さんと二人で出掛けようじゃないか!決まりな!」


「僕、行かないからね」


こちらも見ずに答える息子。

初恋が散ったんだろう。まぁ、落ち込むのも分かるな。


息子には断られたが、俺は明日のキャンプの為に色々と準備を始めた。


「もう、あなたそっとしておいてあげてって言ったじゃない」


呆れたように俺を見下ろす妻がそこに居た。


「良いんだよ。こういう時は男同士水入らずで話した方が絶対に良い……ん?地震か?」


「え?揺れてないわよ。あなただけじゃない?大丈夫?」


「あぁ、俺だけか。大丈夫!大丈夫!」


疲れてんのかなぁ?

俺はさっさと準備を終わらせて、早めに寝床に着いた。






翌朝、息子を起こしに行くとめんどくさそうにジト目で見られた。


「いいから、いいから、気分転換にもなるし行こう」


「……はぁ。仕方ないなぁ」


不貞腐れながらも息子は俺とのキャンプを承諾した。




キャンプ場に行くまでに、食材や炭を買いに行ったが、そこでも息子は終始無言でついて来ていた。

キャンプ場に着いたのは昼過ぎ。

土曜日で少し込み合ってはいたが、場所を確保しテントを立てた。

息子もまだ乗り気では無さそうだったが、それなりに手伝ってはくれていた。


「よし。もう少しで炭が良い感じになるから飯にしよう!」


俺はそう言ってクーラーボックスから、来る前に買った肉や野菜を取り出した。

テントの中で寝転がっていた息子も、お腹は空いたのか俺の言葉にテントから出てきた。




ゆっくりとご飯を食べていたら日が沈みかけていた。

俺は暗くなる前に焚火を準備して、食後のコーヒーを飲むことにした。


「お前も飲むか?」


「僕はお茶で良い」


そう言いながら、息子はペットボトルのお茶を飲んだ。





日が沈み、辺りが真っ暗になって焚火だけが静かに燃えていた。

俺と息子は焚火を挟んで座り、何も語ることはなく、ただただその炎を眺めていた。


「……父さんもな、お前ぐらいの時にこっぴどく振られたことがあるんだよ」


「えっ?」


焚火を眺めていた息子と目が合う。今回の息子を見てほろ苦い思い出が蘇ってきたのだ。


「相手は気が強くってなぁ。毎日喧嘩ばかりしていたけど、その子が居ない時はなんだか寂しくてな。ある日、他の奴からその子に好きな人が居るって話を聞いたんだよ」


「それで?」


「父さんなぁ。誰かにその子をとられるのが嫌で、教室に居たその子に告白したんだ」


「そしたら振られたの?」


「そう!誰があんたみたいな無神経好きになるか!バカ!!ってさ。ははっ」


「うわぁ……。」


「確かに今考えるとみんなが居る前で、後先考えず告白なんかして無神経だよな」


「そうだね。無神経だね」


「そうだよなぁ。でも、当時の父さんはそれでもその子が諦められなくて、ちょっかいかけてたんだけど、めちゃめちゃ嫌がられてさぁ」


「そりゃ、そうだろうね。相手の子が可哀そう」


「だよなぁ。父さん。本当にバカだった。学年が上がってクラスが変わってからあまり関わる事がなくなって、中学校に進学したら、思春期で意地っ張りになって、逆に近づかないようになったんだ。」


「それでどうなったの?」



「それっきり。……とはいかなかったんだよなぁ。父さんなんだかんだ諦められなくってさぁ。父さん勉強嫌いだったけど、その子が進学校へ行くって聞いて必死に勉強して、同じ高校に行ったんだ。」


「……ストーカーみたい」


「はははっ!確かにな!今思うとすっごい迷惑だよな。しかも、学部は違ったけど同じ大学にも行った!」


「そんなに、その子の事が好きだったんだね」


「うん。そして、就職先が決まった時に改めて、ちゃんとその子に告白したんだ。結婚を前提にお付き合いしてください!ってね。」


「どうだったの?」


「ん?お前の母さんになった!」


「えぇぇぇ!?」


「はははははっ!懐かしい話だ!」


「えぇ……じゃ、お母さんは、お父さんの初恋の相手?」


「そうだな。母さんほど好きになれる相手が現れることもなかったし、今後もないだろうな。……母さんには言うなよ!」


「え、んー。まぁ……言わないけど……。」


「父さんは、母さんに好きになって貰えるように、いっぱい努力した。それに母さんが応えてくれた時は凄く嬉しかった。」


「お父さん凄いね。僕も頑張るよ!」


「よし!その調子だ!お前の今回の子が、父さんにとっての母さんみたいな人かは分からないけど、好きな人の為に努力するって、楽しいぞ!」


「父さんが言うならそうなんだろうね。はははっ」





昔話をして、色々と息子と語り合っていたら、すっかり焚火の火も小さくなっていた。

段々と眠そうにしている息子をテントへ誘導した後、俺はビールを開けた。


息子が元気を出してくれてよかった。

これからも、二人で出掛けたり、男同士でしか話せない事を話していけたらいいな。

いつか、息子が大人になって一緒に酒でも飲めたら幸せだろうな。





こんなにも大切な家族に囲まれて、俺は世界一の幸せ者だ!!




ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

初恋はほろ苦いです。

好きな人にこんなにも想って貰えたら嬉しいですね。

これからも、ゆっくりと活動していきたいと思いますので、よろしくお願い致します。

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