第93話 刃は外を向く
王城北棟、軍議室。
壁には地図。
北方航路。
内陸防衛線。
王都周辺の警備配置。
将軍アルドリックは腕を組んだまま立っていた。
「内政が揺れれば、外は嗅ぎつける」
低い声。
「北方は条件を吊り上げた」
「だがそれは序章だ」
室内に緊張が走る。
王太子、第二王子、宰相。
そして私は同席している。
「情報によれば、東方商団も動きを見せている」
副官が報告する。
「王位が不安定なら、交易網の再編を検討するとのこと」
連鎖。
外は常に機会を探している。
第二王子が言う。
「だからこそ、迅速な統治体制が必要だ」
「迷いを見せれば、足元を見られる」
合理的だ。
将軍は首を横に振る。
「違う」
その一言で空気が変わる。
「外が見るのは“速さ”ではない」
「統一だ」
沈黙。
「王都と辺境が割れているように見えれば、そこを突く」
「王太子と第二王子が競っていると見えれば、そこを突く」
重い現実。
「軍は外に刃を向ける」
「内に向ける余裕はない」
第二王子は静かに問う。
「ならばどうする」
「一枚岩であることを示せ」
単純だが難しい。
王太子が頷く。
「公開の場で共同声明を出す」
第二王子を見る。
「対立ではなく、役割分担を明示する」
カイウスは少し考え、微笑む。
「合理的だ」
拒否しない。
ここが彼の強さだ。
宰相は静観。
私は口を開く。
「外が見るのは、決断の速さではありません」
「責任の所在です」
将軍が目を向ける。
「責任?」
「失敗したとき、誰が立つのか」
「曖昧であれば、国家は弱い」
王太子が言う。
「責任は私が負う」
静かな言葉。
だが広い。
第二王子はすぐに続ける。
「ならば私は、速さの責任を負う」
一瞬、視線が交差する。
敵対ではない。
分担。
将軍が短く言う。
「内で刃を交えるな」
「外は待っている」
軍議は終了する。
廊下に出ると、空気は冷たい。
第二王子が隣に立つ。
「あなたは軍を味方につけた」
「いいえ」
「軍は国家の味方です」
彼は小さく笑う。
「理想だ」
「現実です」
窓の外、旗が揺れている。
王位はまだ決まらない。
だが外圧は強まる。
速さか、持続か。
それだけではない。
今、問われているのは。
国家が一つでいられるかどうか。
刃は外を向く。
向け続けられるかどうかが、試されていた。
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