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婚約破棄された悪役令嬢は、役割を与えられない場所で静かに生きる 〜尽くしても報われなかった私を、理由も聞かずに受け入れてくれる領がありました〜  作者: 東雲透


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第67話 動き出す港

 港に、久しぶりの喧騒が戻っていた。


 木槌の音。

 縄を引く掛け声。

 潮風に混ざる樹脂の匂い。


 閉ざされていた倉庫の扉が開き、埃が舞う。


「梁を補強しろ!」

「桟橋は二列で板を張り直せ!」


 職人たちが声を上げる。


 修繕班は二交代制。


 昼夜を問わず動いている。


 私は帳簿を片手に桟橋を歩く。


 木材の搬入量。

 修繕進捗。

 人員配置。


 全てが予定通り進んでいる。


「……本当に二週間でやる気か」


 隣でガルドが呟く。


「三週間では王都が動きます」


 私は答える。


「二週間なら、先に船を出せます」


 先に既成事実を作る。


 止められない形にする。


 ガルドが小さく笑う。


「商人の思考だな」


「整えるだけです」


 桟橋の先で、辺境伯が現場を見ている。


 口は出さない。


 だが、兵を港周辺に増やしている。


 表向きは治安維持。


 実際は、圧力への牽制。


 市場でも変化が起きていた。


 価格固定枠が発表され、塩と薬草は一定価格で供給。


 不安は完全には消えない。


 だが、暴騰は止まった。


「本当に船が来るのか」


 漁師が尋ねる。


「来ます」


 私ははっきり言う。


 確信ではない。


 でも、信頼は言葉から生まれる。


 夜。


 港に灯りが灯る。


 修繕は続いている。


 私は桟橋に立ち、海を見る。


 静かな黒い水面。


 遠くに、うっすらと灯が見えた気がした。


 まだ船ではない。


 でも。


 動きは始まっている。


 背後で足音が止まる。


「無理はするな」


 辺境伯の声。


「していません」


「している顔だ」


 私は少し笑う。


「止めるよりは、楽です」


 彼はそれ以上言わない。


 ただ、隣に立つ。


 並ぶ。


 囲わない。


 でも、離れない。


 それだけで、十分だ。


 港は動いている。


 領民も、動き始めている。


 王都の圧はまだ続く。


 けれど。


 削られるだけの場所ではないと、証明し始めている。


 夜風が強くなる。


 桟橋の上で、私は思う。


 ここを選んだ。


 ならば。


 揺れても、立てる場所にする。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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