表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢は、役割を与えられない場所で静かに生きる 〜尽くしても報われなかった私を、理由も聞かずに受け入れてくれる領がありました〜  作者: 東雲透


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/97

第58話 減り始めたもの

 最初に気づいたのは、帳簿の数字だった。


 私はいつものように倉庫の在庫記録を確認していた。


 穀物。

 布地。

 薬草。

 鉄材。


 どれも、減りが早い。


 消費が増えたわけではない。


 入荷が、遅れている。


「この便は、まだですか?」


 倉庫番に尋ねる。


「予定では三日前に到着しているはずですが……」


 彼は困ったように頭を掻いた。


「途中で足止めを食らっていると聞きました」


「足止め?」


「王都側の検査が厳しくなったとか」


 検査。


 名目は、治安維持か、税の確認か。


 珍しいことではない。


 けれど、同時期に複数の便が遅れている。


 偶然とは言い難い。


 午後、執務室。


 補佐官が報告を上げていた。


「交易量が、今月に入って一割減少しています」


「原因は」


 辺境伯の声は落ち着いている。


「明確ではありません。ただ、王都側の関所での検査強化が影響している可能性が」


 王都。


 その言葉に、私は視線を上げる。


 偶然だろうか。


 特使が帰った直後だ。


 報復。


 というには露骨すぎる。


 だが、圧力としては十分だ。


「他領との交易は」


「通常通りです」


 つまり。


 対象は、ここだけ。


 辺境伯は、表情を変えない。


「様子を見る」


 短い指示。


 焦らない。


 騒がない。


 それが彼のやり方だ。


 会議が終わり、私は廊下に出る。


 胸の奥に、かすかなざわめき。


 王都が、直接手を伸ばさなくても。


 別の形で、揺らすことはできる。


 私は中庭に立ち、森を見つめる。


 静かな場所。


 守りたいと、思った場所。


 守れるだろうか。


 私は、深く息を吸う。


 まだ、危機ではない。


 ただの違和感。


 けれど。


 減り始めたものは、数字だけではない気がした。


 静けさが、ほんの少しだけ揺れている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ