表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢は、役割を与えられない場所で静かに生きる 〜尽くしても報われなかった私を、理由も聞かずに受け入れてくれる領がありました〜  作者: 東雲透


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/98

第30話 それは、私の選択ではない

 その知らせは、噂として届いた。


 正式な通達でも、呼び出しでもない。ただ、回り回って耳に入ってきた、曖昧な話だ。


「……王都が、辺境伯領に関心を持っているらしいですよ」


 誰かが、そんなことを言っていた。


 私は、その言葉を聞き流した。


 内容に、具体性がない。誰が、何を、どうしたいのかも分からない。ただ、“関心を持っている”というだけだ。


 ――関心。


 その言葉に、胸は揺れなかった。


 王都が何を考えていようと、それは王都の都合だ。私に向けられた言葉ではない。


 それでも、夜になって一人になると、少しだけ考える。


 もし、誰かが「戻ってほしい」と言ってきたら。

 もし、「以前のように手伝ってほしい」と頼まれたら。


 その時、私はどうするだろう。


 答えは、もう分かっていた。


 それは、私の選択ではない。


 王都が楽になるための選択肢。

 王太子が困らないための判断。

 周囲が都合よく回るための提案。


 どれも、私の人生を基準にしたものではない。


 私は、窓辺に立ち、夜の森を眺めた。


 ここでは、誰も私に戻る理由を求めていない。

 役割も、義務も、評価も、押し付けられていない。


 それが、どれほど稀有なことか。


 静かな時間の中で、ようやく分かる。


 王都にいた頃、私は“選ばされて”いた。

 必要とされる形を、演じさせられていた。


 それを、もう一度やるつもりはない。


 だから。


 誰かが用意した「戻るという選択肢」は、私のものではない。


 私は、ここにいる。


 それは、逃げでも、保留でもない。

 今の私が、今を選んでいるだけだ。


 翌朝。


 辺境伯アレクシスと廊下ですれ違った。


 視線が合い、短く会釈を交わす。


 彼は、何も言わない。

 私も、何も言わない。


 それで、十分だった。


 言葉にしなくても、分かっている。


 誰かが外で何を企んでいようと。

 誰かが選択肢を並べていようと。


 ここでは、私が私でいられる。


 それが、何よりの答えだった。


 私は歩き出す。


 それは、私の選択ではない。


 だからこそ、私は――ここにいる。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ