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願えば初恋  作者: y-r
家電量販店販売員の仕事

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そして、そんな私の下世話な妄想も、開店後は、接客。接客。作業。接客の繰り返しで、すぐに頭の片隅に追いやられた。


人件費削減で人数は減らされど、仕事量もそれに付随して減る訳じゃない。


いやむしろ、確実に増加の一途を辿っている。



通常業務はもちろんの事。


入れ替わりが多いアルバイトへの仕事の指導。


何でもかんでもアナログからデジタルに切り替わり、ついてこれないシニア社員のフォローも増えて。


年々難しくなるレジ操作やタブレット操作やら、新しく出てくる商品情報も頭に無理やり詰め込み、自分達のアップデートも必要で、一人当たりの仕事量は前より格段に増えていた。

 

だからこそ、猫の手も借りたいこの状況で、今はどんな人で有難い。


「こちらと同じ電球をお探しですね。それなら、この機会に今までご使用されていた白熱電球から、LED電球に変えてみてはいかがですか?LED電球は省エネですし、寿命が長いので電球の交換回数が少なくて済みますよ。何より発売当初に比べるとお値段もお手頃になりお買い求めしやすくなっております。」


売上重視の売り場担当者の私は、電球一個でも数百円の電池一個でも、お客様をレジまで案内して自分でお会計まで完了させる。


販売専門の売り場社員の私達が追うのは、前年の自分達の売上数値だ。


それを上回らないと、当月の個人別に割り振られている売上予算は達成しない。



「お客様、何かお探しですか?」


初めてこのお店に来店されたお客様は、あまりに広過ぎる店内に、辺りをキョロキョロ見渡してお目当ての商品を探している。


この光景はこのお店ではよく見る光景で、この様なお客様にお声掛けをしてコーナーまで案内するのも私達売り場担当者の役割だ。


「レンジを探してるんですけど、どこにあるか分からなくて。こんなに広いなんて思わなかったわ。」


私が声を掛けたのは、1人で来店したご様子の40代くらいの女性のお客様だ。


「フフッ。そうですよね。」


お客様の苦笑いに、私も思わずつられ笑い。

毎日いる私でさえそう思ってるのに、初めて来店されたお客様なら尚更だろう。


「オーブンレンジの売り場ですね。ご案内致します。」


コーナーに到着しても、お客様の驚きの声に今度は苦笑い。


「レンジだけでもこんなにあるの?!えー、どれにしようかしら。」


お客様が口に手を当て驚くのも無理はない。


小さい店舗なら商品を置けるスペースに限りがある為、スタンダードなタイプの商品を中心に、ある程度商品数を絞って陳列されているのが一般的だ。


しかし、うちのような大型店舗に関しては、取り扱いがあるメーカーの殆どの商品が陳列されていて。それは、競合他社に負けない圧倒的な商品展示数を誇り、お客様のどのご希望にも沿えるようにとの本社の意向が反映された売り場作りがされているからで。


それが当店の旗艦店としての"売り"であり"強み"なのだ。


「オススメの商品ってありますか?」


お客様の言葉に、今まで使用しているレンジの容量を確認して、私は「それでしたら。」とお客様を連れオススメの商品の前へと移動する。


「最近の商品はレンジ機能はもちろんの事、各社グリル調理に力を入れております。お客様は料理の他にもお菓子作りやパンを焼かれたりしますか?それでしたら、庫内にムラなく熱が行き届くこちらの高機能オーブンレンジがオススメです。」


「あー、これねー。今あるレンジとサイズも一緒ぐらいだわ。これ以上大きいとパンドリーに入らないのよねー。」


お客様が考えている間、提案している商品の在庫があるか確認しておこうと棚下の在庫をキョロキョロと探していた私の背後から「すいませーん!」と呼びかける声が。


私はその声に後ろを振り返る。


「はい?あ、プリンターの在庫が知りたい?担当をお呼びいたしますので少々お待ちください。」


待ちの姿勢の時は話しかけられないのに、接客中や作業中で忙しくしている時の方が何故かお客様に話し掛けられる。


これは接客業あるあるだろう。


内心は、わざわざ接客してる私に話しかけなくても、パソコンコーナーにつっ立ってる従業員がいるんだからソッチに声掛けてよ!


……なんて口が裂けても言えないから、顔は笑って心で毒づく。


販売員になって習得した技の一つ。


「こちらのお客様がプリンターの在庫を知りたいそうなので、確認お願いします。」


パソコンコーナーの従業員にお客様をバトンタッチして、私はレンジを見ていたお客様の元へと戻るとお客様も私を探している様子だ。


「お姉さんが勧めてくれたこの機種にしようと思うんだけど。」


お姉さん呼びもよくある事。

そう呼ばれなくなったら、おばさんになったんだろうという判断基準にしている私。


まだまだ若く見られてるんだ…。

良かった…。


そんな事を考えながらお客様に返事を返す。


「本日お持ち帰りされますか?こちらの商品は重いので配送も承れますがいかが致しましょうか?」


「うちに帰れば主人がいるから持ち帰りでお願いします。」


「はい。かしこまりました。それでは台車を持って参りますのでレジでお待ちください。」


単価の高い商品を販売できたのは良い事だが、高機能オーブンレンジはかなり重い。

そのオーブンレンジを1人でフンッ!!と気合いで持ち上げ台車に乗せて、いったん息を整えて、お客様が待っているレジへと向かい。


「お待たせしました。当店の会員証はお持ちですか?………お支払いはバーコード決済ですね。…お買い上げありがとうございます。商品を車までお運び致します。」


オーブンレンジを乗せている台車を押し、お客様と一緒にエレベーターを使い駐車場まで降りて行き。


「えっ?!1人で大丈夫?!手伝おうか?!」と、戸惑うお客様の心配をよそに「大丈夫ですよ。」とお客様の車が傷つかないよう慎重にオーブンレンジをトランクに乗せ。


「ありがとうー!細いのに力持ちね〜。」


お客様の声に、私は頬を緩める。


確かに20kg近くあるオーブンレンジを運ぶのは一苦労だが、小学一年生くらいを抱っこするぐらいと思えば、これぐらいは私1人でどうにか出来る範囲だ。これ以上になると、さすがに私でも無理だから男性従業員に手伝ってもらうが。


「いえいえ、慣れっこですから。今日はありがとうございました。またお越しください。」


会釈をして、これにて接客終了だ。

私はまた、空になった台車を押しながら慌ただしい売り場へと戻っていく。


そして、朝からの慌ただしさから解放された頃には気付けばあっという間に12時を過ぎていて、昼番の従業員が売り場へと出てきた姿を確認し何とか午前中を乗り切ったとホッと一安心。


人員が減ってきたここ数年の朝番は、いつもこんな感じで時間が過ぎる。

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