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これで私の役割も終わりだ。
岸川店長と語り終わった私は、最後はどこに癒しを求め辿り着くのか。
「まだ戻ってこないんっすかぁ?!早くこっちで飲みましょうよー!皆待ってますよー!」
「そうだよ、早く来なよ~!」
こんな時だけアイドル並みの人気を誇る私は、平岡くん達に呼び戻され、結局は元居た場所へ。
「ふぅ~!ただいま~」
「呑気に"ただいま"じゃねーよ!」
頭の上から降り注ぐ、不機嫌そうな声を見上げると、そこにはやっぱり奴が居た。
「狭いー!!無理無理無理!」
私は熊野フロア長を手で押し退け。
「無理っすよ!こんな狭い所に入ってこないで下さいよー!」
平岡くんは植田くんを背中でグイグイ押し。
「後1人ぐらい余裕だろっ」
無理矢理、私と平岡くんの間に体を捩じ込む砂東フロア長に、私の身体は更にグイグイと押しやられ。
「痛いってば!!」
「痛いじゃねぇし!元はと言えば、ここは俺の席なんだよ!」
平岡くんにココに連れてこられた私。
だからココは私の席だ!
「そんな事言われても知らないし!狭いんだから、向こうの席に行けばいいでしょー!」
「うるせー!ったく!仕方ねーな。なら、ここに座れ。特別だぞ?」
自分の膝の上をポンポンと叩く砂東フロア長は酔っているのだろうか、楽しそうに笑っている。
「砂東フロア長!今のご時世それアウトっす!ため息ついただけでもフキハラって言われる時代ですよ!」
「そうだよ~!相手が甘味ちゃんじゃなかったら訴訟問題だよ~!」
「砂東フロア長だから許されますけど、僕たちがしたら皆ドン引きですよ~!」
私の周りには、字面とは違い楽しそうに話している平岡くんと熊野フロア長と植田くんに、すっかり隣に座り込んだ砂東フロア長。
ギュウギュウすし詰め状態の私達のその光景は、向かいの席に座る松本さんの笑いを誘う。
「さすがにそれじゃ、甘味ちゃんがかわいそうだろ。一人くらいこっちに来ないと~」
さすが!レディーには優しい松本さん。
強力な味方をつけた私は、ここぞとばかり「そうだ!そうだ!」と囃し立てる。
これには、さすがの砂東フロア長もグウの音も出ないようで。
「すいません、松本さん。甘味にお酌してもらったら、すぐに戻りますんで」
「何でよ!」
私たちが長年培ってきた1チームとしての絆をさらに深めようと皆んなのお酌はしたけれど、ついこの間入ってきた新参者とお酒を酌み交わす気はさらさらない。
その新参者が砂東フロア長じゃなかったらもちろん話しは別だが。
「何でよじゃねーよ!今日は俺の歓迎会だっつの!他の人達周っといて、何で俺んとこには来ねんだよ!」
「確かに。それは甘味ちゃんの方が分が悪いよね」と、松本さん。
形勢逆転。
瞬時に不利にたつ私。
「えーーー。…………じゃあ」
「あ!お酌なら私がぁ~」
砂東フロア長にお酌をしようと手に持った瓶ビールを、ヒョイと私の手から抜き取る遠藤ちゃんの早業に、呆気にとられるもこのチャンス逃すべからず。
「私、邪魔だよね。あっちに移るから」
脱出成功。
私は、遠藤ちゃんが元居た女性陣が集まる席へ。




