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「本当は甘味ちゃんだって、あっちの席に行きたいんだろ?」
熊野フロア長にそう言われチラッとあちらの席に目をやると、砂東フロア長と目が合い思わず視線を反らす。
「いや、いや。私は皆とお酒を飲んでる方が楽しいですよ。今日はどんどん飲みましょー!」
「お、いいね~!」
「甘味っち!最高!」
「こっちにどんどん酒持ってきてー!」
「今日は皆で飲もうぜー!」
『イエーイ!!』
久々の飲み会で盛り上がりを見せる私達のテーブルには、次々とお酒が運ばれてくる。
「植田くん。前にあるその枝豆ちょーだい」
「これぐらいでいいですか?」
「うん!ありがと!でも、平岡くんの件は許してないから。覚えときなさいよ」
遅刻してきた事を棚に置き、素直に枝豆を取り分けてくれた植田くんにこの言い草。
「えー!!このだし巻き卵もつけますから許して下さい!」
「そんなモンで許される訳ないでしょ」
いつメンの熊野フロア長や平岡くんをからかうのも楽しいけど、平岡くんとつるんでいる植田くんをからかうのも面白い。
「いーなー。松本さんが食べてるの美味しいそー!」
「これかい?取り分けてあげるよ」
「へへ。ありがとうございます!」
「1人でも女性が入ると一気に華やぐねー。さっきまでお通夜状態でさ」
「またまたー、言い過ぎですよ。あ、店員さーん!ビール追加して下さーい!」
この時点で私は、平岡くんの飲んだ量をあっさりと抜いていた。
「うぉー!甘味さん!やっぱスゲー!!」
歓声を受けながら飲むビールは旨い!
ゴクゴクと喉を通っていくビールはあっと言う間に底をつき。
「よっ!甘味ちゃん!豪快な飲みっぷり!俺はこれをみる為に飲み会に参加したんだよー!」
「松本さん、だから言い過ぎっすよ!」
「そうかい?」
そう笑い合う、25歳の平岡くんと63歳の松本さん。
こんなに歳の差があっても、普段から仲良しな二人。
見ているこっちも何だか楽しい気分になっちゃう。
「松本さん。どうぞ!」
「お!甘味ちゃんがお酌してくれるの?ますます寿命が50歳は伸びちゃうな~!」
「松本さん、それ飲み会の度に言ってるし~!まだボケる歳じゃないですよ~」
松本さんが持っているグラスに並々ビールを注ぐ。
「そうっすよ!毎回言ってるから既に寿命が200歳越えてるっすよ!それじゃあ、化けもんじゃないっすか!」
「ほんとだな!」と、自分で言った冗談にワハハ!と松本さんは豪快に笑い。
こんな他愛ない会話で笑える私達。
やっぱり、お酒の力はすごいと思う。
何を言っても大丈夫。
なぜなら今日は無礼講。
次は、隣に座る熊野フロア長だ。
「はい、熊野フロア長もどーぞ。私達を裏切って白物コーナーを出てったんだからもう仲間ではないんですけど、仕方なくですよ?」
「そうっすよ!いいなー!好きな音楽聴き放題っすもんねー」
「僕が選んだ曲を流してる訳じゃないからね~。最近の曲は早すぎて何を言ってるか分からないから僕には逆に苦行だよ」
「そうっすか?これなんかいい曲っすよ。な、植田」
「うん。この曲は歌詞もいいよね。でも、早すぎるのが苦手なら、こっちの曲なんかも流行ってますよ。この曲がエンタメコーナーで流れてたら胸熱です」
「確かに、いい歌詞だね~。参考にしようかな」
3人で1つの携帯の画面を眺め語り出した平岡くんと熊野フロア長と植田くんは置いといて、そろそろ私はお酌周りに行こうかなとヨイショと立ち上がりる。




