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願えば初恋  作者: y-r
歓迎会

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「んン、、、」


ベッドの上で、大きく寝返りをうつ。


「ん、、、むにゃむにゃ、、、」


ここに引っ越してきた時に散々悩んだあげく購入したダブルサイズのベッドは、私がいくら寝返りを打ってもベッドから落っこちる心配はなく寝心地も最高の代物だ。


このベッドに寝転べば、あまりに寝心地が良すぎて動けなくなる事なんてしょっちゅうだ。

一日中動き回って疲れている今日なんか、それはそれは効果覿面。




頭の上で鳴っている携帯電話の通知音に、少しづつ意識がハッキリし出して頭に浮かんだある事。


「ん?!」


ここからの大変な事態は自分自身で招いた事だ。


アパートに帰り着いた安心感と、歓迎会までまだ時間があるからと、今日1日でかいた汗を流そうと軽くシャワーを浴びてサッパリした充実感で、メイクをし直した後に「ちょっとだけ…。」と、ベッドに横になりアラームを設定しようと携帯電話に手を伸ばした瞬間からの私の記憶はない。



「うわっ!!!!もう22時10分じゃん!!えっ?!あれ?!歓迎会は?!」


携帯電話で時間を確認した瞬間、私はベットから飛び起きた。


「やっば!!やらかした!!」


これでは朝の二の舞だ。


携帯電話の時計表示の下には、みんなからの着信履歴が。


遠藤ちゃんから着信2回。

平岡くんからは着信3回。

最後の着信履歴は砂東フロア長から。



「LINEまで来てるし。あ、若林ちゃんだ。…遅れるかも、か」


「うっわ、、、。砂東フロア長からもきてる」



怖くないとは言いつつも、絶対ぶちギレているに違いないLINE内容に、覚悟しながら内容を確認する。



【どうした?何かあったのか?】



「あれ?これだけ??…って、言ってる場合じゃない!遠藤ちゃんに電話しなきゃ!」


拍子抜けしながらも幹事の遠藤ちゃんに電話をかけるが、多分盛り上がっているのだろうか、遠藤ちゃんは電話に出てくれず。


それなら、平岡くんだ!



「甘味さぁん!今、どこっすか?!もう歓迎会始まってるんすよ?!」


「あーー、それがね…まだ家なんだ」


「何でっすか?!もしかして何かあったんっすか?体調が悪くなったとか??」


真剣に心配してくれている平岡くんに真実を告げるのは心苦しく、私はカーペットではなく固い床に正座している。


「いやーその~さ。あのー、そっちに行く気でちゃんと準備はしてたんだよ?でもさ、今日忙しかったじゃん?だからそのー、要はお恥ずかしながら寝坊しちゃってさ」


「え?……寝坊…すか?」


「うん。ごめんね?」


「マジっすか?!子供じゃないんっすから、そこは寝ないで我慢して下さいよ!皆さーーん!甘味さん、ただの寝坊でしたー!!ご心配おかけしましたー!!」


『イエーイ!!甘味ー!』


どんな盛り上がり方をしてもいいが、沢山の人が集う公共の居酒屋で人の名前を叫ばないで欲しい。


文句を言おうにも、寝坊した私が100%悪い。


電話の奥から聞こえる皆の笑い声に、恥ずかしさと申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


「それでは甘味さん。うちの新リーダーからありがたいお言葉があるっす。異論はあるかもしれませんが、今回ばかりは真摯に受け止めて下さい」


「甘味」


威圧感のあるその声は、砂東フロア長の不機嫌さを知るには充分だ。


LINEの内容に反して、やっぱり電話口の砂東フロア長はぶちギレていて。


「はい。…何でしょう?」


「寝る子は育つって言うけどお前はもう充分だろ?!あんなに言ったのに結局人の歓迎会に寝坊しやがって!もうみんな揃ってんだぞ!今すぐダッシュで来い!すぐ来い!5分で来いっ!」


『イエーイ!砂東フロア最高ー!!素敵ー!』


電話の向こうで盛り上がる群衆に、床に手をつき項垂れる。


ダメだ…

これは行ったら、危険な予感しかしない。


自分の身だけを案じる私。


「いやー。なんか、そのーー。寝不足だったし~?今日はこのまま家に居ようかな~なんて。だって、もう外は真っ暗じゃん?昨日、アンタが暗い中歩くなって言ったんでしょ?もちろん寝坊した反省は海より広く深くしてるよ。だから、今日の所はそっちでうまく場を収めといてよ。なんてったって、アンタと私の仲じゃん?」


「ふーーん。そんな事言うんだ?じゃあ、昨日の夜の事、皆にバラすかなー。お前と俺にあった事」


「やっぱ昨日何かあったんすか?!ぜひ聞きたいっす!」


含みを持たせた言い方に、電話口でも分かるくらい平岡くんは興奮している様子。


何もなかったはずなのに、砂東信者が大半を締める向こう側、これは急がねば真実がねじ曲げられかねない。


「ちょ、ちょっと待って!すぐ行くから!えーーと、20分!20分で着く!」


「は?10分だ。早く来い」


私の返事も待たずに、突然切れた電話をただ見つめる。


「クソ!あっちのが上手かっ!最悪だ!」


こうしちゃいられないと、朝のスピードを更新する勢いで私は崩れたメイクを慌てて直しアパートを飛び出した。

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