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願えば初恋  作者: y-r
アイツの彼女

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「その笑顔、俺にも向けろよ。」


気持ち悪い発言をする砂東フロア長を見る私の顔は、既に真顔だ。



「さ、ご飯食べよ。お腹すいたー。」


「かわいくねーな。」


砂東フロア長に何と言われようがどうって事はない。

砂東フロア長に見せる可愛さは、私には持ち合わせてないのだ。



「はいはい、そうですねー。かわいくなくて結構ですよ。」


私は、ようやく席につきテーブルに置いていた弁当箱を広げる。


「また始めるのか?若林さんに言いつけるぞ。」


「残念。結局は若林ちゃんは私の味方だからね。アンタと違って付き合いが長いんだから。」


「安心したよ。こっちでもちゃんと心を許せる友達が出来たんだな。」


「だからさ〜、子供じゃないんだからさ。気持ち悪い親心を見せないでよね〜。」


「心配してやってんだろ?!」


そう言いながら、砂東フロア長は私の前の席に断りなく座る。


何が悲しくて嫌いな相手と貴重なお昼休憩に、向い合わせでお弁当を食べなくちゃならないのか。


「そこに座んないでよ。席ならいっぱい空いてるでしょ。」


私達従業員以外にも、メーカーの派遣さんや携帯電話コーナーのキャリアさんなどが利用する休憩室は、事務所の次に広い共有スペースになっていて。


「どこに座ろうが俺の勝手だろ。酷い事言うなよ、傷つくな。…お!うまそーな弁当じゃん!自分で作ったのか?」


傷付くって言った割には、この切り替えの早さ。


私も気持ちの切り替えは早い方だが、そのハートの強さは持ち合わせていない。



「そんなジロジロ見ないでよっ。」


「柄にもなく照れんなよ。若林さんとはエロい話ししてたんだろ?お前のデカい声が扉の外まで聞こえてたぞ?職場で何つー会話してんだか。」


「若林ちゃんだって話してたでしょ!何で今言うのよ!」


「俺がからかう相手はお前だけで充分だからな。それより、早くメシ食おーぜ。腹減ったー!」


砂東フロア長は、相変わらずの手作り弁当を私の目の前で広げていく。


「相変わらず美味しそうですね~?」


わざわざ私の目の前に、彼女お手製の手作り弁当を広げるコイツに、今の発言に対する皮肉を込めて送った言葉。


「食ってみるか?この卵焼き、美味そうだろ?」


得意顔で私の前に差し出される彼女お手製の弁当。


それじゃあ、お一つ…。


なんて、なる訳がないんだ。


彼女の手料理を自慢したいなら、相手は私じゃない方がいい。



「いらなーい。自分のあるしー。」


差し出された弁当を丁寧に押し返す。


「何でお前だけそーなんの?他の子なら、ホイホイ食いつくだろうによ。」


「うわ…!でた!皆にあんなに優しくしといて、やっぱそっちが本音なんでしょ?イケメンの戯言ね。どれだけ自分に自信があんのよ?」


「そんなんじゃねーし!なんでお前はそんなに俺に興味を持たねーのか!って話だろ!」


「………フン。」


お弁当をつつきながらも、砂東フロア長の言葉に思わず鼻で笑ってしまった。



相変わらずのマイペース。

相変わらずの自信過剰。

相変わらず、迷惑な奴。


「な、何だよ。」


砂東フロア長を何も言わずにジーと見つめる私に、砂東フロア長は戸惑っている様子だ。



「砂東フロア長…。あの頃と全然変わってないね。その顔以外は。」


今日もコイツのイケメンは健在だ。

どんな表情をしていてもその表情だけはどタイプ過ぎて、この見た目と恋に発展しないのが本当に辛い。


「甘味。それってさ、褒めてんの?けなしてんの?」


さっきも平岡くんから聞いたセリフ。

答えはもちろん決まっている。


「後者に決まってんでしょ。」


「お前な、、。………お前の方こそ相変わらずだよ。顔以外は。」


「は?顔?!」


「あぁ、久々に会ってビックリした。甘味、綺麗になったよ。あの頃もそうだったけど、やっぱすげー俺好み。」


そう目を細め笑う砂東フロア長の顔はどこか優しげで、その笑顔は確かに遠藤ちゃん達だけでなく私まで落ちてしまうかもしれない。


「へっ?あ、あのっ。」


いつもみたいに何か言い返したい。

こんな時、あの頃はどう返してたっけ。


あまりにも真っ直ぐ見つめられる眼差しから目をそらし、不覚にもキョドる私はお箸でつまんでいた卵焼きをポロリ。


「ププッ!!バーカ!冗談だよ、冗談!!また引っかかってやんの!いつまで経っても成長しねー奴!」


「なっ!」


砂東春希は昔からこんな奴だった。


不覚にも久しぶりに胸がときめく寸前だった反動は大きく、中学の時代から今と同じようにからかわれていた苛立ちも再燃する。



「本当信じらんない!最低っ!バカ!!」


「散々ひでぇ事言われてる仕返しだ!何とでも言え!甘味、さっきの顔かわいかったぞ!もう1回見せてみろよ。」


「やだし!!もう戻る!」


せっかくの休憩を台無しにされた私は、まだ半分残っているお弁当箱に蓋をし、不機嫌なまま休憩室を後にした。

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