13
、、、と言うか。
私も何であんなに毛嫌いしていたのか正直忘れてしまった程、砂東フロア長との再会は久しぶり。
中学の卒業以来会っていないから、14年ぶり?
砂東くんと健一くんと彩花。
三人とも、無事に一緒の高校に受かって。
そういえば、高校2年の時にどっかに転校したって彩花が言ってたなぁ。
十数年前の事に記憶が曖昧。
転校先がこっちだった…とか?
何で本社から店舗にきたんだろう?
うーん。
考えれば考える程、謎が謎を呼ぶ。
「そうだ!彩花に教えてやろー!ビックリするだろうなー!」
あれだけ砂東フロア長の事は考えたくないといいつつ、ベッドの上にある携帯電話へと手を伸ばし、彩花に電話する。
面白い話は共有するのが女子の常識。
「もしもしー?元気してる?久しぶりやねー。唯ちゃんは今年小学生になるんやったっけ?」
「なん言いよっと?!すでに1年生やし。杏から入学祝い送って貰ったやん!」
「そーやったっけ?」
地元の友人と話す時は、気兼ねなく使える訛りに会話も弾む。
「あ、そっか!二人が結婚して6年やもんね。月日が流れるのは早いなー。」
彩花と健一くんは、私がこっちに来てすぐに結婚して、今では一姫二太郎の2児のママとパパになっている。
「杏は相変わらず忙しいと?たまにはこっちに帰ってきーよ。もう随分と帰って来とらんやろ。みんなも杏と飲みたいっち言いよるよ?」
「そうっちゃんねー。そっちに帰らんとって思いつつ仕事も忙しいし、なんかついつい帰省しそびれちゃって。」
「ついついで済まされる長さじゃないよ?おばさん達もきっと寂しがっとるよ。」
「うーーん。だってさー、しょっちゅう彼氏ぐらいおらんと?結婚はまだなん?勇里の所は3人目が出来たんだぞって。ハッキリ言ってうんざりっちゃん。」
こんなテンプレな台詞を私が言う日がくるとは思ってもみなかった。
私が地元で働いていた頃から、既に私の周りでは結婚や妊娠の話しが出始めていて。
結婚することが当たり前、世間体があるから…なんて田舎の常識なのか、そこにしか価値を見い出せないなんて、その頃の私には考えられなかった。
だから、こっちに逃げてきたかった気持ちが多少なりともあった気がする。
「確かにね。でも、おばさんが言うことも分かるっちゃん。だって、あともう少しで30歳ばい?誰か良い人はおらんと?」
「今の時代30で結婚してない人なんてザラにおるやん!彩花までそんな事言わんでよー!もう私、絶対結婚なんかせんけんねー!」
「アハハ!ごめん、ごめん。こればっかりはタイミングやもんね。」
初恋なんて99%叶わないっていう私の統計は出ているのに、恋愛漫画でしか叶わないはずの初恋を実らせ、きちんと結婚までしたこの2人の出会いを運命と言わずして何というんだろう。
"初恋×運命は恋愛漫画"をリアルで体現した2人。
正直、順風満帆な人生が羨ましい。
それに比べて私なんて、明日の予定も仕事だけだ。
「健一と話す?もうそろそろ仕事から帰ってくると思うっちゃけど。」
もうそんな時間かと窓の方に目をやれば、レースカーテンの向こうにはオレンジ色の空が広がっている。
学生時代は1日があんなに長く感じたのに、最近は1日が一瞬で過ぎていく。
これといった刺激もなく淡々と過ぎていく日々に、これじゃあ、何の変化もないままあっという間に40代まで突入しそうで…怖っ、と1人で身震い。
「いや、いいや。どーせ彩花と同じ事言われるのが目に見えとるもん。」
十数年前の失恋をいまだに引きずってはいない。
もちろん二人が憎いとも思わない。
だけど、彩花と私。
なぜ、こうも違うのか?
何が違うのか?
まるで真逆の人生を背中合わせで突っ走しっている私達。
「ほんと似た物夫婦よね。そのうち顔も見分けがつかんくなるっちゃない?」
「そんな訳ないやろ。どうする?私があんな吊り目になったら?怖いやろ?」
彩花の遠慮ない発言に、健一くんの鋭い眼光を思い出し爆笑する。
「確かにあーなったら怖いな。健一くんって優等生なのに、あのヤンキーみたいな見た目でだいぶ損はしとるよね。」
「そうそう。中学生の頃から身長も1番高いしね。」
「彩花と親友じゃなかったら、私、健一くんだけやったら絶対友達になっとらんやったよ。」
「私も幼馴染じゃなかったら近付いてすらないと思う。」
それでも大親友の彩花と私。
全く違う人生を歩んでいる二人だけど、彩花とならば笑い話にかえられる。
「って、呑気にこんな話をするために電話したんやないんよ!聞いてよ彩花!私、砂東くんに会ったっちゃん!中3で一緒だったあの砂東くん!覚えてる??」
「フフッ、当たり前でしょ?健一の大親友だもん。今でも連絡を取り合ってるよ。」
ここまでは想定内だ。
彩花の驚く表情を想像するだけで、自然と顔がニヤける。
「それでね、その砂東くんと明日から私のいるお店で一緒に働く事になってさ!ビックリせん?!」
「2人、やっと会えたんやん。良かったね。」
彩花の驚く声を内心ワクワクしながら期待したのに、まさかの予想外の返答に思わず「へ?」と一言。
頭が真っ白な私の次の言葉を待たずに彩花は話を続ける。
「一目で春希くんって気付いた?元々かっこよかったけど、更にかっこよくなっとったやろ?私達も春希くんとも随分会ってないけん、また4人で集まりたいね!」
「えっ、えっ?!何で?!!ちょっと待ってよ?!彩花は砂東くんが私の会社におる事知っとったと?!」
「うん。」と、これぞ混じりっけのない正真正銘純真無垢な彩花の返事に、言葉を失った私の口はパカーンと閉じないままだ。
「どーゆー経緯かは忘れちゃったけど、何年か前に杏と同じ会社の本社勤務になったって事までは健一から聞いて知っとるよ。」
うる覚えの情報でも私が驚くには充分すぎて。
「えー!!なんそれ?!何でもっと早く教えてくれんやったと?!」
「んーーーーーーーーーーーーーーーーー。サプライズ…的な?」
色んな答えを期待したのに、長く考えた末のシンプルな言葉に私が納得する筈もなく。
「…サプラ…イズ?…え…どこが?あのっ、」
お互いの認識違いのサプライズの意味を正そうと「あのね、」と発そうとした所で、電話の向こう側で子供達の泣き声が聞こえ始め。
「ごめーん!喧嘩が始まっちゃった!もう電話きるね!じゃあ、またね!いつでも連絡して!」
サプライズだけされて後は放置?
すでに切れてしまっている携帯電話を呆然と眺めるしかない。
「雑なネタバラシだし、砂東くんは元々カッコ良くはなかったでしょ……。」
腑に落ちないサプライズに、すっきりしない気持ちのまま私の休日は過ぎて行った。




