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願えば初恋  作者: y-r
アイツとの再会

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そして日曜日の休みから、1つ飛びで休みだった昨日の火曜日。


憎き砂東フロア長との望まない再会を1日だけでも忘れるべく、私はまた自分の家に閉じ籠り、現実逃避に明け暮れた。


だってさぁ?


砂東フロア長が帰った後も、砂東、砂東、砂東、砂東。


私が会議室で勉強会にでている間に帰ったのか、気付いたら居なくなっていて清々してたのに、レジに行っても従業員専用トイレに行っても事務所に行っても帰りの更衣室でさえも、しつこくアイツの名前が飛び回る。


こっちからしてみたら2度と思い出したくない記憶ばかりなのに、名前を聞くたび、昔の嫌な思い出ばかりが頭をかすめる。



「なぁ、甘味。なんでお前は俺達と一緒の高校に行かんの?一緒の所に行けば、また毎日楽しく過ごせるやん。今からでも遅くねーから一緒の高校受けろよ。」


中学最後の冬休みも終わった1月中旬。


受験勉強もラストスパートの中、特別日課で早く授業が切り上げられた今日の放課後も、2月にある学年末テストに向けて静かな図書室で1人で集中して勉強したかったのに。


何故かおまけでくっついてきて勝手に隣に座っている砂東くんに話しかけられていて、勉強に全く集中出来ない。


「は?そんなん無理に決まっとーやん。勉強せんなら早く帰りーよ。さっきから邪魔なんやけど。」


好都合にも図書室には誰もおらず、勉強するにはうってつけの環境だ。


砂東くんさえいなければ…の話しだけど。


「今からするし。」


私が勉強をしだして20分経過して、ようやく通学バックから教科書と筆箱を取り出す砂東くんに私は呆れ顔。

それでも、大人しく机に向かい出した砂東くんを確認し、私も途中で手を止めていた問題集の続きを解いていく。


静かな図書室で教科書のページをめくる音や、ノートにシャーペンで答えを書いている音だけが耳につき、自分が受験生だという現実を嫌でも実感する。


2学期まではふざけてばかりだった砂東くんも、3学期に入りクラスのみんなが本格的に勉強に取り組む姿を見て、さすがに危機感を感じたのか真剣に勉強に取り組む姿を見る事が増え。


「あー、もう!」


突然の砂東くんの大きな声に、私の肩はビクッと反応する。


「ビックリしたー!急に大声ださんでよっ!心臓に悪いやろっ!」


「だってさー!この問題の解き方が全く分からんっちゃん!ねぇ、甘味。どー解けばいいん??」


すぐに私に頼るのは砂東くんの悪い癖だろう。


「別にテストじゃないんやけん、パッと解答を見て理解出来ればそれでいいやん。」


「見たけど全然分からんっちゃもん。」


ノートの隣に並べられた解答用紙を見ながら頭を抱え珍しく苦悩する砂東くんの姿に、私は仕方がないなと解答用紙に目をやる。


「どの問題なん??…あー、これはね。解の公式を使えば解けるっち書いとるやん。例えばね………ほら、解けたやろ?ちゃんと理解できた?」


「あー、そっか!じゃあこっちの問題はこーやって解けばいいのか!」


「そうそう!やれば出来るやん!じゃ、残りも解いてみてん。」


「おう!楽勝楽勝!」


少し要点を教えれば、すごく理解力もあり応用力もある所は砂東くんの良い所で、しっかり内容を理解して納得しないと前に進めない私からしてみれば羨ましい所でもある。


2人で集中して1時間と45分。


「ハッッ、クシュン!」


砂東くんのバカでかいクシャミに驚いて、そこで途切れた集中力。ふと壁にかかった時計を見ると、その針は15時05分を指している。


「そういえば、午前中熱っぽいって言いよったけどもう大丈夫なん?私に付き合いよんなら無理せんでいーけん帰ったら?インフルだって流行っとるし。」


「いや、大丈夫。今はもう平気やけん。俺ももう少し勉強したいし。」


「そーなん?ならいいけど。」


私達はまた机に向かい勉強に取り掛かるけど、一度途切れてしまった集中力と暖かい図書室で襲いかかってくる睡魔に、私は気分転換しようと「んー!」と両手を広げ背伸びをし。


私に釣られたのか、砂東くんも背伸びをしながら欠伸をしている。


「なんか食うもん持ってない?腹減ってきた。」


時計に正確な砂東くんのお腹に私はクスッと笑う。


「今日は何も持ってないよ。」


「それじゃあ、やっぱもう帰ろーや。今日も駄菓子屋に寄ってから帰ろうぜ。」


「大きい声でそんな事言わんでよね!先生にバレたら怒られるやん!」


私達が勉強している間に、図書室勤務の司書の先生が戻ってきていて。


「バレてもいいやん。後少しで卒業ばい。」


「最後の最後までアンタのせいで怒られたくないんやけど?!どんだけ私がアンタに巻き込まれたと思っとるん?!」


「でもさ、楽しかったやろ?」


「……まぁ確かに、何もない平凡な日常を過ごすよりはマシだったかもね。でもマシってだけで、アンタのせいで迷惑をこうむった方のが多かったけどね!」


そう感じる程この一年間は、砂東くんのせいで騒がしく。


「……甘味はさ。……俺達と離れる事になるのに寂しくないと?」


図書室が静かだから余計になのか。


私に問いかけたはずの言葉なのに、うつむき机の下で指をいじっている砂東くんの方が何だか寂しそうに見えて、そんな姿は普段の砂東くんからは想像出来ない。


「気持ち悪っ。急にしんみりせんでよね。まだ2ヶ月先の話しやん。それに、いつまでも仲良しこよしじゃおられんとよ。」


砂東くんには冷たく聞こえたかもしれないけれど、私だって寂しいに決まってる。


でももう決めた事なんだ。


今は、寂しさを感じるより自分が決めた進学先に合格出来るか不安な気持ちが勝っていて。


「それとも何?砂東くんは、私と離れるのがそんなに寂しいと?あ!まさか~。私の事、好きになっちゃったとか??」


私は、いつものようにからかうつもりで砂東くんの顔を覗きこみ。


「バッ、バカ!そんな訳なかろーも!からかう相手がおらんくなるけ面白くねーなって思っただけやし!それに、まぁ…そうだよな。お前の頭じゃ、俺達が受ける高校受かんねーしな!」


お互い、からかい。

お互い、からかわれ。


一年の間、全く成長しなかった私と砂東くんとの友人関係。


「はぁ?!!健一くんと彩花に言われるならまだしも、受かるかどうかも分からんアンタに何でそこまで言われんといけんとよ!なんならアンタより私の方が頭良いっちゃけんね!いちゃもんつけるならどっか行ってよね?!私、アンタの相手しとる暇なんかないんばい!」


この後、司書の先生に怒られた事は言うまでもないだろう。

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