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願えば初恋  作者: y-r
アイツとの再会

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「ハッ!!!!」


思い出した衝撃に、私は口に手を当て思わず息を呑む。


突如、脳裏に浮かび上がったある人物。


その人物なら、こんな失礼すぎる態度も納得しかない。



コイツっ!!!

アイツだっ!!!



砂東 春希(さとう はるき)っっっ!!!」


「やっと思いだしたか。お前が俺の事を忘れるとかマジないわ。」


突然、私の前に現れた砂東 春希。


「いやっ、覚えてる訳ないでしょ?!私達、卒業式以来会ってないじゃん!」


「だとしてもだろ?俺はお前の事ずっと覚えてたし。」


「えぇ、、、。いやぁ、、、。だってさ、十数年振りってレベルだよ?!?!」


私が忘れていたのも無理はない。


コイツは、中学3年の時の同級生。

と同時に、私の初恋の健一くんといつも一緒につるんでいた相棒で。


コイツを含めた健一くんと彩花と私。

旗から見れば、いつも一緒にいる仲良し四人組に見えた…かもしれない。


でも私からしてみれば、毎日毎日、毎回毎回、コイツが邪魔で邪魔で仕方なかった。


彩花と健一くんは幼なじみで小学生の頃から仲が良かったらしい。


そこに中学になり私が加わって、彩花と健一くんと私、友達としてとてもいい関係が築けていた。


その関係が変わり始めたのが、3年生に進級し、3人が同じクラスになってからだった。


私は、彩花の健一くんに対する恋心に気付いてしまった。


そしてその時、私も同時に気付いた。

健一くんに対する恋心を…。


それでもやっぱりおじゃま虫は私の方だと、あの二人が長年に渡り築きあげてきた関係を、崩そうなどという事は私には出来なかった。


そんな私のデリケートな時期にさえ、いつもいつも私にちょっかいをかけてきたコイツ。


星の数ほどムカつく事はあったけど、何よりムカついたのは、私の名前がダサい、、、と言った事。


いや、そりゃさ。

奄美とか、天海とか、私も憧れたわよ?!


名前の響きだけを聞いた人からは、「綺麗な名前ですね!」なんて言われる時もあるけど。


「あ、漢字は甘いに味って書いて"あまみ"なんです。」ってバカ正直に伝えると、「へー、珍しい名前ですね〜。」に変わり、下の名前まで聞かれようものなら憐みの表情を浮かべられる事はしばしば。


でもさ、私からしてみたら苗字なんて生まれた時から付いてるもんじゃん?


先祖代々受け継がれてきたもんじゃん?


それを何?


ダサいだと?


そんな事わざわざお前に言われなくても、私が一番感じとるわっ!!


だからといって、数回からかわれたぐらいで怒る私ではもちろんない。


なぜなら、名前にまつわる受難は筋金入りだ。



確かに私の両親も、よりにもよって何でこの苗字にこの下の名前を付けたのか。


お母さんが、"杏の花"が好きだから女の子が産まれたら絶対この名前をつけるんだ!って決めていたのは知ってはいるが。


こんな名前じゃ、絶対からかわれるに決まってるのに。


始まりは、小学生の時からだ。


苗字が"甘味"で、名前が"杏"だから、今日からお前のあだ名は"あんこ"だと。


なんと安直、バカバカしい。

でもそれは、小学生だから許される範囲。


だって、いつかはそう言われる時が来るんだろうなって、自分でも安易に予想出来たから。


でも私は、低レベルなガキは相手にしなかった。


そのお陰か、私をからかう男子も減り、いつの間にかそのあだ名は自然消滅していった。


私は、中学に入った後も平穏な日々を過ごしていた。


なのに…。


中3になって早々に、また我が身に降りかかってきた名前の受難。



「なぁ、甘味。お前の苗字ってさ、どーーー考えてもダサくねぇ?しかも甘味ってふわ〜と柔らかそうな割には、当の本人は声はデケェし気はつえーし。本当、名前と性格が反比例だな!」


「またそれ?!何回同じ事言うと?!もう本当うざい!平凡な名前のアンタに言われたくないし!」


くどいようだが、数回なら!私だって怒らない。


ただコイツの場合は、本当の本当の本当に、尋常じゃないくらいしつこくて。


「バーカ!俺の名前は全然平凡やないし!」


「はぁ?声に出して呼ばれたらアンタもただの"さとう"やん!下らん事ばっか言ってないで、アンタも健一くんを見習って真面目に授業受けりーよ!今日も授業中寝とったやろ!本当信じられん!!」


「ふーん。授業中俺の事見とったんやん。もしかしてお前、俺の事好きなん?」


「絶対あり得ん!前を向いとったらアンタが勝手に私の視界に入り込んどるだけやけん!気持ち悪い想像せんでよね!バーカ!」


「うわ~!かわいくねー!何でお前ってそんなんなん?!俺に対してだけ何でそんな冷たいん??俺にも皆んなみたいに優しく接しろよな?!」


「自業自得やろ?!私だって、アンタなんかに毎日毎日無駄な体力使いたくないんちゃ!」


「だって、お前。俺が相手せんと、他に相手してくれる奴おらんやん?本当は寂しいくせに。」


「それならお構いなく。私、これでもモテるっちゃん。」


これは、嘘でもハッタリでもなく。


入学してから中学2年までの私は、年に3回くらい、同級生しかり、見ず知らずの後輩や顔馴染みでない先輩などから告白をされていた。


それでも告白された時は、まだまだ恋愛ごとに疎かった私は、誰一人として付き合う事はなく。


私の人生を振り返ってみても、あの時期が確実に私のモテ期のピークだった。



「誰か1人ぐらい付き合ってみても良かったかな。そしたら、砂東くんにこんなに絡まれんで済んだかもしれんしね。」


「はぁー?!お前がモテる訳ないやろ!寝てるか、バカデカイ声で話してるか、菓子食ってるかだけやろ?」


「ちょっと!それ全部アンタの事やろ?!勝手に私をアンタと同類にせんでよね!私は授業中には寝てないやろ!」


「いいやん。俺とお前、似たもの同士やん。」


「全っ然似てない!!ガサツなアンタと一緒にせんでよね!!」


そんな私達二人を、いつも隣で並んで見ている彩花と健一くん。


「春希!杏!二人とも、もうそれぐらいにしろよなっ。せっかく勉強しようと思って放課後残ったのに、お前らの馬鹿でかい声のせいで気が散って全然進まんやろ!」


「そうだよ、二人とも。いい加減仲良くせんと。それに、二人とも口が悪い。お互いバカバカ言ってるから余計むかつくんよ。全く!二人は、何で、、」


「あ、彩花!二人とも反省しとるみたいやけん、今日は説教せんでいいやろ?!」


普段は冷静沈着な健一くんが焦るのも分かる。

彩花のお説教は日本一長いのだ。


「本当?んー。健一が言うなら、今日の所は許してやるかな。」


「あぁ、サンキューな!彩花。」


本当は、私が健一くんの隣にいたかったのに。

ただ、仲良く話す二人を見ている事しか出来なくて。


「甘味。そのグミちょーだい。もう俺のなくなっちゃった。」


砂東くんは、そう言いながら、空になったお菓子のゴミ袋を自分の通学バッグにグシャッと押し込む。


私の机の上には、昨日の放課後に駄菓子屋に寄って買っていたグミの袋が置いてあり。


もちろん先生にバレたら叱られるのだが、今は職員会議中だから見回りの先生も来ない。



「は?何でアンタなんかに。って!ちょっと!!何で勝手に食べるん?!」


「そこにずっと置いとーけん、てっきり俺の為に残してくれとんやか〜って。だってコレ、俺の好きなヤツやん?」


「な訳ないやろ!しかもアンタの好みなんか全然知らんし!って、言いよう側からバクバク食べんでよっ!私の分がなくなるやん!」


いつも、いつも、いつも、いつも、この男が私の邪魔をした。


「あー!!もう空っぽやん!!何でよバカ!!」


「いいやん。後で買ってやるけん。」


「絶対ばい!同じ葡萄味のヤツやけんね!」


こんな言い合いは日常茶飯事。


「本当お前ら仲良いな。」


「羨ましいだろ?」と、気安く肩を組んできた砂東くんの腕を勢いよく払いのけると、私は想いを寄せているはずの健一くんにすら食ってかかる。


「全っっっ然良くない!健一くん、変な事言わんでよ!何で私がコイツなんかとっ!」


「でも、クラスの奴らはお前らがお似合いのカップルだって噂してたぞ?」


何にしても不思議と隣になるコイツのせいで、有らぬ噂話がたっているのは私も知っていた。


皆んな、夢に夢見るお年頃だから仕方はないが、自分が注目される事が苦手は私からしてみたらただただ迷惑な話。


「またそれっ。否定しても否定しても、何回同じ噂が出るん?!もう面倒くさくなってきた。」


今思うと、私が健一くんに踏み出せなかったのは、コイツのせいじゃないのか?!


責任転嫁。

被害妄想。


そんな事は分かってる。


ただ、そう感じてしまう程、あの頃いつも私の隣にいたのは何故かコイツで。


いくら思い出しても嫌な思い出しか浮かばない相手が、何故か今、こんな離れた土地のこの場所で私の目の前に立っている。


昔と同じ、偉そうな態度で。

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