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願えば初恋  作者: y-r
私の決意

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モチベーションを上げたい筈の、週の始めの月曜日。


壁に掛けてあるデジタル時計を見上げると、今の時刻は8時55分だ。



「んーと。今週の運勢は〜と、」


カーペットにあぐらをかいて、忙しなくしていた仕事支度の手をいったん止めて、55インチの有機ELテレビに映し出されている星占いの内容を目で追う。


「やった!射手座が1位って久しぶりじゃん!」


占い自体をいちいち信じる繊細な性格ではない。

ましてや、ニュース番組の最後にある一瞬で終わる星占いなんて尚更だ。


だけど、ここ数年、なんら変わり映えのない日常を過ごしている私は、週一のこの星占いを見るのがいつの間にか習慣になっている。



「えーと、どれどれ〜。"初恋の人との再会"で今まで停滞していた恋愛運が一気に急上昇!その人が、きっとあなたの"運命の人"。ラッキーアイテムは、オーブントースター!………って、なにこの占い〜?!」


1位になって喜んだのも束の間。

たった30秒足らずで天国から奈落へと突き落とされた私は、目の前のローテーブルにうなだれる。


「ラッキーアイテムがトースターって、、、。まぁ、これは身近に腐る程あるからいいとして。"初恋の人との再会"ってさぁ…。」


"初恋"っていう全人類の女子達が喜んで飛びつきそうなワードでも、私にとっての"それ"はほろ苦い思い出。


「初恋の健一くんは、私の大親友の彩花との純愛を実らせて、地元で幸せな家庭を築いてるっつーの!初恋の人が結婚してるんじゃ話しになんないじゃーん!」


万人向けの星占いに十数年前の古傷をグサっとえぐられ、テンションは朝からガタ落ちだ。


「そもそも、初恋と運命はくっつけちゃダメなんだって!あんなの恋愛漫画の世界だけなのよぉ〜。」


ため息混じりにボヤいている私は、一人暮らしにしては広めのワンルームのアパートで暮らしている独身女。



甘味 杏(あまみ あん)


今はまだ29歳。

でも、あと2ヶ月程で30代の仲間入りをしようとしている。



「うわっ!!」


20代最後の年。

否が応でも色々考えさせられる事は多く、鬱々としたままテーブルにうなだれていたら、いつの間にか時計の表示は9時5分になっていて。


「もーこんな時間!!片付けは帰ってからでいっか!」


目の前にあるグレーがかった木目調のローテーブルの上には、食べ終わった朝食の食器やコップやらがそのままの状態で置いてあり。それに加えて、たった今使用したばかりの化粧品とメイク道具がテーブルいっぱいに散乱している有り様だ。


「あれ?!ブラシは何処にやったっけ?!あっ、こんな所にあった!」


前日の夜に使ったままテーブルの下に転がっていたブラシを見つけ、胸の位置まで伸びた長い髪を右手に持ったブラシでササッととかす。


「そろそろ美容室に行って染め直してもらわないとな〜。これじゃさすがに明る過ぎるかも。」


色落ちしてきた茶色い髪を黒いヘアゴムで下の方で一本に括れば、いつもの出勤時のヘアスタイルが完成。


その所要時間、わずか1分。


「結局、この髪型が1番楽なんだよな〜。よし!もう出れる!」


気分転換に色んな束ね方を試してみたけど、仕事が忙しくなったここ数年はこの髪型が定着していて。


なんて、それらしい事を言ってはみたが、要は、面倒くさがりなだけなんだけど。


「ってあれ?!今度は携帯電話がない!携帯がないと仕事になんないんだよな………あ!そっか!歯磨きした時に洗面所に持ってったままだ!」




私の就業時間は朝番の9時45分〜18時45分と、遅番の12時15分〜21時15分で実働8時間で働いている。


「今日こそは定時で帰れるかなぁ。」


仕事柄、定時で帰れる日の方が少ない。


仕事が朝番の時は、昼ご飯用のお弁当を作り終えた後、その残り物で朝食を食べ。


唯一の情報収集源のニュース番組に耳を傾けつつ手早く身支度をし、全ての身支度を終わらせるまで忙しなくバタバタしっぱなしだ。


パジャマ代わりにしている大きめのTシャットもショートパンツも、ベッドの上に脱ぎっぱなしで。


朝のこの惨状は、誰にも見せられたもんじゃない。


一緒に暮らしている人がいた頃は、私のこのだらけきった性格も改善されていたのだが、今の私は絶賛一人暮らしを満喫中。


めったに休む事がない日曜日の昨日も、たまたま店長がこの日に私の公休日を入れただけで、独り身の私にとっては特別な休日ではなく。


何の予定もなかった昨日は、どこに出かける事なく、加入している動画配信サービスの映画なんかを立て続けに見ちゃったりして。


夜は夜で大好きなお酒を片手に、つい最近推し始めたアイドルグループのyoutubeのチャンネルを一気見しながら、のんびりと一人の夜を楽しんだ。



元彼と別れ2年。


私の休日は、予定がある日以外は大体こんな感じで終わっている。


結婚して子供を産んで___

なんて、地元の友達の結婚ラッシュが続いた20代半ばの頃は人並みに思っていたけど。


一人身になってみて改めて気付いたこの生活の快適さに、最近はまだこのままでもいいかな〜!なんて領域に入りつつある。


たまに物悲しく感じる時もあるけど、こんな生活も悪くない。と言うか、この生活の方が私には向いているのかも。


どんなにだらしない格好をしてても、ご飯を作るのが面倒くさくてグミをご飯代わりにしても、好きなお酒をいくら飲んでも、誰にも何も文句を言われない。


そう!!!

私は今、"自由"と言う言葉の意味をこんなにもヒシヒシと肌で体感している!!


一応占いは気にしてはいるが、本当は当分の間、恋愛はいいかな。

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