第三話《泊めてもらったら王城行きが確定した件》
「......で、君はどこの誰だ?」
低く、重い声だった。
目の前に立つのは、舞里のお父さん――カホダさん。完全に“ラスボス入場”の雰囲気である。
さっきまで天国みたいな食卓だったのに、急に尋問が始まった。
「えっと......その......記憶喪失、みたいなもので......」
自分で言ってて苦しい。
いや実際転生なんだけど説明できるわけない。
「記憶喪失、ですか?」
「う、うん。気付いたら街に倒れてて......何もなくて......」
部屋が静まり返る。
やばい。これ普通に不審者扱いでは?
その時。
「お父様! この人、本当に困ってたんです! 悪い人じゃありません!」
舞里が立ち上がった。
天使だ。完全に天使。好きだ。
カホダはしばらく黙ったまま僕を見つめていた。値踏みされてる。
絶対されてる。
たったの十秒くらいなのに、めちゃくちゃ長く感じる。
そして――
「......分かった」
「しばらく、この屋敷に滞在することを許可しよう。」
「......え?」
「ただし、怪しい行動とかあったらすぐにここから出される。いいな?」
神か??????
「ありがとうございます!!絶っっ対に怪しい行動なんてしないです!!」
思わず頭を下げた。異世界来て初めてのセーフ判定だ。
案内された部屋を見て、僕は固まった。
「いや広っっっ!!!!」
ベッドがデカい。
窓がデカい。
部屋がデカい。
全部デカい。
前世のワンルーム何個分だよこれ。
「本日はこちらのお部屋をお使いください。」
メイドさんまでいる。異世界すごい。
「夢じゃないよな......」
ベッドに飛び込む。ふかふかすぎて沈んだ。
(転生して初めて人生イージーモード来たか?)
――そう思った、その時。
コンコン。
「失礼します」
舞里が顔を覗かせた。
「明日、お父様が王城へ連れて行ってくれるって。」
「......王城?」
嫌な予感しかしない単語きた。
とりあえず、このデカい部屋を楽しもう。
◆◆◆
翌朝。
豪華すぎる馬車に揺られながら、僕は青空を見上げていた。
「なんで俺、王様に会うことになってるの?」
向かいに座るカホダは淡々と言う。
「身分不明者が自由に動くことはできないからだ。」
「アイツの許可が必要だ。」
ですよねーーー!!!
やがて見えてきたのは、巨大な城だった。
屋敷とは格が違う、完全にラスダン。
「帰りたい」「もう遅い」
即答された。
重厚な扉が開く、そこには玉座に座る一人の男。
その目が、まっすぐ僕を捉えた。
「異世界人よ。ようこそステラ公国へ」
「......は?」
「神より、話は聞いている」
......え。
「君は、この国で生きることになる。」
ちょっと待って。
まだ何も決めてないんですけど???
王は静かに言った。
「まず、君に身分を与えよう。」
助かった......のか?
その直後。
「ただし、監視付きで。」
「「「ですよねー!!」」」
――やっぱりハードモードだった。
いや、待って。なんで「監視」なんだ?まだ何もしてないけど。
「えっと……監視って?」
玉座の前にいた大臣が淡々と答える。
「そのままの意味です。」
やっぱりそうだった。
国王は静かに話を続ける。
「君は身元不明。 そして、この世界の人間でもない存在だ。」
優真は息を呑んだ。
(……それ、普通にバレてるのかよ。)
だが国王は動じない。
「安心しろ。今のところ、君を処刑したり追放したりするつもりはない。」
「今のところは、だが」
その一言で、安心は即座に崩れ去った。
カホダが口を開く。
「陛下、彼の処遇はいかがいたしますか?」
国王は少しだけ考えたあと、優真を見た。
「働いてもらう。」
「国民としてこの国に属する以上、働くのは当然だろう。」
それは確かに正論だった、寧ろ正論すぎて反論できない。
だが次の言葉で、優真の思考は止まる。
「王都巡回補助員だ。」
「......何それ?」
簡単に言えば、あちこちを見回って報告するだけの役職らしい、いわゆる雑物係。
「冒険者とかじゃないんですか?」「違う」
「騎士とか?」「違う」
「勇者とか……」「違う」
「ただのバイトじゃん!!」
一瞬、謁見の間が静まり返った。
そして舞里が小さく吹き出した。
国王は懐から一枚の証書を取り出す。
そこに書かれていたのは――
【仮身分証】
名前:未登録
種族:不明
出身:不明
「不明しかないじゃないか!!」
思わず叫ぶ優真、国王はこう言った。
「まずはこの国を見てくるといい。」「見て、聞いて、自分の目で判断しろ。」
「この国が本当に平和なのかを。」
その瞬間、部屋の空気がわずかに変わった。
舞里も、カホダも、何も言わない。
(……今、空気変わったよな?)
国王は微笑む。だが、その笑みは、どこか疲れているようにも見えた。
「では、期待しているよ。」
王城を後にした優真は、舞里と共に王都の通りを歩いていた。
街は活気に満ちている。
商人の声。子どもたちの笑い声。
誰もが笑っている。
一見すれば、完璧な“平和な国”。
だがその時、優真の視線が路地裏へと向く。
◆◆◆
そこでは、一人の若者が警備兵に引きずられていた。
抵抗の声はない。
周囲の人々は、ただ目を逸らすだけだった。
まるで、それが“日常”であるかのように。
優真は呆然と呟いた。
「……今の、何?」
舞里は少しだけ沈黙し、そして答えた。
「……見なかったことにして。」
気づいたらもうすぐ一年間投稿してなかったわ、ごめん。
そういえば、大事なお知らせがある。こちら:
【大事なお知らせ】
《平和生活かと思ったら普通に死にそうな国に転生した件〜異世界に来たらハードモードだった〜》× 《REINOA》
のコラボ企画決定!
いつも応援いただき、誠にありがとうございます。
このたび、関係各所との協議および調整の結果、《平和生活かと思ったら普通に死にそうな国に転生した件〜異世界に来たらハードモードだった〜》と《REINOA》のコラボレーション企画が正式に決定いたしました!
今回のコラボでは、キャラクター、設定、文化、そして一部の世界観要素が登場予定です。
一見まったく関わりのない二つの世界は、いったいどのような形で交わるのでしょうか。異世界からやって来た冒険者たちは、音律を追い求める人々と出会うのか。
異なる世界で紡がれる物語は、どこかで静かにつながっているのか。
詳細につきましては、今後順次公開予定です。
続報をどうぞお楽しみに!




