第一話《プロローグ》
「はは……また落ちた、か……」
駅の階段の片隅。人目を避けるように座り込み、僕はただ空を見上げた。
ブラック企業、借金、友人ゼロ、家族も居なくなった。気づけば毎日カップ麺と睡眠不足のループ。生きている意味なんて、とうの昔に見失っていた。
「せめて……今度こそ、平和な人生を……」
そう願って目を閉じた、その瞬間だった。
——ドンッ。
胸を突き破るような衝撃。息が止まり、視界が暗くなる。
……次に目を開けた時、そこは見知らぬ場所だった。
「……は?」
僕は、石畳の上で転がっていた。まるで誰かにゴミのように捨てられたかのように。
周囲には聖騎士装の兵士、そして街を歩く人々。だけど、その目は……どこか冷たい。
「おい、新入りか? 身分証、持ってんのか?」
「……え、あの、ここどこで……」
「は? 何だ、コイツ。身元不明の流入者だな。面倒なことにならなきゃいいが、入れ」
「……また、ハードモードかよ……」
そこは「百姓と貴族が平和に共存する理想の国」と呼ばれている、斯帝拉公国だった。
僕の“異世界人生”は、最初の一歩から、つまずくことになった。
「......夢じゃ、ないんだね......これ」
目に飛び込んできたのは、まるでゲームの中に入り込んだような街並みだった。
だが、鼻をくすぐる香りも、耳に届く喧騒も、肌を撫でる風も――どれもがリアルすぎる。
「ていうか、転生って……ほんとにあるのかよ」
「まずは、人に聞いて......って言っても、言語を通じるのか?」
試しに、近くの女性に声をかける。
「あの、ここって……どこ、なんでしょうか……?」
「Meso corinipa kenoa?」
「......え?」
知らない言語だった。終わった。
「おいおい……人生ハードモードすぎんだろ、これ」
そのとき、頭の中に響く声がした。
「これより、この世界の言語を授けます」
目の前が真っ白になった。
そして、光が収まり始めた頃、目の前の景色が変わっていた。
「なにこれ......!!!」
「フフフ。ここは神の世界サリパノだ」
急に声を掛けられ、そこには数人の“人”……いや、“神”が玉座のような椅子に腰かけていた。
「やっと会えたな、神原優真」
「?!?!なんで名前を......!」
「まず、君がこの世界に転生した理由を話そう。そこに座ってくれ」
優真はまだ現実を飲み込めないまま、言われるがままに椅子に腰を下ろす。
目の前の“神”たちは、どこか人間離れした美しさと威厳を持っていた。
「まず、君がここに来た理由を説明しよう。君は『ステラ公国』に選ばれた者だ」
「……選ばれた、って何を? 俺、ただ普通に生きてただけなんだけど……」
一人の神が口を開く。
「この世界では今、“平和”という名の不安定な均衡が保たれている。表向きには民は仲良く暮らしているように見えるが、実情は……腐っている」
別の神が補足する。
「“平和の象徴”とされるステラ公国も、実は内部から崩壊が始まっている。君にはその中で、どう“生き延びるか”を見せてもらいたい」
「え、俺そんなすごい人じゃ……っていうか、何で俺なんだよ……!」
「運命とはそういうものだ。君は、ここにいるべき存在なんだよ」
神原優真は理解した。
この世界では、「生きる」ことそのものが、試練になる。
処女作なので色々頑張ります。