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読切短編集

ガチゴリラ令嬢ですが年下王子に求婚されました

作者: いのりん

性癖詰め合わせセットです


 ごきげんよう。

 私、ボルボレッタ・フォン・ゴリアーデと申します

 愛称はボルボ


 少々いかつい響きでしょう?

 でも、個人的には気に入っている名前なのです。


 まず家名のゴリアーデは伝説の巨人が由来です。

 恵まれた体格で武勲を立てたご先祖様が騎士爵から子爵位まで上り詰めた際に国王から賜った自慢の家名です。


 そして、ボルボレッタと言うのは、南国の言葉で『蝶』と言う意味なんです。儚げな美しさから『社交界の胡蝶』と呼ばれていて、わたしの出産に伴い命を落としたお母様が名前の由来です。そう言う由来を知ると可憐に思えてきますよね。


 しかし、残念ながら私、殿方達からは陰で『ガチゴリラ令嬢』なんて言われているみたいです。

 一途な娘や脳筋な美少女を冗談混じりで「イノシシ娘」や「ゴリラお嬢」などと評するのは見たことがありますが、本件はわざわざ頭に『ガチ』をつけているあたりに本気さを感じます。


 悲しいですし、不敬な!とも思いますが、不本意ながらそう言いたくなる皆様の気持ちも分かるので、強く非難する事は躊躇われます。


 と、言いますのもまずルックスがゴリラそっくりなのです。いえ、謙遜や自虐ではなく、客観的にみて本当に。

 そして物理的に大半の殿方よりも強い。いえ、自慢や慢心ではなく客観的にみて本当に。

 どう考えても、お父様の血筋に加えて「とにかく強く、健やかに、そして強く育て」と教育、訓練されてきた結果です、本当にありがとうございました。


 まず私、身長193センチ体重95キロでして、体格は筋骨隆々、眉は太めで彫りが深いキリリとした顔立ちをしています。加えて昔、学院で護身術を習った時に講師の元騎士団長を倒したことで、ゴリラ令嬢の異名が定着したようです。


「小柄でも細身でも技量があれば強い!っていうのはフィクションの中だけだ!!」と言うお父様の金言は正しかった様です。20キロ超の体重差は、技量差よりも大きなアドバンテージでした。


「そんなわけで、殿方に女性とみられておらず、24歳まで縁談の一つもこない事を申し訳なく思います。」

「何をいってるんだ、ボルボ。それは青二歳どもに見る目がないだけだ。お前はこんなに健康で優しく、しかも聡明な自慢の娘だ。それに何度も言ってるが結婚なんかしなくて良い、ずっとウチにいなさい!」


 ふつつかな娘ではございますが、お父様はこうやって溺愛して下さっています。結婚しなくて良いというのも、どうやら本気のようです。

 縁談が望めない分、せめて悪評は立たないようにしなくては。今晩、湖畔のみえる別荘で行われる社交パーティーも礼儀作法にだけは気をつけましょう。



***


 さて、現在パーティー会場です。

 今日も今日とて殿方からは声もかけられず、旧友の王女フローレンス様と一緒にいます。彼女も独身で殿方からはなかなかアプローチされません。


 とは言え、その理由は私とは大分違います。

 ほら、耳をすませば聞こえてくるのはこんな囁き声。


「フローレンス様、今日も美しいな」

「お付き合い、できないかな」

「どうせ相手にされないだろう」


「ゴリアーデ殿、今日も逞しいな」

「どつきあい、できないかな」

「どうせ相手にならないだろう」


 つまるところ、彼女は高嶺の花なのです。

 そして私は荒野のビオランテ(植物魔獣、危険度極)。

 囁いている層も、彼女は国の指導者たる伯爵子爵で、私は実働部隊である騎士団の皆様と、何から何まで違います。


「全く、生涯の伴侶としてのボルボの魅力がわからんとは、相変わらず男共は見る目がなくていかんな」

「フローレンスも相変わらず同じ事言ってますねぇ」


 そう、フローレンス様は変わり者なのです。王女なのに結婚には全く興味がなくて「看護してぇー」と従軍医師兼看護師として活躍しまくっています。

 国王様に泣いて頼まれたらしく、普段の外面はとても淑女っぽく振る舞っているので「ラングハイムの天使」なんて言われているんですが、本人は不本意そう。優しいのは事実なので私は好きですけどね、その二つ名。


「まあ、いいさ。今日はサプライズがあるからな!」

「それって」


 どう言う事でしょうか?と続けようとしたのですが「キャー!!」という淑女の皆様の黄色い悲鳴に遮られました。

 皆様の視線の先には、ルカがいました。フローレンス様の弟です。姉以上の美貌と王族でも一部の人しか使えない解毒の魔力を合わせもつ、人気者の王子様です。昔は可愛い弟分って感じでしたが、すっかりカッコよくなりました。


 しかし、珍しいですね、最近社交場では滅多に姿を見ませんのに。そんな彼ですが、こちらに近づいてきました。フローレンス様に何か用があるのでしょうか?


「今日はプロポーズに来ました。ボルボレッタ、僕と結婚して下さい!」

「……はい?」


 どう言うことでしょうか?ばっとフローレンス様の方を振り返ってみると「サプライズ、大成功⭐︎」って顔で笑っています。いや、一見優雅な微笑なんですが、長い付き合いなのでわかります、これはイタズラに成功した時の笑みです。

 周囲の人達は驚きから言葉を失っています。


「あの、本気なんでしょうか?」

「本気ですよ、ずっと貴女がいいと思っていたんです、先日20歳になり、やっと求婚できるようになりました!」

「今まで全然そんな素振りなかったじゃないですか」

「だって、僕がアプローチしたら噂になって、高位貴族の皆さんまで、貴女の眩しさに気づいてしまうじゃないですか!」


 えー、そんなことってあります?半ば諦めていた求婚イベントです。嬉しいはずなのに、実感が無さすぎて今一喜びが湧いてきません。


「魅力って、身体がちょっと頑丈なことくらいしか思いつかないんですが……」

「それ、最高の長所じゃないですか!」

「そうだぞ、ボルボ。私もルカも魔獣討伐の従軍経験や暗殺未遂にあったことがあるから実感する。身体が頑丈で死ににくいのは、実に素晴らしいことだ」

「それに僕、はっきりした顔立ちで背が高くてお尻の大きい女性がタイプなんです!」


 な、なるほど!?そう言われるとそうなのかも。ただ、それだけだと身体目当てみたいでちょっと……

 贅沢かもしれませんが、内面にも、少しでいいから何か言及貰えませんかね?


「それに、内面も素晴らしいじゃないですか!他の令嬢達って、お互い陰口悪口言い合うのが日常茶飯事なのに、誰も貴女の陰口言う人はいないんですよ!」

「同じ女として私が脅威に見られていなかったからと言うだけでは?」

「いいや、違うな。ボルボは学生時代から誰にでも裏表なく優しかっただろ。他の令嬢達も、その辺きちんと見ているんだよ」

「僕、ボルボレッタさんのそんなところも大好きなんです」


 そ、そうでしょうか?

 フリーズしていた周りの方達も状況が飲み込めてきたのか、王子の熱烈なアプローチに、キャーキャー黄色い悲鳴もきこえます。な、なんだか照れますね。


「はい、照れたところも可愛い!乙女ー!」

「姉上の言う通りです。それにほら、他の令嬢達は玉の輿になれそうな男性に対しては鼻息荒くアプローチしてくるのに、貴女はいつも穏やかに話しかけているでしょう?加えて普段の礼儀作法も素晴らしい!淑女ですよ淑女!」


 いや、まあ、他の令嬢ならともかく明らかに体格が上の私が、鼻息荒く迫ったら殿方達も怖いでしょうからね?確かにその辺は自重してたし、礼儀作法にも気をつけていました。その点を見ていて下さったのは素直にとても嬉しいです。


 熱烈なアプローチが続くからか、周りだけなく遠方からも「ワー!」とか「ギャー!」とか聞こえる様になりました。


「それに、時として凛と戦う強さもある」

「そうそう、身分の低い学生達に対してセクハラやパワハラを繰り返してた元騎士団長を、護身術の組み手でぶっ飛ばした時は痛快だったぞ。大っぴらには言えなかったが、男女問わずみんな陰では賞賛してたな」

「ああ、そんなことありましたね……でも、今度同じ様なことがあった時も勇気を出して戦えるかは分かりませんよ?」

「そんな謙虚で慎ましいところも大好きです!!」


 終わる気配のない熱烈なアプローチにとうとう、「防衛ラインが突破された!」とか「くそ、王族を最優先で守れ!」とかいう声まで聞こえる様になりました。


 ん?

 いや、おかしくないですか!?


 と、そこで大扉がバタンと開き、武装した、国家に仇をなす逆賊っぽい人達が10名ほど入ってきました!会場内の騎士団が迎え打ちますが、すり抜けた3名がこちらへ向かって来ます。


 プロポーズされたと思ったら急にバトル開始。

 嘘でしょう!?ところがどっこい、これは現実!


「いたぞ、王子王女はあそこだ!殺せ!うおおおー」

「グラアアアァァァァォァー!!!!!」

「「「ひいっ!?」」」


 2番目の声は私です。自分を叱咤する為に声を出しました。逆賊達が怯んだ隙に、できることをする他ありませんの精神で、近くにあった燭台を持ち上げて投げつけます。ついで椅子!椅子!テーブル!!……を目隠しにもう一つ椅子!あ、逆賊Aの頭に当たった。1人撃破!残るは2人。


「くそ、なんだこの……女?ゴリラ?」

「俺が足止めする、お前は王族をやれ!」

「させません!」


 逆賊Bはナイフを小刻みに突き出して牽制してきますが、私は急所を庇いつつ被弾覚悟で突っ込みます。私の左腕にナイフが刺さった隙に、逆賊Bの顔面には渾身の右ストレートが炸裂!撃破!残るは1人、頼みます間に合って下さい。


「オラ!オラ!オラ!」

「くそ、なんで王女がドレスにメスや注射器や金鎚なんか仕込んでるんだよ!」


 私も本当にそう思います。その王女、見かけと二つ名に反してハードボイルドなんですよね。そしてヒーラー枠と見せかけたバーサーカー枠。そんな訳で、鋭器鈍器を投げつけての時間稼ぎナイスですフローレンス!


 この隙に私は後方からドロップキックをお見舞い!逆賊Cの後頭部に直撃!撃破!私は受け身に失敗して背中を強打!痛い!


 ゴリアーデたちは ぎゃく族を たおした

 よかったです… 守れて ほっと しました


「助かったぞ、ボルボ。他の逆賊も片付いたようだ、腕は大丈夫か?……いかん!顔色が悪い!」

「まさかナイフに毒!?くそ!ボルボレッタさん!」


 おうじたちが なにかいっています

 でも どういうわけか みみがきこえません

 めがかすみ しこうも まとまりません

 かんじになおすことすら おっくうです


***


「はっ……ゆ、夢!?」


 なんという夢でしょうか。自分の深層心理がわかりません。


「おお、起きたかボルボ」

「良かったです、ボルボレッタさん」




 夢ではありませんでした。


 その後、フローレンス様達の話を聞いたところ、どうやら私は毒を食らって丸一日意識を失っていた様です。本当は即死級の猛毒だったみたいなんですが、身体が大きく頑丈で、お父様の教育で毒耐性もあり、解毒の魔力を持つ王子が近くにいたお陰で後遺症もなく助かったそうな。


 ちなみに、逆賊の主犯格はセクハラとパワハラでクビになった元騎士団長で、だから警備を掻い潜れたのだとか。逆恨みって厄介ですね。フローレンス様とルカのおかげで味方に死者が出なかったのが、不幸中の幸いです。


「ルカ様、命を助けて頂きありがとうございました」

「そんなの、こちらのセリフですっっ!僕、この恩は一生かけて返したいと思っています。今後、貴女を守れるくらい強くなれる様に努力しますし、どんな条件でも飲みますので、どうか結婚して下さい」

「こう言っているぞ、どうだ?ボルボ」


 本当に良いんでしょうか?夢みたいです。


「では、一つだけお願いしてもいいですか?」

「はい、何なりと!」

「父と拳闘(ボクシング)をして勝って下さい、何年かかってもいいので」

「はい!……はい?」

「良かったな、2人とも!さあ弟よ、早速トレーニングだ!」


 本当に良かったです。お父様ったら、私を溺愛するあまり「俺に拳闘で勝てるくらい強い男でなければ、伯爵だろうが侯爵だろうが結婚は認めん!!」なんて言うんですもの。どうせなら、親にも認めてもらって祝福されたいですからね。

 身長2.16メートル、体重160キロ、齢49にして肉体は未だ壮健なお父様ですが、ルカならいつかきっとやってくれるでしょう、多分。



***


 プロポーズされたあの日から2年。


「ガアアァァー!!」

「グハァ!」


 15ラウンドの死闘の末、とうとうルカのボディストレートが腹筋を貫き、お父様をマットに沈めました


「み、見事だ……結婚を認めよう」

「や、やった!俺、やったよ、ボルボレッタ!!」

「はい…はいっ……」

「泣くほど嬉しいか、ボルボ」


 そりゃ嬉しいですよフローレンス!!あの日からルカは本当に頑張ってくれましたもの。ああ、走馬灯のように思い出します、我が家秘伝の一日三十時間にも及ぶトレーニングに明け暮れた日々。そしてフローレンスによる成長促進剤投与と激痛を伴う骨延長術!

 それに加えて苦手だった牛乳も毎日きちんと飲むみました。すると、なんということでしよう!優男だったルカは、2.05メートル158キロの立派なグラップラーに生まれ変わりました。努力って報われるんですね。あと、牛乳ってやっぱり凄い。


 外見も内面も鍛えられた結果、顔つきだって中性的な美貌から男臭い勇猛な感じに変わっています。なんかもう、骨格レベルで違います。そして、お父様との15ラウンドに及ぶ激闘の結果、両瞼は腫れ上がり鼻血もでています。

 でも私は思います。昔のルカもかっこよかったですが、今の彼の方が、もっとカッコよくって素敵だと。


「では、改めて……結婚して下さいッ!」

「はいっ!」


 ルカは私を見つめます、私は彼を見つめます。

 いつの間にか年下の彼を見上げる様になりました。



 彼の方が背が高く、その身長差は12センチ。

 2人は幸せなキスをして終了です。


          〜happy end〜

強い女はいいぞぉ!


もっと強い男にデロデロに溺愛されるのもいいぞぉ!!


ポイントやいいねなんかも押して頂けると最高だぁー!!!

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