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機械化少年の異世界史  作者: 噛ませ犬
第1章 序
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序:第六話 眉間にしわ

うーん


 もう夜だというのにまだ明かりのついた部屋がある.それはその部屋の主が資産家であること,また明かりをつける必要のある人間だということを示していた.ここは城というより屋敷を城に改造したような建物である.前領主の放蕩三昧によるつけで,現領主は無駄な出費を防ぐため城の規模を大幅に縮小し,その廃材を売る必要があるくらいに追い込まれていたのである.

 「闇の森に侵入したものがいるとの報告がありましたが,如何致しましょう?」

 初老にさしかかった眼光鋭い男がやつれた様子の少女に報告をしていた.

 「それはまた面倒な事態になった.共和国の連中の可能性がある以上,こちらからも人員を割かねばなるまい.あそこはたいした税収を見込めぬ未開の地じゃが‘共和国’に対する前線基地としての役割も持っておるからの.だいたいこれまであそこの住人に退去するように言うておったのに聞かぬからこうなる.あそこの前線基地化が遅れておるのもあそこの連中がだだをこねおるからじゃ.本音で言えば見捨ててやりたい.」

 まだ年端も行かない少女の割に深い眉間のしわを作りながら少女は愚痴をはく.

 「またそのような憎まれ口をおっしゃって.あそこに手をお加えにならなかったのはあそこが‘共和国’に狙われるような価値を持たせたくなかったからでありましょう?そうすることでああそこを離れたくないという彼らの望みを叶えつつ,共和国に攻め入られにくくし,攻められた際には身軽に逃亡できるようにと.」

 「私を買いかぶらないで,クラウス.私はそこまで善人で神算鬼謀なわけではないわ.ただケチなだけよ.」

 少し表情が和らげながら秘書官に親しみを込めた視線を送る.実際,無い袖は触れない状態なのである.

 「どうかお休みください.このままではお体に障ります.」

 「確かにね.最近仕事をし過ぎかな.領民の要望書に目を通すのに時間を取られてしまったわ.」

 「どうか御身を労りください.確かに要望に目を通すのは大事ですが,体を壊されては本末転倒ですよ.第一,すべてに返事を出す必要はないのです.村の代表に要望をまとめさせるなりすればよろしいではありませんか.」

 「今,領民に反乱を起こされるのはまずいの.先代のおかげで領主の信用は地に落ちているわ.それに共和国が我が帝国の領土を虎視眈々と狙っているの.今は少しの不満も見逃せないの.各村長を全く信用していない訳ではないけれど不安が残るわ.」

 「しかし.」

 「今が踏ん張りどころなのよクラウス.今隙を見せれば確実に食われるわ.そうなれば我が領地を前線基地として侵攻がはじまり,共和国に飲み込まれる.そうなってはもう手遅れなのよ.我らの皇帝陛下は悪い方ではないけれど,ぼんやりした所がおありだから.」

 「・・・姫様.」

 「領主様とおよびなさい,クラウス.あなたももう私の世話係ではないわ,秘書官よ.もはや甘えは許されないの.あなたの忠言は胸に留めておくわ.では少し休みます.」

 疲れたサラリーマンのような哀愁漂う少女の背中を見ながら静かにクラウスは膝をついた.

 「・・・エオス様」


 〜ヨシヒロ〜

 「どうしてこんなことに.すべてはあの人たちが俺に押し付けるからだ.」

 眉間にしわを寄せながらヨシヒロはうなっていた.

 ことは今朝から始まった


 「・・・まずいな.」

 「・・・まずいです.」

 「ああ,まずい.」

 「非常にまずいですね」

 「致命的だな」

 五人が全員眉間にしわを寄せてうなっている.重要な案件に頭を悩ませているのだ.

 「調味料なしだとここまできついとは.」

 「塩味ならつけられるけどね.」

 「そこがまだ救いですね.」

 「肉が欲しくなりますねやっぱり.」

 「それは言わないでくれ.腹が減る.」

 現代人は基本的においしいものを日常的に食べられるのだ.しかし調味料なしの食事は初体験といっても過言ではない.無理からぬ反応である.しかも昨日のナノマシンの使用によりヨシヒロとトモエはかなりのカロリーを消費しており実はかなり困窮していた.他の人も省エネでナノマシンとIISを使用しているといえ,常人の1.5倍は消費しているのである.これは深刻な問題と言えた.食わねば餓死するが舌が肥えた現代人にこの食事は苦痛でしかなかった.それにとって来れたのは草とキノコだけで非常に低カロリーなので量を食べないといけないのである.

 「やはり早急にここの住人とコンタクトをとる必要がある.」

 「そして食料と調味料を分けてもらわないと死ぬ.」

 「あと肉も.」

 「じゃあ一人に食料を集中させて,他のメンバは省エネで過ごし,村に接近し言語を解析した後,その結果を全員で共有するのが最も効率的だな.」

 「誰がいく?」

 「村人に気づかれず接近できて帰って来れて言語の解析を行えるやつだね.」

 「トモエちゃんかヨシヒロ君ですね.」

 「私は無理ですよ,言語の解析なんて.」

 「じゃ消去法でヨッシーに決定.」

 「ちょっと待ってください.なんで勝手に決まってるんですか.しかもヨッシーてなんですか.俺は爬虫類じゃないですよ.」

 「君が適任だ.」

 「がんばって.」

 「君ならできる.」

 「君しかいない.」

 「乗せようったってそうはいきませんよ.かなり危険な話じゃないですか.しかも言語の解析なんて相手との会話なしじゃすぐにはできませんよ.というかヨッシーはスルーですか,そうですか.」

 「できるんじゃないか.」

 「俺たちにはできない.」

 「私たちのためにがんばってくれ.」

 「危険な所に私たちのために行ってくれるなんてすてきです.」

 「・・・わかりました.」

そしてヨッシーは集団の力に屈したのであった.


 「あそこで「わかりました」なんて言わなければなぁ.あぁ,くそ.解析進まねぇ.いっそリスク承知で話の分かりそうな度胸のあるやつに話に行くか?それで協力が得られればかなりスムーズに話が進むんだが.しかしまだ人が森に入ってきてるな.化けもんの多い方には行ってないみたいだが・・・」

などと端から見たら独り言をぶつぶつ言っている怪しいやつなのだが注意する人は誰もいない.

 しばらくするとある程度解析でき,村人の会話が分かるようになってきた.


 〜村人〜

 「□□□は見つかったか?」

 「いや,新しい足□も見つからない」

 「まさか□□□に方に行っているんじゃないか?」

 「□□□!しかしあそこにはシンシアしか入れないぞ.もしそうならかなりの□□を持ったやつだ.危険□□□.」

 「もう帰ってしまったんじゃないか?」

 「おーい!」

 「どうした?」

 「海岸に奇妙な□□□があった.」

 「奇妙な□□□?」

 「見たこともない奇妙な□□□だ.もしかしたら□□□は□□□に乗ってきたんじゃないか?」

 「じゃあそこにやつらは帰ってくるかもしれんな?」

 「そこには数人の□□□を残して□□からの□□を待つか.」

 「そうしよう.」

 「□□□には無理しないように伝えてくれ.」

 「わかった.」


 〜ヨシヒロ〜

 まずいな.どうやら宇宙艇が見つかったらしい.しかし四人とも見つかってないようだ.まだ解析途中だが早く合流して村人との友好的接触を図ろう.


 〜他の四人〜

 「危なかったな.」

 「ええ,トモエが気づかなければ見つかっていました.」

 「ありがとう.トモエ」

 「いえ,そんな.なんだか嫌な予感がしただけで.」

 「宇宙艇にはしばらく戻れないな.」

 「必要なものはまとめてきました.しばらくは大丈夫です.」

 「そうか.しかし連中はこんなに躍起になって探してるんだ?」

 「食料を取ったのがいけなかったのでは?あの村の畑の規模から考えると食料を山の資源に頼っていたのかもしれません.」

 「二日分だけだったけどなぁ.」

 「村人にしたらおそらく15人前は取られたことになるでしょうし.」

 「悪いことをしましたね.」

 「いつか謝ろう.」

 そうして四人は静かにそれぞれの国のやり方で謝罪の念を表した.





うーん


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