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機械化少年の異世界史  作者: 噛ませ犬
第4章 帝国編 2
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帝国編:第十五話 何者だ!何者ってお前・・・恥ずかしくて言えないよ。

今回短いかも知れませんが

 


 義弘が誤解を解こうと弁解を試みるも、デスポイアの言の字面だけ読み取れば事実ではある。しかし、聞き手の受け取り方に誤解があるのであり、その行動が恣意的なものであったかが弁解の焦点になる。このまま捨て置けば非常に不名誉な噂が流れることは当然予想されるため放置することはできない。

 これが純粋な事故であり、けして自分が一般的でない嗜好の持ち主というわけでないことを全力で説明しなければならぬ。納得してもらうべき相手は当主のヘリオスさんをおいて他には無い。彼さえ説得してしまえば彼の使用人から親族にかけてこの話を部外秘にしてもらうことも可能になるからである。しかし、これは時間との勝負である。彼に早々に緘口令を布いてもらわなければ流言が蔓延するのを止められはすまい。義弘はヘリオスさんに事の起こりから順を追って細かくしかし長くならないように心がけながら話すことになったのである。


 「なるほど。事情は分かった。」

 ヘリオスさんが苦笑いしながらうなずき、納得した風である。いや、笑い事ではないのですが。

 「分かっていただけましたか!いや、よかった!そこでお願いがあるのですが・・・」

 「いや、分かっているよ。このことは口外すまい。全員ではないがデスポイア様を神聖視している者もいるのでね。もしこの事が漏れでもしたら君は袋叩きにされてしまうかもしれないからね。」

 神だ。ここに神が光臨された。後半の言葉は華麗にスルーしたいところである。隣のデスポイアが微妙にドヤ顔をしていることに若干の苛立ちを覚えつつ、義弘の胸はヘリオスさんのご好意に対する感謝の念であふれていた。

 「ありがとうございます。そうしていただけると助かります。」

 「ところで・・・、ひとつ聞いてもいいかな?」

 急にヘリオスさんが神妙な顔つきになっている。これは何であろうか?

 「はい、もちろん。なんでしょうか?」

 「君は・・・何者だ?」

 何者であるか。大変答えにくい質問である。むしろ私が教えてほしいくらいである。地球にいたときは名前と所属と現住所くらい言えば何者であるか大体説明できた。しかし、ここでは自分は空気のように非常にあいまいな存在である。どうやら存在はしているようだが、自分はこの世界では何者であるか?「勇者だ!」といえる人間はある意味勇者である。さて?私は何者なのだろうか?人間社会での立ち位置について説明しなければならないが私はこの世界の社会の中でどういった位置づけか?ここは言語も文化も風習も身体的特徴も異なる。答えは・・・ひとつしか無かった。

 「私は何者でもありません。私はこちらとは異なる環境で生まれ育ち、こちらに流れ着きました。そこをこちらのプティ領の領主様に拾っていただき、こちらで生活させていただけることになりました。ですからこちらでは何者でもないのです。」

 この返答に迷いは無かった。本当に『この世界では』何者でもないのだから。

 「そうか。詳しくは問うまい。しかし,君を一般人とは思えないのも事実なのだ。デスポイア様との一件といい,この農園の主として,私は看過できない。」

 さすが一門を構えている人間は違う。単純に流してくれないらしい。

 「私は半分以上人間ではありません。」

 「!それは一体?」

 過激な言い回しをしてしまった。しかし,彼の調子を崩し,会話の主導権を握るには必要であった。

 「私は昔,事故で半分以上の体を失っています。」

 「まさか!君はこうして生きているではないか。まさか生ける屍とでも言うつもりか?」

 「考えようによればおっしゃる通りです。私は死の寸前で冥府の門から引き戻され,生かされている状態です。」

 「生かされているか。一体何に?」

 「こちらの言葉を借りれば『精霊』に・・・ですかね。」

 「精霊にか。では君は半分精霊という事かね!」

 「まぁ,そのようなものです。私の半分は金属などで出来てます。」

 「では君は『地』の精霊の加護を受けているのかね?」

 「精霊の種類は知りませんので良くは分かりません。」

 「そうか・・・。すまないね。立ち入った事を聞いてしまって。」

 「いえ。」

 「もう何も聞くまい。精霊の大いなる意思に生かされている人間に悪人はいないだろう。それに私から見ても君は良き男に思えるしね。」

 「ありがとうございます。そう言っていただけると助かります。」

 「いや,今日はゆっくり休むと良い。」

 「ありがとうございます。ただその前に・・・。」

 「その前に?」

 「ご飯食べさせてもらっていいですか?」

 一瞬,ヘリオスさんは驚いた表情を見せたがすぐに笑顔になり,快く食堂に案内してくれた。義弘は普段より多めの食事を軽く平らげ,客室のベッドに寝転がるや否や,眠りの国に落ちていった。

 

 「今の話,どう思われますか?デスポイア様。」

 ヘリオスの神妙な顔に蝋燭の火の動きに従い陰が揺れていた。

 「ふむ。にわかには信じられませんが,全くの嘘・・・とは言えませんわね。」

 「と言いますと。」

 「確かにあの者の体には金属があります。しかもそれは生き物のように蠢いている。」

 「ではやはり彼の体には精霊が宿っていると。」

 「それですわ。彼の体に宿っているのが『地』の精霊であれば例え他人の体の中に存在しようとこの私の呼びかけにある程度答える筈。しかし,全く答えませんでした。」

 「という事は。彼には精霊でない何かが宿っているか。『地』の精霊でないということに相成りますな。」

 「そういうことですわ。」

 デスポイアは心の中で義弘が『地』の精霊に加護を受けていない事を残念に思ったが大した事ではないと忘れることにした。







切りが何となく良かったんで

短く区切りました

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