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機械化少年の異世界史  作者: 噛ませ犬
第3章 共和国編 1
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共和国編:第一話 共和国の黎明

 共和国は共通の利益の追求を基本理念とした国家である。実際共和国は設立当初は複数の都市国家が帝国に対抗するための互助を約束した条約が母体となっている。都市国家の連合軍の総帥が都市国家間から選出され、総帥には非常時ということでかなりの権力が付与された。その任期は2年である。

 しかし、いつの世も都合よく自分たちを助けてくれる英雄を求めるもので総帥は市民に人気である。その英雄が謙虚で人の意見と取り入れ、容姿が端麗であればなおいい。そんな人物がいた。その人物は実にその生涯10回も総帥に選出され、最終的に永世総帥に選出された。その後、その子孫が永世総帥に就任する慣例となり、都市国家の代表で構成される元老院が顧問機関として設立された。結果的に限りなく君主制に近い共和国が誕生した。

 しかし、その体制は長く続くはずも無い。永世総帥が政治を行わなくなり、都市国家間の争いが起こり始めた。これが泥沼化するのに時間はかからなかった。本来都市国家間の調整をするはずの総統が怠ければ戦争にまで発展し、都市国家の吸収合併が行われる。そのようなことがまかり通るようになると都市国家間の緊張は高まり独自に軍備を拡張していった。そのような戦国時代が実に40年も続いたのである。

 その戦国時代に終止符を打った男がリュカオンである。リュカオンは都市国家エネタの商人の家に生まれた。商人は都市に商店を持ち商売をするタイプの人間と都市の間を行き来し特定の店を持たない卸業者など様々いるが彼の父親は都市国家の御用商人という同じ商人からも嫌われ、恐れられてもいる男だった。

 都市国家間の緊張が高まるにつれ軍備の増強は急務であるがそれには当然金がかかる。しかし税金を上げれば当然市民からの不満があがる。そんな不安定な社会状況になることを恐れていたときの代表は次の選挙での結果と都市国家の安全のためこの御用商人と契約を交わしてしまう。

 リュカオンはこのような怪物と呼ばれる男の次男として生まれ、間近で都市国家の暗部を直視してきた。どうにかする必要を感じたリュカオンは手っ取り早く市民の人気を得る方法として共和国設立の経緯から学び、仲間とともに都市国家の防衛軍に入隊した。

 このリュカオンの行動を父がどう思ったかは分からないが、リュカオンの軍隊内での出世の速さには父親の意思があったことは確実だろう。それが父親の愛だったのか軍内部に自分の影響力を増やそうとしたのかもしれない。


 防衛軍に士官学校は存在しない。しかしそれに代わるものとして騎士団があった。エネタ騎士団は基本的に自費で軍備を整える必要があるので有力者の縁者か、豪商の子弟が主な構成になる。まれに教官として入隊を許可されたものもいる。教官は基本的に支給で軍備を調えられる。要はこの騎士団は仕官養成の場との意味もあった。騎士団出身者が将来の各部隊の指揮官であり、政治の中枢を担うのである。

 その中にあってリュカオンは異質であった。騎士団はある種上流階級の通過儀礼であり、ほかの子弟は大して熱心でもない。また上流階級出身でない教官に対して侮りがあり、中には教官をしかりつけるようなものもいた。その中でリュカオンは訓練に熱心に取り組み、教官の話もよく聞いた。そのようなリュカオンの態度に教官は悪い気がするわけがない。その中でリュカオンが頭角を現すのは早かった。

 騎士団の主要任務は伝令、および戦場を走り回って兵士の鼓舞、隊伍をなさなくなった歩兵の組織化である。それによって指揮官としての資質が計られると同時に歩兵たちに指揮官としての役割を担うものとして認知される。その中でリュカオンは兵をよく鼓舞し、集めた兵を隊ごとにまとめ崩れそうな戦線へと適切に送り出していた。それはリュカオンの戦術眼もさることながら、兵たちの心理をよく理解しリュカオンにアドバイスしてくれていた教官のおかげである。


 着実に実績を積んでいたリュカオンの人生の転換点となる戦いが起こった。タイソンの戦いである。当時リュカオンは22歳になっていた。


 戦いの発端はたわいのないエネタと隣接する都市国家サーマーンの住民のいさかいから始まった。

 エネタとサーマーンの国境線はタイソン河によって決められており、その水の使用権は非常に曖昧で最初から火種はあったようなものだが、長年川を挟んだ住人同士がうまくやってきていた。

 しかしサーマーンの住人が自分の畑に河の水を勝手に引いてしまったことが原因で諍いが起こった。諍いの規模としては小規模で両方に多少のけが人が出た程度であったが、サーマーンの執政官としてはそれだけで開戦の理由としては十分だったようでエネタに支払い能力のないことを知った上で多額の賠償金をせまり、それを断った時点で宣戦布告した。

 対岸の住人同士としてはまさか自分たちの諍いから戦争に発展するとは思ってもみなかったであろう。国境沿いに住まう彼らこそが一番戦争など起こってほしくないと願っていたのだから。

 こうして望みもしない戦争が始まったのである。


 宣戦布告があってから総司令官を誰にするかであわてていた。通常、国の代表たる執政官が総司令官に就き、指揮をとるのである。しかしこの執政官は宣戦布告がなされるや否や家族と共に逃げてしまったのである。そこで執政官の相談役である百人委員会はある決定をした。

 無用な混乱を避けるため執政官が逃げ出したなど市民には告げられない。そこで執政官は首都にとどまり代理総司令官としてリュカオンを派遣すると発表した。

 それでも市民は不安である。22歳の若造が総司令官である。無理もなかった。 不安を感じないとすればよほど鈍いか肝の据わったやつだけであろう。

 そうして後に奇跡とよばれる戦いは始まった。

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