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機械化少年の異世界史  作者: 噛ませ犬
第2章 帝国編 1
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帝国編:第五話 大人の事情

 〜リチャード・ジョーンズの場合〜

 リチャードは華々しい舞台で活躍してきたスターではない。孤児だったリチャードは孤児院の皆を笑わせるの好きだった。それが高じて職業訓練校時代に俳優を目指すことになる。ただ食べていけるまでになる俳優はほんの一握りである。御多聞にもれず、リチャードは俳優としての訓練と同時に生活費を稼ぐ必要に迫られていた。その結果、彼はマフィアと組んで仕事をするようになっていた。彼の仕事ぶりから彼は百面の男と呼ばれるまでになり、変装で人をだますのが面白くなってきていた。もうすでにこの時彼の目的は生活費稼ぎではなく他人にはできないことのできる犯罪まがいの行為そのものになっていた。彼は自身を自嘲を込めて「俳優」と称する。

 彼は学校も辞めて何でも屋のようなことをはじめた。その仕事の大半は以前から付き合いのあるマフィアの依頼だったが。そのうち彼は騙す対象を変えることにした。マフィアそのものを騙すことにしたのである。

 その結果、彼はマフィアの資金を騙し取り追われる身となった。おそらくこの漂流をもっとも前向きに捉えているのは彼であろう。


 彼はこの世界で仕事を探す際に焦りはなかった。彼はほぼゼロの状態からスタートすることに慣れていたし、ある種の技術に絶対の自信を持っていたから。彼が仕事探しにまず始めたことは「ここでは何が求められているか」を探ることだった。

 この町は領主の膝元であり、この辺境領で最も安全な町である。しかし、町の治安は警察の様な公的な存在がいて成り立っているのではない。辺境領の軍は各町に分散しており、その町での情報の収集を主な任務としている。その情報はすみやかに領主に伝えられ、有事の際は分散している軍を集めてことにあたる制度になっていた。これは兵を大量に養う余力がないが故の苦肉の策であった。帝国には兵役が存在するがその装備や食事、報奨金なども支給であり大変金を食うのである。

そこで町の治安を領主に委任されているのが町の有力者により運営される自警団である。自警団といっても有力者の私兵であり、運営する旨味も当然存在する。旨味とはその町の自警団を置く区域の商売の独占である。

 彼はそこに目を付けた。自身で自警団を作り、独占区域を広げ、最終的には交易網を作り上げる。そのために彼は下地づくりから始めた。まず町の自警団に入り、それぞれの縄張りや特色を調べ、他の団員の信頼も得ていった。

 この自警団制度にはシステム的欠陥がある。まず縄張り争いを内包していること。さらには有力者による反乱の可能性である。そのため領主は縄張りをできるだけ細かく分け、利益調整をしずらくし自警団同士が団結してことにあたることを阻止している。

そこで商売の苦手な自警団に入り、自警団の運営ができなくなったところを買い叩いて自警団を手に入れるつもりである。    

 リチャード・ジョーンズ:元俳優、現 野心家自警団員、変態もとい変体


 〜ヤン・オールトの場合〜

 ヤンは微量ながらナノマシンを対外から放出し、物質の組成の解析および改変を行うことができる。そこを生かした職は・・・。

 「難しいですね。ここの特殊な精霊術ですって言い訳じゃ苦しいですかね。」

などと独り言を言っていると。

 「おい、オッサン。見たところ佩刀してねえな。戦闘系の精霊術師かい?」

 「いえ・・・(オッサン・・)」

 見るからに軽薄そうな白髪の青年がにたにた笑いながら話しかけてきた。

 「なら、剣買ってきな。安くしとくぜ。今なら、10タランでどうだ?」

 「この剣ですか?(見たところ単なる鉄だけど軽い。鉄ではないのでしょうか?)」

 「おう、見たところあんた体力なさそうだ。特別仕様で軽くできたんのさ。」

 「なるほど、中空になっているのですね。それで軽くなっていると。鉄の密度もかなり小さくしてますね。これなら単純に鉄の総量で言ったら隣の剣のほうがお得ですね。しかし加工の手間を考えれば妥当な値段ですが。おそらくこれでは剣で打ち合いになれば折れますね、簡単に。これでは手間と需要を考えればまず作りませんね。」

 「ほう、驚いた。中空なのを見抜いたのはいたが鉄の密度まで見抜いたのはお前さんが始めてだぜ。」

 「それはどうも。」

 「おーい、親父。掘り出しもんが来たかもしれないぜ。」

 「師匠か、マイスターと呼べ、馬鹿息子。」

 店の中から黒いひげを蓄えた筋骨隆々とした男が出てきた。

 「で、なんだ。掘り出し物ってのは。」

 「こいつだよ。こいつ一発で、叩きもしないで持っただけで例の試練の剣の秘密を暴きやがった。」

 青年が軽薄さが取れ、ただ好奇心に目を輝かせている。先ほどの対応が演技だと知れた。

 「こいつがか。」

 「どうも。」

 「よく見破ったな。しかし、鍛冶屋には見えねぇ。かといって学者にゃ持っただけであの秘密は分からなねぇ。お前何者だ?」

 「(さてなんて答えようか)・・・私は山々を渡って鉱物を調べていました。」

 「それにしてもあれは剣の重心をいじって取っ手の付加を強めている。普通は分からん。」

 「私は触れたものの組成を知り、改変することができるのです。」

 「・・・土属性精霊術の類か?いや、精霊との感覚の共有・・か?そういうことがあると聞いたことがある。」

 「・・・(そんなものがあるのか?)」

 「まぁ、そういうことで差別するやからもいるがここじゃあむしろありがたがられる類のものだな。だから警戒しなくてもいいぞ。」

 「はい、ありがとうございます。」

 「お前さん、これからどうすんだい?」

 「ぼちぼち職探しでもしようと思ってます。」

 「ほう!そりゃいい。うちの工房に来ないか?」

 「それは助かりますが、またどうして?」

 「そりゃお前、素材の見る目を持ってる男を得ることが一流の工房の条件の一つだからさ!まぁ、詳しい話は中でしようや。」

 「はい。」


 ヤン・オールト:元研究員、現資材調達、触り知り変える男


 〜イレーヌ・トレスカの場合〜

 イレーヌはやりたいことは固まっていた。彼女は動くものを作りたいのである。

 しかし、そのような職業がない。そこは、無いなら作ればいいが信条のイレーヌさん。まず造るにはパトロン、技術者が必要だ。そのためにはパトロンに造るものが有用であり、製作可能であると知らしめなければならないし、協力してくれる技術者は口の堅いものでなくてはならない。

 協力者を探すため鍛冶屋に雇ってもらおうとした。鍛冶屋には火の精霊術や金属の精霊術を使えれば男も女も無く、むしろ女のほうが高度な精霊術を使えるものの割合が高く重宝されるのである。ふと尋ねた鍛冶屋にすでに先客がいた。ヤン・オールトである。

 「あんたもここに来てたのか。」

 「うん、私の技能を生かせる仕事といったらここくらいかと思いまして。私の場合は主に材料の選定や製品のチェックが仕事になりそうですよ。もしかしたら会計処理もやらされるかもしれません。なにしろかなりのどんぶり勘定で会計してますからね。」

 「そうか。私は加工の方で雇ってもらえたらと思ったんだが。」

 「加工ですか。道具の作成と修理が主で、新製品の開発などは行ってないようですね、これまでは。でもここのマイスターが変わって以来新しいものを作り出す機運が高まっているらしいですよ。」

 「そうか。なら具体的な道具のプランを提示できれば雇ってもらえるかもだな。」

 「そうですね。私も微力ながら推薦させてもらいましょうか。」

 「助かるよ。」

 ここのマイスターと話が弾んだイレーヌは工房の技術顧問に就任した。


 イレーヌ・トレスカ:元エンジニア、現技術顧問、無ければ創る女



 











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