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機械化少年の異世界史  作者: 噛ませ犬
第1章 序
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序:第十話 災難

 夢を,夢を見ていた.眠りの浅いときに心地のいい音に起こされ,快適な温度に制御された空間でゆりかごに守られるように過ごしてきた日々を.しかしその生活に違和感を覚え始めたのはいつだったか.その揺りかごから出て様々なものを直接見たいと願っていた.そんな頃の夢を.


 イレーヌの朝は早い.が,寝起きはひどいものだ.十分くらいは頭が覚醒しないのである.コーヒーの香りによって徐々に覚醒していく.その後,シャワーを浴びて完全覚醒となる.しかし,ここにはコーヒメーカーもなければシャワー室もない.よってイレーヌは起きてから三十分はぼさぼさの髪をそのままに焦点の定まらない目でボーと室内を眺めることになった.

 いつもの休日ならこの後,趣味の機械いじりに精を出す訳だがここにはそれもない.イレーヌの朝は今日は何をするかを考える所から始まったのである.

 「・・・コーヒーのない生活は考えられないな.あとシャワーがほしいな.この村の水源はどうなっているのだろうか?聞いてみよう.」


 ヤンの朝も早い.寝起きは良いほうで,休日の朝はゆっくり紅茶を飲みながら本を読む.日が高くなったら山に登るのが日課となっている.しかし当然紅茶なんて物はなく,あるのは薬草から抽出された渋い汁くらいである.本もこの村にはないようだった.という訳でヤンも暇を持て余しそうになっていた.


 リチャードの朝も早い.しかし今朝は起きるのが遅れた.なぜなら変身しっぱなしだったから疲労がたまっていたのである.未だに変身を解けない現状にうんざりし始めたリチャードは今日は皆にそのことに協力をあおごうと決めた.


 トモエの朝も早い.いつも朝練で早く起きる習慣がついているからである.日課の精神集中を行い,次にストレッチをしてからジョギングである.ただ食事の量から考えてあまりカロリーを消費することもできず早々に引き上げなければならなかった.


 ヨシヒロの朝はさらに早い.早く起きて.まちに散歩に出かけるのが日課である.誰も起きてないまちを散歩するのが好きなのだ.そこで色々くだらない考え事をするのである.

 

などと皆それぞれ異なる習慣を持ちながら偶然にも全員が一堂に会したのであった.散歩から帰ってきたヨシヒロ,ジョギングを切り上げて帰ってきたトモエ,紅茶がないので仕方なく代わりの物を探すため外に行こうとしたみようとしたヤン,村長に水場がないか聞こうと出てきたイレーヌ,皆に相談しようとしたリチャードである.

みんなちょうど良かったので昼食を共にすることにしたのである.


 「食事と住む所が与えられてよかったね.」

 「しかしいつまでもタダ飯食らいという訳にもいくまい.」

 「ここを離れるにしても留まるにしても情報が圧倒的に足りないですね.村の皆さんに色々聞きにいかなくては.」

 「まず私の変身が解けるように協力してくれないか?」

リチャードが困り顔でお願いした.

 「確かにこのままという訳にもいきませんしね.」

 「問題はアレスさんですね.彼をどうするか.正直に言って許してもらえますかね?」

 「人は良さそうだったからな.伝え方さえ間違えなければ何とかなるだろう.」

 「そうですね.」

 「手伝っては・・・くれないんだな.」

 「だってどうしようもないじゃないですか.正直に告げる以外.隠し通せる物でもありませんし.」

その後,彼の前で正直に真実を告げ,中々信じてもらえないのに業を煮やしたリチャードが変身を解くと,アレスは気絶したのは言うまでもない.以外と繊細な男なのである.


 そうこうしているうちに装備が山賊より少しマシなくらいだが一応統一されている集団がやってきた.

 「領主の騎士だ.何しにきたんだ?」

 「徴税官がいないから税金をとりにきた訳じゃないだろ.時期でもないしな.」

 「となるとこれは例の奴らについてかな?」

 「早いな.」

 村人に動揺が走った.

 「静まれ!我々は領主様の名により森で見つかった異邦人を連行するように仰せつかっている.異邦人はどこだ?」

 隊長らしき小柄ながらも筋肉の引き締まった目つきの悪い男が叫んだ.


 「誰かきたようですよ.」

 「領主の命令だって.」

 「歯向かうとここの人たちに迷惑がかかるな.早く出て行って素直に連行されるか?」

 「連行されて問答無用で打ち首ってことはないですよね.」

 「映画の見過ぎだよ.そんなことをすれば住民に不信感を植え付けるだけだろ?」

 「でもここって多分封建制度の国だから王様の人となりによってはあり得るんじゃ?」

 「たしかに.何の安全策もとらずについていくのは危険ですね.領主の人となりと真意が知りたいですね.」

 「しかし,対応が早いですね.俺たちがこの村についた翌日にもう来るなんて.」

 「おそらく俺たちの存在に気づいてすぐにここの村の人が領主に知らせたんだろう.それで領主はこの村の近くに兵を待機させておいて村の様子を監視していたってところかな.組織化されてはいるみたいだな.」

 「組織化されているからって俺たちにまともな対応をしてくれるとは限りません.」

 「そうだが,村の人はケチだとか領主の悪口を言っていたが顔つきは優しげだった.慕われてはいるみたいだぞ.領主の悪口を言える環境だってところはプラスポイントだな.」

 「信用してみるか.」

 「シンシアに一緒に来てもらうって言うのはどうかな?領主と知り合いみたいだったし.」

 「シンシアが良ければそうしてもらおう.」


 こうして一行はシンシアとともに領主の館に向かうことになった.

 道中,騎士たちが異邦人たちの食欲に圧倒され,隊長は財布の心配とこの食費が経費で落ちるかを心配することになった.




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