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神竜が東京にダンジョンを作ったので親友と行ったらTSされた俺、最初に踏破して男に戻らせてもらいます!  作者: ミドリ


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28 DAY4

お昼の投稿をすっかり忘れてました。

 ダンジョン探索を開始して、四日目の朝。


『おっはよー! 起きる時間だよっ! みんなっ、今日も一時間後に出発だからね! みんなの胸キュンな場面を楽しみにしてるよっ!』

「おわっ!?」


 毎度の音量のデカさに、文字通り飛び上がった。勿論、心臓はバックバクだ。こ、この起こし方、マジで心臓に悪すぎる……!


 と、どピンクなベッドの上に、龍之介の姿がないことに気付く。


 えっ、どこいったの!? と慌てて周囲を見回すと、ストレッチをしている龍ノ介がしかめっ面で耳を押さえている姿が目に入った。


 ほ……と安堵の息が漏れる。一瞬、龍之介がいなくなっちゃったらって考えただけで、頭が真っ白になりかけてしまった。


 ……俺さあ、どれだけ龍之介っ子な訳? 対等だなんだって言っておいて、滅茶苦茶龍之介の存在に頼り切ってんじゃん。こんなんじゃちっとも龍之介に頼りになるって思われないよなあ、と情けなくなった。


 そんな龍之介はというと、俺と目が合うと蕩けるような笑みを浮かべる。


「亘」


 ――グハッ! なんつー破壊力! これだから無自覚イケメンは……! なんか龍之介の周りの空気だけキラキラしてない? 俺の目の錯覚?


 龍之介はニコニコしたまま、俺から視線を外さない。純粋な好意しか感じられない視線に何だかそわそわむずむずしてしまった俺は、ベッドに八つ当たりすることにした。


「……だから音量バグってるっつってんだろうがッ!」


 ハート型の枕をバンバン叩きつけると、立ち上がった龍之介が俺の元に駆け寄ってくる。


「どうどう、亘リラックスリラックス。朝イチの牛乳飲む?」

「飲む」


 龍之介が俺から枕をそっと取り上げると、俺の両手を取り引っ張り上げた。


「おはよ、亘」

「ん、はよ」


 頬を少し赤らめて照れ臭そうに見えるのに見つめる目はやっぱり逸らされることはなくて、今日も俺の心臓はトクンと高鳴ったのだった。



 マンハッタンペアと俺たちが考えた作戦。


 それは、今日はあえて普通にそのまま四階に進むことだった。


 勿論、既にどちらともフロア転移陣を入手しているから、四階をスキップして五階に進むこともできた。


 だけどジャンさんと龍之介の予想では、二階でフロア転移陣を入手したのは、恐らくはイタリアペア。何故なら、ブラジルペアが入手していたら、何も知らずに昨日の段階で四階に向かっていただろうからだ。


 きっとイタリアペアは、同じ階に他のペアがいる間にできるだけリタイアさせる為に、昨日はあえて一階飛ばさないことを選んだ。ライバルを蹴落としておけば、後半誰にも邪魔されることなくゴールすることができるからな。


 ブラジルペアがイタリアペアとエンカウントしたかは定かじゃないけど、今朝アホドラゴンがそのことについて触れていなかったから、出会わずに済んだと推測した。


 そしてきっとイタリアペアは、俺たちとマンハッタンペアがフロア転移陣を持っていると予想し、次は五階に転移すると踏んだんじゃないか。


 先に進める上に、うまくいけば俺たちのことも潰せる。


 ジャンさんのこの意見が、可能性として一番濃厚なように思えた。


 ということで、ジャンさんの意見を取り入れた俺たちは、今日も落下して地下四階に滑り落ちていった。


「いてて……っ」


 運動神経がいいとは言えない俺は、勢い余ってゴロゴロ床を転がっていく。


「亘、大丈夫? ほら、手を貸して」

「わりい」


 こちらはくるりと回転して華麗に立ち上がった龍之介に手を貸してもらって、ふらつきながらも立ち上がった。俺も格好良く滑り落ちたい。この際、一度でもいいから。


 スマホを操作していた龍之介が、俺にも見えるようにスマホを傾ける。


「ほら亘、ジャンさんの読みが当たったよ。見て」

「え? どれどれ」


 龍之介が示すスマホの画面には、昨日見たのと同じランキング表が載っていた。


「……あ!」


 今回は、俺にも分かった。イタリアペアの現在地が地下五階になっていたのだ。つまり、今日一日はイタリアペアに遭遇して身の危険に晒される心配がないってことだ。


 もし五階でイタリアペアがフロア転移陣を見つけたら、次は六階をスキップすることになる。つまり、俺たちが四階と六階でフロア転移陣を入手すれば、重なることなく先に進めるという計算だ。


「これで暫くは落ち着いてトイレに行けるな!」


 ほっとした笑顔を見せると、何だかやけに圧を感じる笑顔を浮かべ、龍之介が言った。


「でもトイレの前で待つからね。勝手に行かせないよ」

「わ、分かってるよ……っ」


 龍之介の安定のおかん具合に、俺は顔を引き攣らせながら頷いたのだった。



 四階に現れたのは、でっかなカマキリと蛾のモンスターだった。


「えぐうううっ! 裏側見せるなっ、気持ち悪いよおおっ!」

「亘、前を見て! 危ないから!」


 グロさでいえばムカデもどきよりはマシだったけど、それでも虫は虫だ。でかい分、足の付け根とかの詳細がはっきり見えちゃうところがマジで辛い。叫びすぎて吐きそう。


 敵を見ていることがどうしてもできなくて、助けを求めてスマホの画面に目線を移した。


【男バス元女マネさっちー】谷口、秘技薄目だってば!

【男バス女マネ雪】さっきから薄目し過ぎて魔法攻撃外してるの草

【名無し】ワタルちゃん、落ち着いて! 君ならできるよ!

【名無し娘】龍くんの足引っ張りすぎ、すっげー迷惑

【男バス元女マネさっちー】また来たよこいつ! 他の配信に行けっつってんじゃん!

【通行人A】ほら、スルーだよ、スルー

【名無し】息を吸ってー吐いてー

【男バス女マネ雪】あ、私、昨日他の配信見て回ったけど言語不明すぎて即落ちした

【男バス元女マネさっちー】あーなんだ、じゃあこいつ言葉分かんないから唯一分かるここに来てんの? だっさ

【名無し娘】あ? 馬鹿にすんな英語くらい分かるわ

【通行人A】視聴者同士での争いはやめておこう。毎回言ってるよ

【男バス元女マネさっちー】投げ銭一度も送ってない名無し娘さん、何しに来てるんですかー!

【名無し】ほらほら、アラシはスルーが鉄則だってば


 ……うん、今日も荒れてるねえ。乾いた笑いを浮かべながら、撮影中のキューに向かって手を振った。喧嘩するとコメントの流れる速度が早くなりすぎて大事な情報を拾えないんだよ。できる限り穏便にやってほしい。俺たちの命と俺の性別がかかっているんだからさ。


「頑張るから、応援よろしく!」


 大声で伝えると、少し広めの薄目になって、鱗粉を撒き散らす蛾にとどめの一撃を食らわせた。リアルな目玉が転がるのを、できるだけ無になりながら拾う。


 どうして目玉なんだ、と何度も聞きたかった。だけど、アホドラゴンからの発信だけで、こちらからは何も聞くことができない一方通行だ。だからきっと、永遠に謎なままなんだろう。もう諦めてるし、そもそも対話ができる脳みそをしてるとも思えない。


 そして今日も無事、中央にあるセーフティゾーンでジャンさんたちと合流。そのままダンジョンをくまなく探し回り、大量の鱗粉に目をしばしばさせながらも、危なげなくフロア転移陣を入手することができた。


 尚、トイレに連れションした時に、ジャンさんは顔だけじゃなく首まで真っ赤にして「……怪我が残ってないか確認すると言われて、昨夜は一緒に風呂に入ってしまった……!」と両手で顔を覆っていた。


 わお、スティーブさん攻めてるねえ。これって絶対そうだよな? と、いくら色恋沙汰に関してはほぼ初心者な俺だって分かるくらいのグイグイっぷりだ。


 俺たちがいる前では飄々としているスティーブさんだけど、二人きりになると雰囲気がガラリと変わるんだとか。どう変わるかまでは、なんか聞けなかった。だってジャンさんが滅茶苦茶恥ずかしそうなんだもん。


「……スティーブさんに、あれから聞いた?」

「いや、昨日は心配しただの何だの延々と語られてな、こちらから話題を切り出す余裕がなかった……」


 顔を覆ったまま答えるジャンさんは、可愛かった。


 顔を冷水で洗って火照りを収めると、トイレから出て地下五階への階段に向かう。


「じゃあ、明日は打ち合わせ通りに待ち合わせよう」

「はい。今日もお疲れ様でした」

「二人とも、ゆっくり休むんだぞ。あ、今夜は腕枕だったよね。やっぱりリューノスケがするのかな?」


 スティーブさんの問いに、龍之介はにっこり笑って「はい、当然です」と答えた。


 ……俺、緊張しちゃって寝られるかな。


 不安が過った俺だった。

次話は夜に投稿します。

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