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第7話『そう。まさに夢咲陽菜は悪夢の様な女だ』

youtubeで人工音声の読み上げを投稿しております。

https://youtu.be/B53VxMnaT28


ようやく、長く永い時間が終わる。


そう思うと今までの日々も、全て笑って済ませてやる事も出来るというものだ。


「今日は機嫌が良さそうですね」


「まぁね」


「この調子で過ごしていただくとありがたいのですが」


「それは夢咲陽菜に言いなよ。彼女が余計な事をしなければ僕は荒れないんだからさ」


「夢咲さんは自由ですからね。あまり期待はしないでおきましょう」


「そうだね。アレが大人しくしているなんて想像できないよ」


そう。まさに夢咲陽菜は悪夢の様な女だ。


だがそんな女と、仲良し姉弟とかいうふざけた設定でテレビに出るのも今日が最後となる。


そう。今日はドラマの最終回が放映される日なのだ。


こんなに嬉しい事は無いだろう。


「ハッハッハ!!」


「その悪役みたいな笑いはここだけにして下さいね」


そのまま僕は上機嫌なままスタジオに入り、光佑さんと楽しく談笑しながら時間を過ごした。


ちょくちょくと夢咲陽菜がゴミみたいな発言をしていたが、今日の僕は何も気にならない。


何故なら、今日で終わりだからだ。


今日で! 終わりだからだ!!




さて、今日は例のドラマの最終回が放送される訳だが、何故僕が夢咲陽菜とここにいるのか。


その理由は酷く簡単だ。


これから行われるのは、最近流行り始めているネットを介した番組だ。


視聴者の反応をすぐに見る事の出来る生放送の様なものだろうか。


僕も詳しい事はそんなに知らないのだけれど、視聴者がコメントという形式で意見をすぐに言う事が出来るらしい。


なるほど。サッパリ分からん。


分からないけれど、分からないです。という顔はせず、始めから知ってましたよ。という顔をするのがプロというものだ。


僕はとりあえずラジオの様にやや狭い部屋の中に入りながら、大きめのソファーに座り、目の前にあるモニターを見る、


そこにはこの部屋の様子が映されている。


おそらくは僕と夢咲陽菜がソファーに座り、すぐ横の司会の様な位置に今回の進行役である北島さんが座るのだろう。


ちょうど僕たちが全員カメラから見えている形だ。


なるほど、と頷いていると夢咲陽菜や北島さんが入ってきた。


どうやら番組が始まる様だ。


それから少し、最後の打ち合わせをして、いよいよその番組が始まった。


「皆さんこんばんは!」


【はじまった!】


【もうゲストいるやん!】


【これは豪華なメンツ】


【あー。なんだ山瀬佳織は居ないのか】


【要る? 山瀬】


【そりゃ好きな奴も居るからな。要望はあるだろ】


【まぁ一部に好きな奴が居ても大半は親の七光りなんて見たくない訳で】


【居なくても困らないしな】


なるほど。あのモニターにコメントと僕たちの姿が映るのか。


そしてあの映像は同じものを視聴者も見ていると。


中々面白いものを考えるな。


「この番組は19時より放送されるドラマ『あの陽だまりに咲く花』の同時視聴および、内容座談会となります。司会は私、北島早苗でお送りいたしますー!」


【おー。早苗ちゃん!】


【今日も可愛い!】


「あ、可愛いってコメント見つけちゃいました。ありがとうございます! えへ!」


【うーん。あざと可愛い】


【この計算しつくされた魅力よ】


「おっと早く進行しろって怒られちゃいました。では、本命の方々をご紹介しましょう! 藤田陽花役の夢咲陽菜さんです!」


「はい! ヒナちゃんです!」


「うーん。若い。可愛い。ちょっと向こうでお姉さんと良い事しましょうか?」


【自重しろ北島】


【おまわりさーん!】


「冗談。冗談ですよ。いや、それにしても、本当に可愛いですね。本当に同じ人類ですか?」


「アハハ。ヒナ。鳥さんじゃないですよー。パタパタ―。なんちて」


「はぁー! 可愛いかよ! ちょっとみんな。ごめん。私、これから陽菜ちゃんとデートしてくるから、今日はここまでだわ」


【まだ始まって二分も経ってないんですけど】


【開始すぐのテンションじゃないだろ】


「おっと、スタッフさんに怒られてしまったので、続いて二人目のゲストをご紹介しますね。おそらく国内で最も短パンの似合う美少年! 藤田陰人役の天王寺颯真君です!」


「アハハー。藤田陰人役の天王寺颯真です」


【颯真君引いてるやん】


【そら引くやろ。俺でも引く】


「いやいや引いて無いですよ。今夜はよろしくお願いします。北島さん」


「え? 今、夜のお誘いされました? お姉さんとエッチな事したいっていう話?」


【北島ァ!】


【落ち着け】


【相変わらず危険人物過ぎるだろ】


【なんで番組は北島を呼んだのか】


【頭がおかしい事を除けば優秀だからな】


【一番大事な要素だろ……】


「あら。そろそろ放送が始まる様ですね。一度私たちの画面は小さくしまして。ドラマの方を大きくしましょう。さて最終回ですが。この後、どういう展開になるんですか?」


「それ言っちゃうと、ネタバレになっちゃいますよ。北島さん」


「ハッ! 陽菜ちゃん……天才……?」


【北島。ドラマ始まってるからお前は黙れ】


【少し静かにしろ。北島】


「何で同時視聴で私、怒られてるんですかね? ってキャー!! 来た! 宗近さん! 画面越しでも格好いいですね! うーん。これがいわゆるイケオジという奴なんですねぇ」


【北島ァ!】


【お前のコメントじゃなくて、ゲストに喋らせろ!!】


「あら。視聴者さんにも怒られちゃいましたね。ではドラマはCMに入った事ですし。最終回の見どころをお二人に伺いましょうか。まずは陽菜さんから」


「最終回の見どころですか。そうですねぇ。陽花が。と言いたいところですが、私としては陰人君に注目して欲しいです。大好きなお姉ちゃんとそんなお姉ちゃんを自分から引き離すアイドルというお姉ちゃんの大好きな物。自分が好きな物とお姉ちゃんが好きな物。そのどちらも大切にしたい陰人君が出した結論に注目ですね!」


【なんてまともなコメント】


【これで十三歳ですよ】


【それに比べて北島】


「なるほど。なるほど。では颯真君もお聞かせください!」


「そうですね。あまり話すと内容を話してしまいそうなので、軽くだけ話しますね。やはり僕としては、お姉ちゃん……いえ陽花さんが悩み、迷った時に、これまでの時間を振り返って、最も大切な事に向き合う瞬間でしょうか。特に答えを出してから、進み始めたラスト十五分は目を離してはいけませんよ!」


「そうだねぇ。ラストはねぇ。瞬き厳禁。だね! 陰人君!」


「はい! でも……あんまり僕のお姉ちゃんを見ないでよね」


「はぁぁああああ! ヤバっ、リアル陽花ちゃんにリアル陰人君なんだけど!」


【互いに弟と姉の良いところを紹介し合ってるの、控え目に言ってヤバない?】


【息ぴったりだし。これはたまらんなぁ】


キラキラ。ニコニコ。キラキラ。ニコニコ。オエー。キラキラ。ニコニコ。キラキラ。ニコニコ。


「お。また始まりましたね。ここからCMも無いので、皆さん、まばたき厳禁ですよ?」




それから。


ドラマの放映が終わり、座談会へと移行した。


そこでは撮影現場での話や、話しても問題ない裏話などを話してゆく。


そして、あっという間……では無いけれど、座談会の時間もそろそろ終わりに近づいてきた。


「いやーこうして考えると色々と考えさせられる最終回でしたねぇ」


「そうですね。いくつか謎が残ってしまった物もありましたし」


「そういう所は考察しながら楽しんで貰いたいという事でしょうか」


【でも不完全燃焼感はある】


【これで良いのか? という様な気持ちはあるよな】


「ふふふ」


【なんだ。北島】


【遂に壊れたんか?】


「どうやら皆さんも気になっているようですね。残された謎が!! これから先の陽花ちゃんの進む道が!」


……ん?


なんだ。


何か嫌な予感がする。


「そこで、私から一つ重大なニュースを皆さんにお知らせします!」


【なんだ。なんだ】


【この流れ。確実にどっちかだろ】


【続編か、映画化か】


「『あの陽だまりに咲く花』の映画化が決定しました!!」


……は?


いやいや、え?


【顔】


【天王寺。顔】


【呆然としてるやん】


【そんなにお姉ちゃんと一緒にいられるのが嬉しいんか】


【てか知らされてなかったのか】


「そして、『あの陽だまりに咲く花2』も放映が決定しました!! 映画と2は別の可能性をそれぞれ映像化する予定なのですが、映画にも2にも、私、北島早苗が準レギュラーとして出演します!!」


【おー!】


【このために呼ばれてたのか!】


【おめおめ】


「わぁーじゃあ、早苗さんと今度は撮影現場でも会えるんですね!」


「そうよー陽菜ちゃん。お姉さんの魅力。たっぷり教えてあげちゃうからね」


「北島さんと共演ですか。楽しみにしていますね」


「え? 天王寺君?」


「以前共演した時よりも、さぞ魅力が上がってるんでしょうねぇ」


「お、お手柔らかにお願いします」


【終わったな】


【北島……自分でハードル上げていくのか】


【悲しい女】


【お姉ちゃんに手を出そうとするから……】


「そういえば、やっぱり颯真君も陽菜ちゃんも続編発表は嬉しいですか?」


「まぁ、そうですね。僕としては夢咲さんと共演する事で、自分自身成長できる所もあり……」


「天王寺君って結構甘えん坊なんですよ」


「いきなり何を言ってるんですか! 貴女は!」


「えー。でもお兄ちゃんによく甘えてるじゃん。この間なんて、現場でお昼休みに一緒にキャッチボールして遊んでたし。だから続編出て嬉しいのってお兄ちゃんと一緒に遊べるからでしょ。素直にそう言えばいいじゃん」


【お兄ちゃん? お兄ちゃんって誰だ】


【陽菜ちゃんの兄と言えば、立花光佑だな。元高校野球の超有名選手だ。調べればすぐ出てくるぞ】


【立花光佑とキャッチボール出来るってマジ? いくら払うと出来るん?】


【まず俳優になります。陽菜ちゃんと共演します。立花光佑にお願いします。出来ます】


【流石立花光佑だぜ。お願いするだけでキャッチボール出来るのか!】


【コイツ、目がバグってるのか?】


【既に俳優かつ陽菜ちゃんと共演が決まってる可能性ががが】


「え? 今コメントにチラって出てたんですけど、立花光佑って、あの立花光佑さんですか? あのホームランの動画の人?」


【そう】


【その人】


「え、やば。後でサイン貰お」


【一般人にサインを要求する人気アイドルの図】


【立花光佑が一般人かどうかは難しい問題なんだが】


「いやー何だか楽しみになってきちゃいましたね。撮影」


【せやな】


【しかし我々にはそれを知る術が無いという】


「ふふふ。気になる方も多そうなので、この北島早苗がちょくちょく撮影現場の写真や出来事を投稿しましょう!」


【やるやん!】


【助かる】


【まぁネタバレにならん程度にな?】


「あぁ! そろそろ終わりの時間が近づいてまいりました。ではまた続報はホームページをご確認下さい! ではここまでは司会、北島早苗と」


「夢咲陽菜と!」


「天王寺颯真でお送りしました。本日はご視聴ありがとうございました」


「じゃあ、またねー!」


番組が終わっていく音を聞きながら、僕は深い絶望感に包まれていた。


まさかまだあの地獄の日々が終わらないなんて!


でも、また光佑さんと仕事時間も一緒に居られるなら、多少は許してやるか。


仕方ない!

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