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 レンたちは馬車に乗り込み、町に向かって進み始めた。馬車にはトムが中に座り、ジョンと護衛の一人が御者席に座っていた。残りの2人の冒険者は馬車の後ろに位置し、レンは御者席の左横を歩いていた。


 道中、レンは商人たちや護衛たちと話をしながら、少しずつ信頼を築いていった。彼らの話を聞くことで、この世界のことや町の様子についても学ぶことができた。


「この辺りの町はどんな感じなんですか?」


 レンはジョンに尋ねた。


 ジョンは馬の手綱を引きながら答えた。


「この先にある町は、交易が盛んな場所だ。色々な商人が集まり、様々な物品が手に入る。君も必要なものがあれば見つけられるだろう」


 護衛の一人が続けて言った。


「町にはギルドもある。冒険者として登録すれば、仕事も見つけやすくなるだろうな」


「ギルドか…」


 レンは少し考え込んだ。


 護衛のもう一人が笑顔で言った。


「俺たちの名前をまだ言ってなかったな。俺はケインだ。こっちはガイル、そっちがファリス」


「よろしくお願いします。俺はレンです」


 とレンは敬意を込めて答えた。


 ケインが興味深そうに尋ねた。


「レン、お前がいた場所はどんなところだったんだ?」


 少し考えてから答えた。


「基本的には小動物やスライムしかいない場所でした。食料の確保には苦労しましたが、なんとかやってこれました」


 ガイルが続けて言った。


「お前は運が良かったな。その辺りはまだ安全な方だ。さらに奥に行くとオオカミのような獣もいるからな」


 レンは驚きを隠せなかった。


「オオカミ…それは危険ですね。生き残れてよかった」


 日が暮れる頃、一行は適当な場所でキャンプを張ることにした。レンは手際よく火を起こし、持ってきた干し肉を皆に分け与えた。商人たちも食料を取り出し、皆で簡単な食事を共にした。


 トムが満足そうに言った。


「君が持ってきた干し肉は美味しいな。これも君が一人で作ったのか?」


 レンはうなずきながら答えた。


「はい、森で手に入れた食材で作りました。食料の確保には苦労しましたが、なんとかやってこれました」


「君は本当にすごいな。記憶を失っているのに、ここまで生き抜いてきたなんて」


 ジョンが感心したように言った。


「皆さんのおかげで、これからはもっと安心して過ごせそうです」


 レンは微笑みながら、と答えた。


 ケインが少し驚いたように言った。


「レン、本当に記憶を失ってるのか?それなのに、こんなにしっかりした準備ができるなんてすごいな」


「ありがとうございます」


 その夜、星空を見上げながら、これからの生活に対する希望と決意を新たにした。彼はこの新しい仲間たちと共に、さらに成長していくことを誓った。


 翌朝、一行は再び旅を続け、道中でもレンは商人たちや護衛と共に歩きながら、さらに情報を集めていった。


 旅を続ける中で、この一団と少しずつ打ち解けていった。彼らとの会話は楽しく、互いに助け合うことで旅の疲れも和らいだ。


 ついに、町の入り口にたどり着いた。一行は門番に挨拶をし、商人たちの身分証を見せることでスムーズに入ることができた。門番は蓮に対しても確認を求めたが、蓮は身分証を持っていなかった。


 門番が厳しい顔で言った。


「身分証がない者は、保証金として金貨5枚が必要だ。それがないと町に入ることはできない」


 レンは困惑した表情を浮かべた。


「すみませんが、金貨5枚は持っていません…」


 その時、トムが横から声をかけた。


「心配しないでくれ。保証金は私たちが立て替えるから、君はその分を冒険者として活動して返してくれればいい」


「本当にありがとうございます」


 深く頭を下げた。


 門番は納得し、無事に町に入ることができた。町に入ると、商人たちに案内されながら、まずはギルドへ向かうことにした。ギルドでの登録が必要であり、今後の活動の拠点となる場所だ。






 レンたちは冒険者ギルドに到着し、立派な木造の建物を前に一瞬息を飲んだ。大きな看板には「冒険者ギルド」と書かれ、入口からは多くの冒険者が出入りしていた。内部からは活気に満ちた声が響いており、レンはその雰囲気に圧倒されつつも胸を高鳴らせた。


「ここが冒険者ギルドか…」


 ケインがレンの背中を軽く叩いた。


「さあ、行こう。君もここで正式に冒険者としての第一歩を踏み出すんだ」


 ガイルとファリスもレンに続いてギルドの中に入った。受付には笑顔の女性が立っており、彼らを迎え入れた。


「こんにちは。冒険者ギルドへようこそ。ご用件は何でしょうか?」


 ケインが一歩前に出て、女性に説明した。


「こっちのレンが冒険者として登録したいんだ」


 女性は優しい微笑みを浮かべながら、手際よく書類を取り出した。


「それでは、こちらの書類に必要事項をご記入ください。」


 レンは一瞬ためらいながらも、書類に名前や基本情報を記入し、特異なことに「槍の扱い」と書き込んだ。鑑定のスキルは念のため伏せておくことにした。


「名前はレン、年齢は17歳。特異なことは槍の扱い、と…」


 レンはそう呟きながら、書類を女性に渡した。


「ありがとうございます。それでは、登録料として銀貨3枚をお支払いいただけますか?」


 女性は微笑みながら尋ねた。


 レンは少し困った表情を浮かべた。


「あの、実は銀貨3枚を持っていなくて…」


 受付の女性はレンの様子を見て、少し考え込んだ後、優しい声で提案した。


「心配しないでください。登録料は受けるクエストの報酬から天引きすることもできます。それでよろしいでしょうか?」


 レンはほっとした表情でうなずいた。


「はい、それでお願いします」


「わかりました。それでは、こちらにサインをお願いします」


 女性は手続きを進め、レンに冒険者証を手渡した。その裏には「レン」と刻まれていた。


「冒険者としての身分証は、この小さな鉄の板になります。ネックレスとして身につけるか、ブレスレットとして使うか、どちらかを選んでください」


 レンは少し考えてから答えた。


「ブレスレットにします。なくすのが怖いので」


 女性はブレスレット用のチェーンを手渡し、それに鉄の板を取り付けた。


「こちらがあなたの冒険者証です。大切に保管してください」


「ありがとうございます」


 とレンは深く頭を下げた。


「こちらこそ、冒険者としてのご活躍をお祈りしています。何かお困りのことがあれば、いつでも受付までお越しください」


 手続きを終えたレンは、ケイン、ガイル、ファリスと共にギルドの広間を見渡した。多くの冒険者が掲示板を見ながらクエストを選び、仲間と作戦を練っている姿が目に入った。


 ファリスが声をかけた。


「これで君も正式な冒険者だ。まずは簡単なクエストから始めるといい。私たちもサポートするから。」


 レンはその言葉に感謝しながら、新しい生活への期待に胸を膨らませた。


 ジョンとトムもレンの元にやってきて、励ましの言葉をかけた。


「これからは君の冒険者としての成長を見守るよ。何かあれば、いつでも頼ってくれ」


「ありがとうございます。皆さんの助けがあってここまで来られました」


 レンは新たな仲間たちと共に、ギルドでの冒険者生活を始める準備を整えた。これからのクエストや出会いが、彼の成長をさらに加速させることを期待しながら、レンはギルドの中での最初の一歩を踏み出した。

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