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 正確な日にちは分からないが、いつしか異世界に来てから10日ほど経過したようだ。この間、蓮はいくつもの試練を乗り越え、経験を積むことで少しずつ生活の基盤を整えてきた。


 ある日、蓮は改めて自分を鑑定してみた。


[名前: 蓮(レベル5)]

[所持スキル: 鑑定(レベル2)、初級槍術(レベル2)]

[状態: 健康]


 レベルが上がり、槍術のスキルも向上していることが分かった。これまでの努力が確実に身を結んでいることに、蓮は喜びを感じた。


 最近では、狩りの効率も上がり、ホブレットを複数匹倒すことができるようになった。そのおかげで食料の確保が安定し、衣食住の環境も大幅に改善された。拠点には常に十分な食料があり、風や雨をしのぐために拠点も強化されている。


 そして、ついに岩塩らしきものを見つけた。川沿いを探索していたときに、白く輝く石の塊を見つけたのだ。それを鑑定してみると、確かに塩の成分を含んでいることが分かった。


[岩塩 - 食用。料理の味付けに使える]


 これで料理の味付けができるようになり、食事の質が格段に向上した。さらに、森の中でベリーのような果物も見つけた。少し酸味があり、そのままでは食べづらいが、料理に加えると美味しくなると鑑定結果にあった。


[ベリー - 単体では酸っぱいが、料理に加えると美味しい]


 蓮はそのベリーを手に取り、鑑定してみた結果をもとに、これを料理に活かすことを考えた。


「これで料理の幅が広がるな」


 蓮は自分の成長に満足しながらも、次の目標に向かって前進する決意を新たにした。この1カ月で、蓮は大きく成長した。レベルも5に上がり、槍術のスキルもレベル2にまで向上した。狩りの技術も磨かれ、異世界での生活に少しずつ自信を持つようになった。


「もっと強くなって、この世界で生き抜いていこう」


 蓮は新たな決意を胸に、さらに自分の力を伸ばすための計画を練り始めた。この異世界での生活はまだまだ続くが、確実に成長している自分に自信を持ち、これからもサバイバル生活を続けていくつもりだった。




 蓮は川沿いを歩きながら、川の流れに耳を傾けていた。水の音が心地よく、彼の心を落ち着かせてくれる。食料や資源を探しつつ、未知の生物との遭遇に備えて警戒を怠らない。


 突然、遠くから話し声や笑い声が聞こえてきた。蓮は立ち止まり、音のする方向に注意を向けた。少し進むと、木々の間から2人の商人らしき人物と、それを護衛する冒険者風の一団が見えてきた。護衛は3人、商人は2人で、それぞれが荷物を運んでいるようだった。


「誰かいるのか?」護衛の一人が蓮に気づき、警戒心を抱きながら声をかけてきた。


 蓮はゆっくりと手を挙げ、敵意がないことを示した。


「私はこの森で生活している者です。あなた方は何者ですか?」


 護衛たちは警戒しつつも、蓮に近づいてきた。(鑑定)と心の中で呟き、目の前の人物たちを一人ずつ観察した。すると、頭の中に情報が流れ込んできた。


[名前: トム(レベル10)]

[職業: 商人]

[状態: やや疲労]


[名前: ジョン(レベル11)]

[職業: 商人]

[状態: やや疲労]


[名前: 不明(レベル不明)]

[職業: 護衛]

[状態: 健康]


[名前: 不明(レベル不明)]

[職業: 護衛]

[状態: 健康]


[名前: 不明(レベル不明)]

[職業: 護衛]

[状態: 健康]


(俺よりずっとレベルが高い…)


 蓮は心の中で驚きながらも、冷静さを保とうとした。護衛たちが自分よりもはるかに強いことを認識し、慎重に言葉を選んだ。


 商人の一人、トムが口を開いた。


「我々は商人です。この地域を巡って交易を行っています。君はこの森で何をしているんだ?」


 蓮はできるだけ落ち着いて答えた。


「実は、気づいたらこの場所にいて、自分が何者かもよく分からないんです。生き残るために食料や資源を探しています。この近くに町があるのでしょうか?」


 冒険者の一人が少し前に出てきて、警戒心を解かぬままに答えた。


「確かに近くに町がある。5000人規模の人が住む町だ。君はどうやってここまで来たんだ?」


 蓮は少し考えてから、慎重に答えた。


「気がついたらこの場所にいて、どうしてここにいるのかも分かりません。できれば町まで一緒に行きたいのですが、お願いできますか?」


 商人のジョンが少し考え込んだ。


「記憶を失っているとは…それは大変だな。町に行けば、もっと情報が手に入るかもしれない。しかし、君は身分証を持っているのか?」


 蓮はハッとし、首を横に振った。


「いいえ、身分証も失くしてしまいました。ただ、町に行けば何か手がかりが見つかるかもしれないと思って…」


 商人のトムが深いため息をついた。


「それだと、町に入るのも難しいかもしれない。身分証がない者は警戒されることが多い。さらに、君の食料は十分かい?ここから町までは3日もかかるんだ」


 蓮は背負っていた荷物を確認しながら答えた。


「干し肉を数日分もっています。十分ではないかもしれませんが…」


 商人たちは互いに顔を見合わせた。


「町に入るには身分証が必要だし、もし持っていなければ、保証金として金貨5枚が必要になるんだ。それがないと、町に入れてもらえないことが多い」


 蓮はその情報に驚いた。


「金貨5枚…そんなものは持っていません…」


 商人のジョンが少し考えた。


「君が協力的であれば、我々も力になれるかもしれない。まず、金貨5枚は私たちが立て替えることにしよう。君は動物も倒せるようだから、町に着いたら冒険者登録をして、クエストを受けて徐々に返済すればいい。無利子でな」


 蓮はその提案に驚きながらも、深く感謝した。


「本当にありがとうございます。おかげで希望が持てました。ぜひ協力させてください」


 商人のトムがうなずいた。


「よし、それなら決まりだ。まずは一緒に町へ向かおう。」


 蓮はその提案にうなずき、この一団と行動を共にすることを決めた。


「そういえば、俺の名前はレンと言います。よろしくお願いします」


 商人のジョンが微笑みながら答えた。


「こちらこそ、レン。よろしく頼むよ」


「ありがとうございます。ただ、町へ向かう前に、少しだけ時間をください。住んでいた場所の処理をしなければなりません。干し肉も取りに行く必要があります。すぐに戻ってきます、30分ほどで。」


商人のトムは少し驚いた表情を見せたが、うなずいた。


「分かった。気をつけて行ってきなさい。ここで待っている。」


レンは軽くうなずき、急いで川沿いを逆戻りして自分の拠点へと向かった。風に揺れる木々の音と川のせせらぎを耳にしながら、心を落ち着ける。


拠点に着くと、レンは必要なものを手早くまとめ始めた。干し肉を袋に詰め込み、生活の基盤を整えてきた拠点の様子を見渡す。ここで過ごした日々を思い出し、心の中で感謝の念を抱いた。


「これからは、もっと広い世界で生きていくんだな…」


焚き火の跡を片付け、拠点を整え終えると、レンは再び商人たちのもとへ戻るために川沿いを歩き始めた。30分ほど経ち、再び商人たちのもとに戻ると、彼らはレンを見てほっとした表情を見せた。


「おかえり、レン。順調に終わったようだな」


とトムが声をかけた。


「はい、ありがとうございます。これで準備は整いました」


ジョンが微笑みながら言った。


「それでは出発しよう。町までの道は険しいが、君なら大丈夫だろう。よろしく頼むよ、レン。」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


とレンは頭を下げ、商人たちと一緒に町へ向かう旅を再開した。


こうしてレンの新たな冒険が始まろうとしていた。

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