表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

7

 蓮は焚き火の火種を確認しながら、活動範囲を広げるための計画を立てた。しかし、心の中には不安が渦巻いていた。未知の動物たちの存在や、迷って戻れなくなる恐れが彼を悩ませていた。これまでスライム以外の生き物を見たことがなく、夜中に聞こえる獣の鳴き声だけが未知の存在を暗示していたため、動物に遭遇することへの恐怖もあった。


「もっと遠くまで行って探索したいけど、もし迷って戻れなくなったらどうしよう…」


 そう思いながらも、蓮は自分を奮い立たせた。安全に狩りができるように、リーチの長い槍を作るために、適当な長さの木の枝を選び、黒曜石のナイフで先を鋭く削った。これで少しは安全に戦えるはずだと感じた。


 準備が整うと、川沿いを探索する計画を立てた。水分補給のためにも川沿いを歩くのが安全だと考えたからだ。食料や他の資源も見つかるかもしれない。川沿いを進んでいくうちに、小さな動物の気配を感じた。


 蓮は目を凝らし、サッカーボールほどの大きさの太った猫のような生き物がゆっくりと動いているのを見つけた。その生き物は特に警戒心もなく、果物を食べているようだった。


「これも…試してみるか」


 まずは鑑定スキルを使い、その生き物をじっと見つめた。頭の中に情報が浮かび上がった。


[ホブレット - 草食動物。警戒心が薄い]


「なるほど、草食動物なら脅威にはならなそうだ」


 慎重にホブレットに近づき、槍を構えた。心の中では生き物を殺すことに対する抵抗感も感じていたが、自分が生き残るためには仕方がないと覚悟を決めた。


「これで…」


 ホブレットに槍を向け、少し緊張しながら狙いを定めた。ホブレットは果物を食べ続けていて、こちらに気づいていなかった。しかし、蓮が槍を突き出すと、ホブレットは素早く動いて攻撃をかわした。


「くそっ、難しいな」


 蓮は再び槍を構え、何度も試みたが、動きの鈍いホブレットでも狙いを定めるのは難しかった。何度も槍を突き出すが、ホブレットはその度に避けてしまう。焦りと苛立ちが蓮の心を支配した。


「もっと落ち着いて…」


 自分に言い聞かせながら、慎重にホブレットの動きを観察した。次の一撃を確実に仕留めるために、呼吸を整え、動きを見極めた。ホブレットが一瞬止まったその瞬間、素早く槍を突き出した。


「これでどうだ!」


 槍が的確に当たり、ホブレットは苦しそうに動いたが、まだ完全に倒れはしなかった。蓮は続けて槍を突き刺した。何度も何度も、力を込めて槍を振るう。ホブレットは徐々に力を失い、動きが鈍くなっていく。


「もう少し…」


 蓮は疲れを感じながらも、最後の力を振り絞って槍を突き刺した。ホブレットはついに動かなくなり、その場で倒れた。蓮は狩りが成功したことに胸を躍らせながらも、動物を殺したことに対する複雑な感情を感じた。


「これも…生きるためだ」


 自分に言い聞かせ、ホブレットを処理するためにその場で血抜きを始めた。黒曜石のナイフを使い、慎重に血を抜いていった。


「こうしておけば、少しは美味しくなるはずだ」


 血抜きを終えたホブレットを拠点に持ち帰ると、蓮はさらに丁寧に処理を続けた。毛皮を剥いで利用したいと思ったが、黒曜石のナイフではうまくいかず、今回は諦めることにした。


「もっと良い道具があればな…」


 蓮は不満を感じながらも、今できる範囲での処理に集中した。焚き火を起こし、ホブレットの肉を焼く準備を整えた。香ばしい匂いが広がり、蓮の食欲を刺激した。


「うまい…」


 焼き上がった肉を一口食べると、その味に満足感を覚えた。しかし、同時に何か物足りなさも感じていた。


「これ、塩や香辛料で味付けできたらもっと美味しいのにな…」


 蓮は思わず口に出してしまった。異世界での生活が少しずつ整ってきた今、食事の質も向上させたいと思うようになっていた。果物を使って味付けを試みたことはあったが、それだけでは限界がある。


 彼はそう考えながら、これからの目標の一つとして調味料を見つけることを心に決めた。



 蓮は昨日のホブレットとの戦闘を振り返っていた。朝食として、昨夜の残りのホブレットの肉を焼き直し、一口一口味わいながら、思案にふけっていた。


「昨日の狩りはなんとか成功したけど…」


 肉をかみしめながら、槍の性能について考え始めた。何度も突き刺さなければならなかったことに不満を感じていた。槍の先が鈍く、敵に致命傷を与えるまでに時間がかかってしまう。これでは無駄に体力を消耗してしまう。


「もっと効率的に倒せるようにしないと…」


 槍の穂先を改良することを決意した。黒曜石の欠片を使い、より鋭く、貫通力を増すように加工することを思いついた。食事を終えると、早速行動に移った。


 蓮は黒曜石の欠片を慎重に選び出し、ナイフで削りながら穂先を作り直した。何度も試行錯誤しながら、ようやく満足のいく形に仕上がった。


「これなら、もっと簡単に獲物を仕留められるはずだ」


 さらに、槍の数を増やすことも考えた。ホブレットを1匹倒すたびに槍が使えなくなってしまうため、予備の槍を作っておく必要がある。蓮は適当な長さの木の枝を3本選び、同じように穂先を取り付けていった。


「これで準備は万全だ」


 新しい槍が完成し、蓮は次なる狩りに向けて気持ちを引き締めた。改良された槍を手に、再びホブレットのいる場所へと向かった。


「今度こそ、一撃で仕留めてみせる」


 川沿いを進んでいくと、再びホブレットの姿を見つけた。新しい槍を構え、慎重に近づいた。心臓が高鳴る中、蓮は一撃で仕留めることを目指し、槍を突き出した。


 新しい槍の鋭い穂先はホブレットに深く突き刺さり、瞬時に動きを止めた。蓮はその成果に満足し、次のホブレットにも同じように挑戦した。新しい槍のおかげで、狩りの効率は格段に上がり、3匹のホブレットを仕留めることができた。


「これで少しは食料が確保できたな」


 蓮はホブレットを倒した後、その場で血抜きを始めた。黒曜石のナイフを慎重に使いながら、血と内臓を抜いていく。その作業中、蓮はふと昨日の狩りと今日の狩りを比べている自分に気づいた。


「昨日よりずっと簡単に倒せたな…」


 彼は驚きの声を漏らしながら、倒したホブレットの様子を見つめた。槍の改良が功を奏したことは明らかだったが、それだけではないように感じた。


「槍が改良されたからっていうのもあるけど、なんだか自分の動きも良くなってる気がする…」


 蓮は自分の体の変化にも気づき始めた。狩りの際の動きがスムーズで、反応も速くなっていると感じた。これはただの慣れの問題ではないように思えた。


「もしかして…自分自身を鑑定してみたら何か分かるかも」


 蓮はその考えを試してみることにした。心の中で「鑑定」と呟き、自分自身に意識を集中させた。すると、頭の中に情報が浮かび上がってきた。



[名前: 蓮(レベル3)]

[所持スキル: 鑑定(レベル2)、初級槍術(レベル1)]

[状態: 健康]



「これが俺のレベル…」


 蓮は自分の鑑定結果を見て驚いた。レベルが存在することや、槍に関するスキルを持っていることが分かったのだ。


「レベル3…そして初級槍術…」


 自分が槍術のスキルを持っていることに気づき、驚きと共に納得した。これまでスライムやホブレットを倒してきたことで、スキルやレベルが向上していることに気づいた。


「スライムやホブレットを倒してきたことで、俺も少しずつ強くなってるのか…」


 蓮はそう考えながら、さらに自分の成長に対する期待を抱いた。血抜きを終えたホブレットを拠点に持ち帰り、再び焚き火を起こして調理の準備を始めた。


「自分の力が少しずつ伸びているのなら、もっと頑張って狩りを続けてみよう」


 蓮は新たな決意を胸に、これからの生活に対する希望を持った。拠点に戻り、ホブレットの肉を焼く準備を進める中で、自分自身の成長を実感し始めた。


「この異世界で生き抜くために、もっと強くならなきゃいけないんだ」


 焼き上がったホブレットの肉を一口食べると、その味に満足感を覚えた。しかし、味のバリエーションを増やすために果物を使った工夫も忘れずに行った。


「うまい…」


 果物を使った味付けはそれほど美味しくはなかったが、少しでも変化を楽しむことができたことに喜びを感じた。


「これからも工夫して、もっと美味しい料理を作ってみよう」


 新たな目標を胸に、蓮は生活の質を向上させるための計画を練り始めた。まずは基本的な食料の確保と、果物を使った調味料の利用を続けることにした。これからも狩りを続け、より良い生活環境を整えていくことで、この異世界での生活をさらに豊かにするつもりだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ