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蓮は木の根元に作った葉のクッションの上で体を横たえ、静かに目を閉じた。しかし、森の夜は思っていた以上に冷たかった。冷たい風が葉の間を吹き抜け、体を震わせる。
「寒いな」
震えながら呟き、葉を少し引き寄せて自分の体に巻きつけた。しかし、それだけでは寒さを完全に防ぐことはできなかった。
さらに、夜の静寂の中で動物たちの鳴き声が響き渡る。遠くから聞こえる不気味な獣の吠え声や、近くで聞こえる鳥の鳴き声が、蓮の心に不安を呼び起こした。
「ここ、本当に大丈夫かな…?」
自分に問いかけながら、周囲を見渡した。暗闇の中で目を凝らしても、何も見えない。しかし、音ははっきりと聞こえてくる。
木々のざわめきも、不安を煽った。風に揺れる葉の音が、まるで誰かが近づいてくるように感じられる。蓮は何度もその音に耳を傾け、少しでも異変がないか確認した。
「こんなに怖いなんて思わなかった…」
昼間の冒険とは違い、夜の森は未知の恐怖が詰まっていた。
寒さと不安でなかなか眠れないまま、体を丸めて小さく震えた。蓮の心は次第に疲れと恐怖でいっぱいになり、少しの物音にも敏感に反応してしまった。
さらに、敷き詰めた葉の中から何かが動く感覚が襲った。
「うわっ!」
驚いて飛び起き、葉をめくって確認した。そこには小さな虫が何匹も蠢いていた。
「こんなところにまで」
不快感で顔をしかめ、虫を払いのけた。葉を一枚一枚めくるたびに、次々と小さな虫たちが姿を現し、そのたびに気分は悪くなっていった。
「こんな場所じゃ安心して眠れない」
ため息をつきながら、少しでも虫がいない場所を探して葉を移動させた。しかし、完全に虫を避けることはできず、心はますます不安と不快感で満たされた。
それでも、なんとか自分を落ち着かせようと努めた。深呼吸をして心を落ち着けようとするが、夜の静寂と冷たさ、そして虫の存在がそれを妨げる。自分の手をぎゅっと握りしめ、少しでも安心感を得ようとした。
「明日になれば、きっと大丈夫」
自分にそう言い聞かせながら、少しずつ眠りに落ちていった。しかし、その眠りは浅く、何度も目が覚める不安定なものだった。夜が明けるまでの時間が、長く感じられた。
蓮は柔らかな日の光を浴びて目を覚ました。東の空がほんのりと明るくなり、森の中に差し込む光が体を温めた。昨夜の冷たさと恐怖を思い出しながらも、新しい一日の始まりに希望を感じた。
体を起こし、固まった筋肉をほぐすように伸びをした。しかし、睡眠不足と慣れない場所で寝たせいで、体中に痛みが広がっているのを感じた。
「やっと朝だ…」
周囲を見渡しながら呟いた。虫がいた葉のクッションは少し乱れていたが、気にせず立ち上がり、昨日見つけた水辺に向かって歩き出した。森の鳥たちのさえずりが耳に心地よく響き、心を軽くした。水辺にたどり着くと、冷たい水が足元を流れていた。太陽の光が水面に反射してキラキラと輝き、その美しさに一瞬見とれた。
「まずは水を飲もう」
手ですくって冷たい水を飲んだ。喉の渇きを癒すとともに、冷たい水が体にエネルギーを与えた。
周囲を見渡しながら、今日の計画を立てた。
「今日は火を起こすこと、そして食料をもう少し探してみよう」
昨日の果物があまり美味しくなかったことを思い出し、もう少し美味しいものを見つけたいと考えた。
まずは火を起こすための道具を集める必要があった。水辺を離れ、森の中を歩き始めた。燃えやすそうな小枝や枯れ葉、乾いた草を探しながら、目に映るものすべてが新鮮で、好奇心が刺激された。
「あれは?」
地面に落ちている乾いた木片を見つけた。手に取ってじっくりと観察した。
「これは使えるかも」
鑑定を使ってみると、その木片の名前が頭に浮かんだ。 [乾燥した木片…] 名前だけでも役に立つ情報だが、それ以上の詳細な情報が得られないことに落胆した。木片を手に取り、さらに探索を続けた。
森を歩くうちに、また違う種類の木を見つけた。幹が細く、乾燥しているように見える。
「これも使えそうだな」
木片を手に取り、再び鑑定を試みた。[乾いた枝…]鑑定結果は名前だけだったが、それでも燃えやすそうな木であることを確信した。
次に、火を起こすための方法を試みるために適した木を探すことにした。周囲を見渡し、細くて丈夫そうな木を見つけた。その木を手に取り、再び鑑定を試みた。[硬い木材…]名前だけの情報に再び落胆しつつも、それを使うことに決めた。
集めた木材を持って、水辺に戻ることにした。そこで火を起こすための準備を整えるつもりだった。水辺に戻ると、石を手に取り叩きつけ、少しでも切れ味がいい石を作り出すことにした。
「これで少しは使えるはず」
蓮は石を慎重に叩きつけ、鋭い部分ができるまで続けた。
まずは一本の木片を短く切り、もう一本を細く削り出し、手に持ちやすいように整えた。鋭くした石を使って慎重に作業を進め、必要な形に整えていく。
「これで準備は整ったかな」
木片を地面に固定し、削り出した棒を両手で握って素早く回転させ始めた。しかし、何度も試しても火花が飛ばず、ただ疲れるばかりだった。
「くそっ…もう一度…」
息を整え、再び挑戦した。手のひらには豆ができ、痛みが増す。それでも諦めずに試行錯誤を繰り返した。やっとのことで、ほんの少しの煙が立ち上った。
「来た!」
慎重に息を吹きかけ、乾燥した木片と草に火を移そうとした。火花が乾いた草に移り、徐々に小さな炎が上がった。
「やった!」
歓声を上げ、小さな炎が燃え上がる様子を見つめた。火はすぐに大きくなり、体を温めてくれた。
「これで少し安心できる」
焚き火の前で満足げに微笑んだ。
火を見つめながら、昨夜の寝床を思い出した。虫に悩まされてほとんど眠れなかったことを思い出し、火を使って虫を追い払うことを思いついた。
「この火を使って、虫を追い払おう」
焚き火から火を慎重に運ぶ方法を考えた。まず、いくつかの乾いた木片に火を移し、それを持って寝床に戻ることにした。寝床に戻るまでの道中で火が消えないように、慎重に足を運んだ。
焚き火の前にあった小さな枝に火を移し、火が燃え広がるのを確認してから、手に取り、昨夜の寝床へと向かった。歩きながら火を風に当てすぎないように注意しつつ、焚き火の小さな炎を守った。
寝床に着くと、その周りに火を使って煙を立ち上らせた。枯れ葉や乾いた草を火にくべて煙を多く出し、煙を葉のクッションや周囲の草むらに向けて送り込んだ。
「これで、少しは虫もいなくなるだろう」
煙が十分に行き渡ったのを確認すると、火種を確保するために小さな石の囲いを作り、火が消えないようにした。
「これで、いつでも火を使えるようにしておこう」
心の中で安堵しながら、もう一度寝床を整え始めた。
その後、蓮はしばらくの間、焚き火の前で休憩しながら時間を過ごした。火の暖かさと安心感が彼の疲れを癒してくれる。
「さて、そろそろ確認してみるか」
立ち上がり、煙の効果があったかどうかを確かめるために、慎重に周囲を観察した。
葉を慎重にめくりながら、虫がいなくなっているかどうかを確認した。
「よし、虫はもういないな」
蓮は満足げに呟いた。煙の効果で虫がいなくなり、昨夜よりも快適な環境が整っていた。
「これで少しは安心して眠れる」
寝床を整え直しながら、次の行動を考えた。食料を探すために再び森の奥へと足を踏み入れる準備を整えた。