表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

2

 蓮は森の中を歩いていると、突然、目の前にリンゴのような果物が現れた。その鮮やかな色と誘惑的な香りに、彼は驚きと喜びで一瞬立ち止まった。


 「これは…?」


 疑問を感じ、果物を手に取った。手に取ると、その重みと滑らかな手触りが指先に伝わってきた。


 「一体これを食べても大丈夫なのかな?」


 果物をじっくりと観察しながら呟いた。見たことのない果物に対する不安と興味が交錯し、彼の心には自然と疑問が湧き上がった。その瞬間、心の奥底から何かが反応するのを感じた。


 「鑑定…?」


 思わず口に出してしまった。頭の中に浮かび上がったその言葉に、戸惑いと期待を抱いた。


 視界が一瞬だけぼやけ、果物に関する断片的な情報が流れ込んできた。果物の名前や詳細な特徴ではなく、それが食べられるかどうかだけが直感的に分かった。


 「これは食べられる…」


 蓮はほっと息をついた。鑑定の力が働き、その果物が安全であることを確信した。


 果物を口に運び、かじってみた。しかし、果物の味は蓮の期待を裏切った。少し苦みがあり、口の中で広がる味は決して美味しいとは言えなかった。


 「これは…あんまり美味しくないな。」


 苦い顔をしながら呟いた。果物の外見とは裏腹に、その味は蓮の期待を裏切ってしまったが、空腹を満たすには十分だった。


 果物を食べ続けながら、新たな発見に胸を躍らせた。


 蓮は森の中を歩きながら、手に持ったリンゴのような果物をかじっていた。味は期待外れだったが、空腹を満たすためには十分だった。果物を食べながら周りの景色を楽しんでいると、突然、何かが視界に入り込んだ。


 立ち止まり、注意深く周囲を見渡した。足元には透明で粘り気のある生き物が数匹、ゆっくりと動いていた。その動きはまるで液体が流れるようで、見るからに奇妙だった。


 「なんだ、これ…?」


 果物をかじるのを止め、その生き物に注意を向けた。未知の生き物に対する好奇心と警戒心が入り混じり、心に疑問が湧き上がった。


 「これって危険なのかな?」


 蓮は再び鑑定の力を思い出し、その生き物をじっと見つめた。心の中で「鑑定」と呟きながら、力が湧き上がるのを感じた。


 生き物は特に光を放つこともなく、ただ静かにそこに存在していた。しかし、蓮の頭にはその生き物の名前が浮かび上がった。


 「スライム…」


 小さく呟いた。それ以上の情報は得られなかったが、その生き物がスライムであることだけは分かった。鑑定スキルはまだ未熟なせいか、詳細な情報を得るには至らなかった。


 「とりあえず、危険そうには見えないな…」


 自分を落ち着かせるように言った。スライムの動きはゆっくりで、攻撃的な様子もなかった。再び果物をかじりながら、スライムを観察し続けた。


 しかし、心の中にはまだ警戒心が残っていた。スライムがどのような存在なのか、もっと詳しく知る必要があると感じた。果物を食べ終わると、スライムたちの動きを注意深く追い続けた。


 「鑑定のスキルがもう少し強くなれば、もっと詳しい情報が得られるかもしれないな…」


 自分に言い聞かせながら、スライムをじっと観察していた。スライムは透明で粘り気のある体を持ち、その内部には微かに輝く核のようなものが見えた。蓮はその核がスライムの弱点であると考えた。


 「これが…弱点か?」


 呟きながら、周囲を見渡して適当な武器を探した。すぐに目に入ったのは、倒れた木の枝だった。それを手に取り、軽く振ってみた。十分な強さを持つ木の棒だった。


 「これで…試してみるか。」


 蓮は棒を持ち、スライムに慎重に近づいた。スライムは蓮の存在に気付くことなく、ゆっくりと動いていた。棒の先でスライムをつついてみると弾力があり、棒が跳ね返るような感覚があった。蓮は核に向けてもう一度棒を突き刺した。


 「これでどうだ!」

 

 力を込めて棒を突き刺した。その瞬間、スライムの体が一瞬震え、核が破裂するように消え去り、その場で溶けるように消滅した。


 「やった…!倒せた!」


 蓮は安堵の息をついた。スライムは弱い存在であり、核を攻撃することで簡単に倒すことができることが分かった。


 木の棒を握りしめ、周囲を見渡した。まだ何匹かのスライムがゆっくりと動いているのが見えた。再び棒を構え、次々にスライムを倒していった。核を狙って突くことで、スライムは簡単に消滅していった。


 スライムを次々と倒し続けているうちに、時間が経つのを忘れていた。最後のスライムを木の棒で突いて倒したとき、ふと空を見上げると、太陽がすでに傾き始め、夕暮れの色が森を染めていた。


 「もうこんな時間か…」


 呟きながら、木の棒を地面に突き刺した。疲労感が全身に広がり、少し休息が必要だと感じた。


 周囲を見渡すと、まだ何匹かのスライムがゆっくりと動いているのが見えた。スライムはどこにでもいるが、敵意がないので当面の間ほおっておくことにした。彼らが特に危険を及ぼす存在でないことがわかり、蓮は休憩がとれる場所を探すことにした。


 「寝床を探さないとな」


 蓮は周囲を見渡し、適当な場所を探し始めた。森の中で安全に眠れる場所を見つけるのは簡単ではなかったが、慎重に歩を進めた。


 しばらく歩いていると、蓮の目に一つの大きな木の根元が映った。その木は太くてしっかりしており、根元には自然にできた小さな空間が広がっていた。木の根が壁のように周囲を囲んでいて、風や雨をしのげそうだった。さらに、その周囲には乾いた葉や枯れ枝がたくさん落ちていた。


 「ここなら大丈夫そうだな」


 木の根に近づき、周囲の音に耳を澄ませた。森の静かな音が彼を包み込み、自然の静寂が心を落ち着かせてくれた。


 その場所に腰を下ろし、念のために周囲をもう一度確認した。危険な生き物や異変がないことを確かめた後、安心して寝床の準備を始めた。周囲に散らばる葉や枝を集めて、地面に敷き詰めた。丁寧に葉を重ねて、少しでも快適なクッションを作ろうとした。


 「今日はここで休もう」


 自分に言い聞かせながら、最後の葉を敷き詰めた。自然のクッションの上に体を横たえると、少しの安心感が彼を包んだ。


 「この世界で生き抜くのは簡単じゃないな…」


 つぶやきながら、鑑定スキルと木の棒が自分の頼りであることを再確認した。次の冒険に備えて、体力を回復させるために目を閉じた。


 森の中の静かな夜が訪れ、蓮は疲れた体を休めるためにゆっくりと眠りに落ちていった。木の根元に守られたその場所は、一時の安らぎを与えてくれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ