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1. 目覚め

 眩しい光が視界を埋め尽くした。重たい瞼をゆっくりと開けた。周囲を見回すと、広大な森の中に横たわっていた。青々と茂る木々、鳥たちのさえずり、そして風に揺れる葉の音が心地よく耳に届く。


「ここは…どこだ?」


 真白 蓮は頭を抱えた。何も思い出せない。自分の名前以外、全ての記憶が霧のようにぼんやりとしていた。服装も見覚えのないものに変わっている。高校の制服ではなく、見知らぬ布地の簡素な衣服に身を包んでいた。


「どうして、こんな場所に…」


 立ち上がり、ふらつきながら森の中を歩き始めた。腹の空腹感と喉の渇きが次第に強まっていく。生き延びるためには水と食料を探さなければならないと直感した。


「何もわからない…けど、進まなきゃ…」


 不安と焦りが胸の中で渦巻く。蓮は頭の中で何度も自分の名前を繰り返した。「真白 蓮…真白 蓮…」それ以外の記憶が断片的にしか浮かばない。


 しばらく歩くと、小さな水辺を見つけた。蓮は膝をつき、水をすくって喉を潤した。冷たくて清らかな水は、少しの安らぎをもたらした。


「このままじゃ、どうなるんだろう…」


 不安に苛まれながらも、蓮は前に進むしかなかった。水辺で少し休んだ後、彼は再び歩き出した。森の中は不気味なほど静かで、時折、木の葉が風に揺れる音だけが響く。


「ここは、本当に現実なのか…?」


 何度も自問自答しながら、蓮は歩みを続けた。時間の感覚が失われ、どれだけの時間が経ったのかもわからなくなってきた。進むにつれて不安も増していく。記憶を失い、見知らぬ世界で一人。何が待っているのか、全く予想がつかない。


 森の中を進む蓮の頭の中は混乱し続けた。自分は誰なのか、なぜここにいるのか、何が目的なのか。その答えはどこにも見つからない。ただ一つ確かなのは、生き延びなければならないということだけだ。


 ふと、蓮の脳裏に断片的な記憶がよみがえった。日本の学校の風景、友人たちとの会話、そしてある日の出来事。断片的な記憶の中には、現代の知識や技術がちらつく。


「スマホ…そうだ、スマホがあれば…でも、ここにはない」


 蓮はポケットを探ったが、そこにスマホはなかった。記憶の片隅にある便利なデバイスや現代の生活の断片が、今の状況とあまりにかけ離れていて、ますます彼を混乱させる。


「なんで、俺がこんなところに…」


 頭の中に浮かぶ疑問が次々と渦巻く中、蓮は前に進むしかなかった。これが夢か現実かもわからないまま、彼は一歩一歩、歩み続けた。



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