戦後
「そんで、こうつどうするの?」
骸となったトゥピラクを見下げながら俺は言う。
「悪魔の死体はしばらくしたら消えるの。だから基本放置かな」
「へー。便利な体だな」
だったら俺たちがここですることはないのか。
俺はさっそく激戦の傷を癒したいところなのだが。
「誰か怪我しちゃったか?」
戦いの当事者である俺たちがそうする訳にもいかない。
負傷者がいるならその介抱を。もし死者がいるなら‥‥‥。
いや、今ここで考えることはよそう。
「ああ、良いんだよ。そういうのは。警察がやってくれるから」
「そうなのか? でも、さっき俺たちが飯食った店とかぐちゃぐちゃにしちゃったし」
トゥピラクが直接の原因にしろ、街に招いた俺たちにだってそれなりの責任があるはずだ。
弁償する、とまでは言えないけど、謝罪の一言ぐらい言わなくては。
「はいはいストップ。そういう水臭いのは良いから」
歩を進めようとする俺の襟首を、ラハが掴む。
上手い具合に首輪みたいになってるな。これ。
「良いんだよ。私たちは悪魔を殺すだけで。それだけすれば、いいの」
「でも」
「でも。じゃない。雇用主の命令が聞けないの?」
「‥‥‥お前、それ言えば俺が言うこと聞くって思ってるだろ?」
「実際そうでしょ? 私の会社には労働組合とかそういう甘ったれた物なんてない。私の言葉一つで、君は無一文の無職に早変わりするんだよ」
助手じゃなくてこれじゃ奴隷だな。公平な立場での助手契約だと俺は思っていたけど、ラハは完全に俺のことを蔑視してるな。
「分かったら素直に私に付いてくること。OK?」
「へーい」
「分かったら元気に返事! ご飯抜くよ!」
「はい! はいはい!! 地獄の底まで付いていきますよ!!」
「それでよろしい」
満足したらラハがくるりと踵を返して歩き出す。
トゥピラクとかいう凶悪な悪魔を討ったのに、誰一人も歓声や拍手を送らないことも、さっきまでの活気を全く感じさせない湿ったい街の雰囲気も腑に落ちないけど。
俺の理解の及ばない、特殊な事情でもあるんだろう。
俺は自分の中で無理矢理そう解釈して、ラハの背中を追った。




