遭遇
「ステーキ一口もらい」
「あ、ずるいぞ。お前のアップルパイも食わせろ」
「もう食べちゃいましたー」
奢られている身分、強く言えないけど。それに一口大きすぎだろ。
「ステーキ分もしっかり給料から天引きしておくから」
「俺の就職祝いじゃないのか?」
「それはそれ。これはこれだよ」
‥‥‥給料が出るだけ良いと考えよう。そうしよう。多分、労働環境ゴミだけど、深く考え出したらキリがなくなる。
「そんじゃ、私は先にお会計を済ませちゃおうかな」
ラハが立ち上がる。
あまりレディを待たせるわけにもいかないな。
俺は早くステーキを口に放り込もうと思ったら。
「おっと」
突如、地面がぐらっと揺れた。
ラハがバランスを崩して、俺の方に身を投げる。
「何だ?」
「‥‥‥嫌な気がする」
「その前に退いてくれないか」
重い、とは口が裂けても言わないけど。
ただ、俺も何だか嫌な予感がする。この不安を誘うような揺れ、絶対地震じゃないよな。
「助手、頭下げて!!」
「え?」
遅い、と。ラハに頭を鷲掴みにされ、テーブルに叩きつけられる。
窓が破られ、テーブルを押し倒される。一瞬のうちに店内がぐちゃぐちゃにされた。
「やっぱ追って来てたか」
デカくて黒い手が、店の中に入ってきていた。太陽の光を後ろに浴びながら、俺の目前に迫るそれは異様そのもの。
俺はつい思考と行動を止め、固唾を飲む。
これが、悪魔。こんなのが、相手なのか?
「助手離れて!!」
「わ、分かった!」
とにかく、訳が分からないからラハの言うことを聞こう。
俺は背を滑らせ、巨大な手から距離を取る。
「こいつ!!」
さっきまで俺の眉間に突き立てていたリボルバーを抜き、迷いなく発砲する。‥‥‥撃つ気ないとか言っときながら、しっかり弾入っているのね。
ラハの放った弾丸が効いたのか、手は外に引っ込んでいった。
「に、逃げたのか?」
「なわけないでしょ!!」
そう檄を飛ばす、ラハに腕を引っ張られ、俺とラハは外に出る。




