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「ほいついた。ここがダンブルドーム。この辺じゃ一番大きい街だよ」

「ワン!」

「犬はもう良いから。キモイから普通に喋って」

お前が犬になれって言ったんだろ。全く、理不尽だ。

「しかし、マジで西部劇だな。この世界」

西部劇の映画に入り込んだみたいだ。

大通りにはラハと同じような格好の男たちが、馬に乗っている。その両端には商店街みたいに店が並んでいた。

全部英語だから何屋なのか分からないけど、なんとなく雰囲気で分かる気もする。

‥‥‥Gun の字と共にリボルバーの看板を掲げている店なんかは銃砲店だろう。柄が悪そうな連中がたむろしてるから、近づなかいでおく。

他にも目移りしそうな店はあるけど、細かいことは後でラハに聞いてみよう。

「お腹空かない?

ラハが喋り始めた。

「めちゃくちゃへった」

結局俺の夜食は異次元の彼方だし。オアシスのおかげで死ぬレベルとかじゃないけど。

「そんじゃ適当に入ろ。なんか食べたい」

「俺お金持ってないけど、良いのか」

手持ち100円しかないし、日本円だし。ラハに奢ってもらうことになるけど。

「いいのいいの。あんたを拾ったのも何かの縁だし。ご馳走様させて」

「‥‥‥ラハさま、女神さま」

俺はこんな天使様にあんな悪戯をしてたのか。不敬にも程がありすぎる。

「神でも天使でも言ってなさい。とりあえず、行くわよ」

「どこまでもお供します!!」

「ストーカー。キモい」


ラハは大通りに面した喫茶店らしき店に馬を停めた。

「あんた初めてだろうから、私の後についてきなさい」

「デートの時はいつもリードする側なんだけどな。たまには引っ張られる側もいい」

「変に意地張らなくてもいい。私に奢らせている時点で、あんたの好感度はダダ下がりだから」

「仕方ないだろ。無一文なんだから」

「堂々と言わない方がいいよ。世界一ダサいから」

ラハはそう言いながら、推し扉を押す。俺も恐る恐る続いた。映画とかだとこの辺からチンピラとかに絡まれそうだけど。

そんなことなく、俺とラハは席についた。

「これがメニューか。お、すげぇ。ドルとセントだ」

ここだけ現実のアメリカ仕様なのか。なんか見慣れた単位でほっとする。

「決まった? 私はアップルパイ」

「俺はTボーンステーキ」

「一番高い物頼むとか。あんた正気?」

「奢ってくれるんだろ? 変に遠慮するのも悪いしな」

ステーキのメニューだけ周りにイラストがあったからな。ラハが話す言葉も、本当はこの世界の言語だろうけど、なぜか日本語に変換されているんだろう。

だからメニュー表の文字を見てもちんぷんかんぷんだ。

「今更ながら、すげーことになったな」

料理が来る間、特にすることもない。俺は椅子にもたげながら、そう呟いた。

「何、柄にもなく落ち込んでいるの?」

「柄にもないって、まだ会ってすぐだろ。俺ら」

それって普通、長年の付き合いある同士が使う言葉だろ

「でも私たち、意外と合わない?」

「さぁ、どうだが。でもくすぐりがいはありそうだな」

「次は猫がいいかな?」

あ、まだそのノリ続いているのね。猫なら犬みたいに命令されることもなさそうだし。気楽か?

いやいや、なりきる前提かよ。ラハに調教されすぎだろ。

「まぁ次の動物はのちのち考えるとして」

「考えるな。俺はもう犬にも猫にもならないからな」

「じゃあ猫耳でもつけてみる?」

「可愛すぎてお前が即答しちゃうな」

我ながら流石のボケだな。大学時代、ボッチを極めすぎて脳内で漫才していた経験が今活きる。

「いや、つまんな」

‥‥‥この世界の方が俺のセンスに追いついてないならしい。

「コントするより、自分のことが心配じゃないの?」

「まーお金ないし、家もないし、仕事もないからな。心配っちゃ心配だ」

列挙してみると八方塞がりな気もするけど。

「考えてもしかたない! できることを着実にしてみるよ」

俺の唯一の長所がこれ。

どんな状況でもポジティブ。いや、楽観主義とも言おうか。

あんまし深く考えても、どうしようもないだろ。一回殺された分、踏ん切りもついた気がするし

「でも仕事はないんだしょ」

「痛いとこ突くな」

せっかく人がから元気出して奮起しようとしているのに。

「元気が良いのは何より。でもおお金がないと生活できないのも現実」

「お前ぐらいの歳って、もっと頭空っぽにして遊んだりしないか?」

「現実主義者なのよ。私は。それで、仕事はあるの?」

「ある訳ないだろ。街とやらに来たのも初めてだぞ」

「なら私のところで働きなさい」

「え」

「何よその嫌そうな顔」

嫌に決まってるだろ。こちとら先日まで引きこもりニートをしてた身だぞ? 銃の撃ち方すら分からないのに、あんな化け物と戦えるわけない。

さすがの脳天気の俺でも、そのぐらい分かる。

「まぁ、考えとくわ」

でも正直に断ったらラハにも悪いし、彼女の気を下手に損ねたら夜道で襲われそうだし。俺はそれとなく断る。が。

「あんたに拒否権ないから」

それまでの空気を打ち消す、鋭い声でラハはそう言った。

「‥‥‥おいおい、さすがに労働者を守るルールとかはあるだろ」

落ち着け俺。ラハだって蛮族じゃないんだ。ゆっくり話せば分かる。

「あったとしても、私はそれに縛られない」

「荒くれ者が言うセリフだろ。レディには似合わない」

「人を撃たないっていつ言った?」

ラハは腰からリボルバーを取り出す。銃口はもちろん、俺の眉間に向かっている。

ちょうどステーキとアップルパイを持ってきてウェイトレスも、事態を察して下がってしまった。

「理由。理由だ。どうしてお前は俺にこだわる?」

特段能力も特技もない俺を、どうしてここまで求めるんだ?

「さぁ? あんたはとにかく、私と一緒に居ればいいの」

「これはまた熱いプロポーズだな」

「うるさい。私は本気だから」













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