ノーマッド
死んでまた都合よく転移できるはずもない。今度こそ、本当に終わり。
無論、それはラハも同じで。しかし彼女は妙に飄々としている。
まるでまだ手札が残されているかのように‥‥‥いや、まだ手札は切れていない。
まだあいつが、ジキルが残っている。ラハの相棒ポジのあいつなら、このピンチを何とかしてくれるはず。
「お友達をお探しかね?」
扉が開かれ、俺の横にどさっと何かが落とされる。
「ジキル!!」
後ろ手に縛られ、猿轡をかまされている。顔には何発の殴られたアザが。
「やぁコウ。また会ったね」
どこかで聞いた声。顔を上げると。
「ノーマッド‥‥‥!」
いつぞやに絡んできた年齢不詳の青年、ノーマッドが手綱のようにジキルの縄を握っている。
「は!? 助手、そいつと知り合いなの!?」
ありえない、といった様子でラハは声を荒げる。
黙ってろ! と同じく声を荒げたモブギャングに銃を突き立てられ、それ以上なにもできないが。
「知り合い、ねぇ。僕たち、そんな水臭い関係じゃないだろ?」
滑らかな体を蛇のように寄せ、ノーマッドは囁く。悪寒が止まらない。
「相変わらず距離感がディープキスしてるな」
「君は特別だからね。ところで、まだ彼女と一緒にいるのかい?」
「いちゃ悪いのかよ」
「いやいや。君の判断を否定するないよ。ただ、君にはもっと輝けるステージがあるよ。例えば、僕の側、とかね」
「お前はお呼びじゃない」
「そう言わずにさ。君だって本当は僕と一緒になりたいんだろ? ほら、僕を好きって言ってみな?」
「‥‥‥」
こいつマジで頭おかしいんじゃねぇか?
こんな奴に構ってられない。




