天使
ここはどこだ?
俺は、まだ生きているのか。
かろうじて意識はある。なんだか口と鼻の中がジャリジャリしているけど。
目も開けれそうだ。俺は重い瞼を開いた。
まず目に入ってきたのは、燦々と照り輝く太陽だった。
刺すような日光が降り注いでいる。
朝、か? さっきまで夜だったはずだが。
俺はなんとか体を起こ、辺りを見回した。
荒野だった。カウボーイが縄を振り回し、荒くれ者を捕まえているような、あの荒野である。
どういうことだ? なんで俺はこんなところに。
ああそうだ、思い出した。俺は確か、あの悪魔みたいな奴に殺されたんだっけ。
全然作り物じゃねぇじゃんか。本物じゃんか。てか本物の悪魔って何だよ。現代日本だぞ? ありえない。
‥‥‥マジでここどこだよ。
疑問とかツッコミは掃いて捨てるほどあるけど。結局はそこだ。
ここはどこ? 私はだあれ‥‥‥はないか。
とりあえず、現在地を知るために、俺は歩き出した。
立っていても始まらない。ていうか何もしなかったら餓死する。
水。贅沢を言うなら食べ物を見つけなければ。死ぬ前までに持っていた食糧もなぜか消えているし。
「っても、マジで何もないな」
本当に何もない。たまにサボテンが生えているだけで、後は丸く干からびた干し草が風に乗って転がっているだけだ
「オアシスか、あれ?」
しばらく歩くと、遠目にオアシスらしきものを見つけた。
これ幸い。俺はオアシスに向かって走り出した。もう喉がカラカラだ。
オアシスの水は結構きれいで、俺みたいな軟弱ニートが飲んでも平気そうだ。病気や変な菌諸々怖いけど、背に腹は変えられない。
俺は手に水を掬い、水を飲んだ。
冷たい水が喉元を通る。ああ、生き返る。やっぱ水大事。
早く水源を見つけられて良かった。これからはここを拠点に、探索していこう。
水で顔を洗いながらそう思っていると。
「痛てぇ!」
突如、右太腿に激痛が走った。
今度はなんだ。
俺が周囲に目を走らせると。
キューピッド‥‥‥なのか?
赤ちゃんみたいな風体に天使の羽を生やした生き物が、宙を舞いながらこっちに弓矢を構えていた。
やっば!
考えるより先に体が動いた。キューピッドが放った矢は、俺が座っていた場所を見事に突き刺す。
「何だよあれ!」
悪魔の次はキューピッド。俺の周りだけRPGの世界になっちまったのか!?
とにかく逃げよう。
せっかく見つけたオアシスを手放すのは惜しいけど、命の方が大事だ。
俺は地面を蹴って遁走するが。
「早えぇ!」
あっちは空中浮遊して追ってくる。昨日まで引きこもりニートをしていた奴が、走力で勝てるわけなく。
「あ、死んだわ」
謎のキューピッドは俺の真後ろまで迫っていた。弓矢を弾き絞り、俺に狙いを定める。
俺は諦め、足を止めようとした瞬間。
ダン! ダン!
乾いた破裂音が響いた。
一体なんだ?
つい足が止まる俺。
振り返ると、さっきまで俺を殺そうとしたキューピッドが、頭から血を流して、俺の前にふらふらと倒れていった。
いきなり死にやがった。
そういう生き物なのか? それとも俺が何かしたのか?
ていうか本当に死んでいるのか?
‥‥‥とにかく、調べてみるか。こんな生き物、見たことないし。上手く日本に持ち変えれば、一躍有名人になれるかも。
俺は恐る恐る、血を流すキューピッドに触れようとすると。




