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祝福

「うっわ‥‥‥これがジキルのコレクションか‥‥すげぇ」

片方の壁一面には、リボルバーにライフル。ショットガンに、剣とライフルを合体させたような銃も。とにかく古今東西、ありとあらゆる銃器が立てかけてられていた。

対する左の一面には、反対に、サーベルに剣。槍にマチェーテに日本刀みたいな物まで。古住今来から蒐集した刃物が立てかけられている。あ、あの紅いサーベル、昨日ラハが使っていた物だ。

「男の子って‥‥‥こういうのが好きなんでしょ?」

「意味深な言葉を使うな。それはスカートの隙間からパンチラした時にでも取っておけ」

「君にそんなラッキースケベは一生訪れないでしょ」

「そう言いながら、案外明日とかに起きたりしたりしてな」

「はいはい。そもそも私、スカートとか履かないから。安心しな」

まぁ、俺もそこまでしてラハの下着を見たいわけじゃないしな。ていうか、同じ屋根の下に暮らしているんだ。そこら辺の感覚は鈍ってきそうだ。

「それで、この中から俺の武器を選ぶのか」

「アホタレか小僧。お前、刃物の心得はあるのか?」

「銃の撃つよりは簡単だと思うけどな」

実際、剣とか槍って振り回すだけだろ。

「そんな簡単な物じゃないよ。剣とかサーベルだって、使い方を間違えれば自分を斬ることだってあるんだから」

その点、銃は便利で安全だよ、と。ラハは自分のホルスターから馬鹿でかいリボルバーを抜いた。

「こうやって、ハンマーをカチッて起こして、相手に向ける。後は何も考えずにトリガーを引けばいいんだから」

そう言い、ラハはリボルバーを俺に向ける。黒く縁取られた穴が、俺の眉間に食いつく。

「一応聞くが、弾は入ってないよな?」

「さぁ? どうでしょう? 試してみる?」

「自然な流れでロシアンルーレット始めるな——じゃあ左目一面はなしってことか。それじゃあ」

「かっこいいからって、銃剣はダメだよ。まぁ、ジキルが譲ってくれるわけないけど」

「そういえば、ジキル、この部屋入ってからやけに静か、うっわ」

俺は振り返り、ジキルの方に視線をやると。

「ああ、コレクションは彼の子ども達だからね。見るたびにああやってお世話してあげてるの」

「も、もっと別のやり方があるだろ。絶対」

ジキルはいわゆる女の子座りをし、白銀の上に精緻な金の装飾が施されたリボルバーのバレル部分を、口の中に突っ込んでいる。

「んん‥‥‥ああ。マリィ、今日も調子が絶好調だねぇ」

蛇のように細くて長いジキルの舌が、バレルに絡みついている。

「マリィって、もしかしてあの銃の名前か?」

「そうじゃない? ジキルワールドのことは私も詳しく知らないけど」

ジキルワールドって‥‥‥完全に俺たちのことを放って、一人の世界に入っているのか。

「何だいマリィ。うん‥‥‥うんうん。あいつのところは良いんだね。そっか‥‥‥寂しくないってのは嘘になるけど、君の決めが道だからね。僕は陰でひたすら、応援しているよ」

お、ジキルワールドに進展か。ジキルの独り言だけかいつまむと、マリィちゃん(くん?)と今生の別れっぽいけど。

「あ、そろそろ決まりそう」

「決まるって何が?」

「そりゃあ決まってるよ。キメキメのキメだよ」

「呪文みたいなのはいいから。もったいぶらずに教えてくれよ」

「君の武器」

え。

「泣いてなんかない!!!!」

マリィのバレルがジキルの喉の奥底に突き刺さる。

「たとえ君があいつのとこへ行こうと、僕は君を一生懸命愛すよ。イエス・キリストにも釈迦にもアッラーにも八百万の神にも誓う。だから!!!」

ジキルは慈悲深い牧師のように、その場に立膝になって、手を組んで静かに目を瞑った、

「行ってらっしゃい」

ヒュー。他人事かのように、ラハが軽い口笛を鳴らす。

「君の武器、あのリボルバーで決まりだね。ちょうどいいサイズだし、なんか金ピカでかっこいいし、いいんじゃない?」

「絶ッッ対嫌だ」

他人のよだれまみれだぞ? 死んでも触りたくない。


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