団欒
「ふー、食った食った。お茶とか飲んじゃう?」
「毎日これしか食べてないのかよ?」
俺がシャワーを浴び終わると、ラハが夕食を用意していた。
どんなアメリカンでジャンクな異世界飯が出てくるかと興味半分、恐怖半分だったけど。
出てきたのは。
「その辺の雑草を食べる日が来るとはな」
「だーかーらー! 雑草じゃないって。何度も言えば分かるの? ニワトリさん?」
「なんでその流れでニワトリ?」
「ほら、鳥って三歩歩けば物事を忘れちゃうって言うでしょ? 君もその類かなって」
「そんな馬鹿な鳥じゃない。俺は人間だ。お前との奴隷契約も覚えておるからな」
「私と一生を添い遂げたいっていう内容のね」
「‥‥‥ちゃんと給料出るんだろうな?」
ほとんど成り行きでラハの助手を務めることになったけど、街に下りればもっと割のいい仕事とかあるんじゃないか?
そもそも、俺はこの世界について知らなすぎる。
「なあ? ここってアメリカか?」
「んー? どしたの急に?」
「いや、自分の現在地ぐらいは知りたくてな」
「そこら辺に世界地図なかったけ?」
ラハはベットに仰向けになりながら、本を読んでいる。
「どこだよ」
「そこだって。そこそこ」
本から目を離さず、足のつま先を器用に動かす。
「やっと見つけた」
結局俺はクローゼットを開け、戸棚をあらためてやっとカビ臭い紙の地図を見つけた。
「おお、これは」
元の世界で見た世界地図とまったく同じだ。6つの大陸に、日本も確認できる。
「お、見つけた? じゃあラハちゃんの楽しい地理学行ってみようか」
ラハは読んでいた本を投げ出し、座りながらベットに寄っていた俺の肩越しに顔を出す。
「お前地理学とか分かるのか?」
シャンプーのいい香りにくらっとしたが、努めて冷静にそう言った。
「異邦人の君には常識レベルでいいでしょ?」
まぁ、それもそうか。
「じゃ早速頼む」
「OK。じゃまずは私たちのいる国から。ここはアメリカね。んで、今私たちが居るのがここテキサス」
「悪魔が蔓延るテキサスって聞いたことねぇぞ」
「君の世界にもテキサスあったの?」
「ああ。ていうかこの地図と全く同じだ」
「え、そうなの。じゃあ授業しなくていいじゃん」
「わざわざ読書中にごめんな——それはそうと、ラハってどこの出身なんだ?」
せっかく探して地図を広げたんだ。このまましまい込むのももったいない。
「そういうあんたはどこなのよ」
「俺はここ」
俺は迷いなく日本を指した。
するとラハがぷぷっと軽く吹き出す。
「日本、だっけ? まだまだ未開の島国じゃない」
アメリカがガンマンなら、日本はお侍ぐらいか。じゃあ江戸時代ぐらい? 分かんないけど。
「うっせぇ。そういうお前はどこなんだよ」
ぱっと見ラハはアジア系の顔つきに見える。適当な予想だけど中国あたりか?
いや、さっき馬上で日本を紹介する時に中国の隣って言ってもピンと来てなかったから違うか?
「私は秘密」
「なんだよ聞いといて」
「まぁまぁ。お詫びにお茶を入れたよ」
いつに間にか俺の前にティーカップが置かれている。
「助手の手入れも私の役目だからね」
「なら手入れとか言うな手入れって」
まぁでも素直にありがたい。俺は茶を楽しんだ。
「ん、何の音だ?」
窓にコツンと何かがぶつかる音がした。
「今の聞こえたか?」
「‥‥‥うん」
ラハもそう言うんだし、空耳じゃないよな。




