家
「ほい到着」
「え、ここか?」
岩山の少し平坦になった場所にぽつんと。今にも倒壊しそうな平屋が立っている。
もっとこう、吸血鬼が住んでそうな不気味な屋敷が出てくるかと構えていたが。少し拍子抜けだ。
まぁ、荒涼としたら岩山と豪勢な屋敷ってかなりミスマッチな気もする。
「なに? 文句あるの?」
隣のラハが鋭い目線を飛ばしてくる。
「いいや文句なんかありません。ただ、ずいぶんお淑やかな家に住んでるんだな」
「それって遠まわしにバカにしてるでしょ」
「俺専用の離れとかじゃないよな? どこか遠くにはでかい屋敷があったり」
「もしそうだったら君だけで行かすよ。わざわざ私が案内したりしない」
「だよなぁ」
微かな望みをたった今潰えた。今日からこのオンボロ平屋が俺の家ってことになる。
ああ、一戸建ての自室に引きこもって好き放題していたニート時代が恋しい。
「お邪魔します」
「風が吹けば飛びそうな汚いオンボロ小屋ですが、どうぞ」
「‥‥‥悪かったて。マジで感謝してる」
この世界に転移してからたった一日で職も住居も決まったんだ。ブラック企業なのはほぼ確定で、小屋は廃墟同然だけど、ラハには感謝している。
「どうだが——ベットは一つしかないから君は床で寝てね」
「明日の朝には筋肉痛を覚悟しておいた方がいいな」
「毛布ぐらいなら引いてあげるよ」
ラハはベッドのそばに一年越しに引っ張り出したような、薄い毛布を引いた。
「これじゃ本当にペットみたいだな」
「散歩とか面倒だから君が一人で行ってね?」
「首輪を買う金もなさそうだしな」
「そうだね。水道とか電気も引いているけど、毎月バカにならないお金を払っているんだ。万年金欠だね」
ニートだったからそこら辺の感覚疎いけど、この世界にも電気代とかはバカにならないのか。
「シャワーとかも無闇に使いたくない。なのでシャワーを浴びる時は私と一緒に入ること」
「え?」
俺は自分の耳を疑う? こいつ何言ってるんだ?
「だから水道代がもったいないから、私とシャワー浴びるの。節約、わかる?」
‥‥‥こういう展開はアニメやゲームでしかありえないだろ。
しかも女性の方から誘ってくるとか。千載一遇どころじゃない。
喜んでいいのやら。どう反応返すべきか俺が戸惑っていると。
「まぁ嘘だけどね」
「‥‥‥最初から気づいていたけどな」
決して喜んでないし、期待してたわけじゃない。
最初から俺をからかう戯言だって、気づいていたさ。
「すーぐ顔に出る。やっぱ君をからかうの面白いや」
「いつか痛い目見るぞ?」
「そん時が来たら、助手が成長したってことで。そんじゃ私はお先に」
ラハが浴室へと消えていく




