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大麻

いい加減クサをさばかなければまずい。卸元のチンピラ、渋谷へ収める金がない。クサだけじゃない。ケミカルまで取り扱い、自身が経営するデリヘルの女たちを漬けている男だ。もちろんブラックな付き合いも深い。


俺は葵が買い物に出かけた夕暮れ時に、クローゼットのバックを探した。しかし、バッグがない。黒革のバッグを隠してあった場所には、葵が三枚入り200円で購入したというエコバッグが一つ、柔らかに鎮座されていた。


俺の黒革のバッグには、見つかれば執行猶予もつかない量の大麻が入っている。あれをエコバッグに入れて持ち歩いているのか?しかし、エコバッグは帰ってくる。持ち帰るものだからだ。俺は葵を待った。


しばらくしてドアが開いた。


「京介!今日は八宝菜だよ!ちゃんと具も八種類入れるからね!」


彼女の手にはエコバッグと紙袋がぶら下がっている。


「お前、バッグは?」


葵は笑顔を見せた。


「たくさん煙草のクズが入っていたから捨ててきたよ。そして代わりに買ってきたんだ」


紙袋が差し出された。


「A.P.C.のトートバッグ。布って可愛いよね」


A.P.C.はどうでもいいが、クサがないとまずい。


「明日から教科書を入れて大学に行こうね。お弁当の材料も買ってきたから」


俺は、どうなるんだろうか。五体満足で生きられることを願っていると、八宝菜がテーブルに乗った。もうどうでもいい。

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