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手作りご飯
手っ取り早く押し倒して終わらせてしまおう。そう思っていたが、どうも彼女の動きには隙が無い。正確には色気がない。高速かつ一定のリズムで野菜を刻んでいる音がする。うちにはまな板も包丁もなかったはずだが、持って来たのか?フードプロセッサーの音まで響いている。どうやら用意周到に持ってきているようだ。
「お前、なんだ?」
「ん?お母さん」
埒が明かない。そう思いながら彼女を見ると、ずいぶん美人であることに気付いた。そして確かに18歳くらいにしか見えない。こんな母親の顔、思い出せない。
フードプロセッサーで豚バラの三枚肉をミンチにするという、手の込んだ餃子を食べて落ち着いたので、名前を聞いた。彼女は笑っている。
「葵だよ。名前忘れたの?」
確かに母親の名前だ。最近のストーカーを心底恐ろしく思った。