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一人
部屋で一人になった俺はしばらく呆然とした後、部屋中を見て回った。まな板もフードプロセッサーもない。売り物はバッグの中に入っている。大麻が涙で濡れた。
それから外に飛び出した。バッグに詰めたワコマリアのシャツは、大麻と一緒にゴミ捨て場に放り込んだ。そしてまな板と調理器具を買い、ラルフローレンに走った。大量の荷物を持ち、部屋へと向かう。途中思いっきり転んだ。フードプロセッサーは無事だろうか。
「大丈夫ですか?」
女子高生に声をかけられた。一貫性のない荷物を抱えた無様な姿を見られたことが恥ずかしい。フードプロセッサーも割れていないことを確認し、彼女の顔を見上げた。
「葵!」
彼女は首を傾げている。
「誰ですか?」
葵じゃない。
ただ、彼女にしか見えない。
「ごめん。母親に似てたから」
「私、高校生ですよ」
彼女は笑う。向日葵のような笑顔で。
「荷物、手伝いますね」
俺はフードプロセッサーを奪い取られた。
「どうして?」
「私、あなたの未来の奥さんなの。フードプロセッサーがあるなら、お肉もミンチにできますね」