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睡眠薬
その日は酢豚を食べ、風呂に入った。布団の上にはアイロンのかかったパジャマが畳んである。うちにアイロンがあったか。そんな疑問ももうどうでもいいことだ。
普段は葵に隠しているが、その日は彼女の前で薬のシートを並べ、10粒程度の錠剤を取り出した。そして口に放り込もうとした時、葵がこっちを見ていることに気付いた。
「何それ?」
「睡眠薬だよ。とっとと眠りたい」
彼女の表情は一度曇り、優しげなものに変わった。
「いい子だから、こっちにおいで」
枕の位置をずらし、膝枕の姿勢を取っている。俺は薬を一瞥し、ベッドへと向かった。そして彼女に頭を撫でられているうちに、眠りについた。ここ数年で、最も心地良い眠りだった。