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第42話 参加者

 マコトとの戦闘後、スイーツ巡りをしていた私は偶然にもエイルとリュドミラと出会えた。第四次イベントに参加するための人員を集めようかと思っていたところだったので丁度良かった。

 マコトから言われた手配書のことを思い出す。

 手配書とは最近追加されたシステムで、復讐システムの依頼とはまた異なるものだ。復讐システムはあくまで殺されたプレイヤーが自分を殺したプレイヤーの討伐依頼を出せるというものだったが、手配書は別に殺されていなくても大丈夫なのだ。複数のプレイヤーからの申請さえあれば手配書は完成する。

 手配されるとそのプレイヤーの首には賞金がかかり、倒したプレイヤーに賞金が行く。手配されたプレイヤーは死ぬと監獄エリアとかいう場所に送られる。そこで一定のお金又はアイテムを支払うことで出て来れるというものだ。

 こんな面倒なものにかけられてしまえば、私は終わりだ。きっと魔剣ベイリンも手放さなければならなくなるだろう。一応手配された側からも逆転が可能なシステムはあるらしいが、この際考えないことにしておく。手配されて時点で終わりだと考えた方が、私のやる気が上がる。

 マコトのギルドのメンバーと交渉をする必要があるが、そのメンバーを探し出すのはほぼ不可能。手っ取り早いのはイベントへの参加だ。彼が嘘を吐いている可能性もあったが、それを考えていては何も出来ない。イベントに出てみて、居なかったら居なかったで収穫だろう。

 とまあそんなこんなでイベント参加を決めかけている私だが、問題はあった。かなり単純な問題だ。人数の問題。イベント参加の最低メンバー数が四人だが、フェルが敵に回りそうな現状、私の頼れるプレイヤーは二人だけだ。だから後一人は彼女らのフレンドから選出してもらうつもりだった。

 ……のだけど。


「残念ながら、私のフレンドにイベント参加が可能な人はいないみたいです」

「ごめん、私も」


 とのことだった。イベントの参加とメンバーを募るお願いをする為に蜥蜴亭でスイーツを奢ったというのに。エイルが頼んだのはコーヒー。甘い物はお好きではない様子。リュドミラが頼んだのはイチゴのパフェだ。生クリームだとかアイスだとかクッキーだとかが盛られており、浴びるようにイチゴのソースがかかっていて、至る所にイチゴが入れられている。そんなものがジョッキに入っているのだ。リアルで食べたら一日は何も食べられないだろう。しかも料金も高い。

 私の死にかけのお財布に会心の一撃を加えられたみたいだ。

 

「そんなぁぁぁぁぁぁ!!」


 リュドミラもエイルもフレンドがいない訳ではないが、イベントの日に予定がある人が居たり、そもそもイベント参加して活躍できる実力が無かったりと様々な理由で断られてしまったらしい。

 フレンドを作る努力を怠ってきた私が文句を言えた義理は無い。


「……どうにかするしかないか」

「どうにかってどうするんですか?」

「……そ、それは……その辺の人に土下座でもして」

「やめた方がいいと思う」

「ですよねぇ……」


 となると最終手段も潰えたという訳だ。

 ダメ元で伊織に頼むしかないかもしれない。でもそれをこの二人が了承してくれるだろうか。聞いてみなければ分からないか。


「私のリアルの友人に頼むっていう手もあるんだけど……」

「ノエルさんのですか?」

「うん。二人が良ければだけど」

「私はいいですよ」


 リュドミラの方を見ると、彼女も無言でうなずいてくれた。

 いや、違う。頼んだパフェに舌鼓を打っているだけだ。……まあでも良いということにしよう。


「その方はどこかのギルドに入っているんですか?」

「入ってないよ。そもそもまだゲームを始めてすらいないんだけど……」


 エイルが絶句していた。驚いた。彼女でも驚くことはあるのか。クールに「ふ、むしろ燃えますね」とか言ってくれるのだと思っていた。


「ノエルさん。私をなんだと思ってるんですか」

「……失礼なことは考えてないよ!」


 というか何故彼女は私が考えていることを見抜いたようなことを言ってくるのだろうか。このゲームにそんなスキルがあるのか、それとも彼女の技術なのか。考えたくないが、私の思考が顔に出やすいなんてのもあるかもしれない。


「考えてたんですねやれやれ。……少し意地悪な言い方になりますが、戦力になるんですか? その人は」


 何の遠慮も無いエイルの言葉に私は苦笑した。遠慮しないのが彼女の美点だし、その疑問も最もだ。


「相変わらずバッサリ言いますね……。まあ戦力になるかどうかは分からないけど、足手まといにはならないはずだよ」


 伊織のゲームセンスの高さは折り紙付きだ。彼女は数々のVRゲームをプレイしてきた経験で、初挑戦のゲームで上位に食い込むほどの実力者だ。きっとエンジェルダストでもそれは発揮されるだろう。

 私からの信頼が彼女にとってどれだけの価値があるのかが懸念だ。

 四人という最低人数での出撃で、内一人に穴があったら勝てない。流石に勝てる見込みのない勝負はしたくないだろう。断られるかもしれない。

 と思っていた私だったが、意外とあっさりエイルは快諾した。リュドミラは……エイルに任せるということなのだろう。


「ノエルさんがそう言うのならばきっと強い人なんでしょうね。ええ、分かりました。私とリュドミラさんもイベントに参加します」


 良かった。私の財布の死は無駄にはならなかったようだ。


「ありがとう。リュドミラもありがとうね」

「ふぉんな……ふぃにひなふへいいほ」

「やべぇ、何言ってるか分かんねぇ」

「そんな気にしなくていいよ、と言ってます」

「通訳さん?!」


 あとは伊織が来ればいいだけだ。早ければ今日からやれるという話だし、一度彼女に連絡を入れてみるのもいいかもしれないなと思いつつ、私はパンケーキを注文した。

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