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第34話 古き騎士の遺構Part5-蛸狩り-

「うおおおおお!!」


 魔剣ベイリンを構えて私は駆け出す。周囲に集まったタコ足が私と叩きのめそうと、鞭のように地面を打ち鳴らす。

 隙らしき隙は見えない。タコ足を正確に回避しつつ、タコ本体まで向かうのはちょっと骨が折れる。

 縮地はクールタイム中。頼れるのは自分のプレイヤースキルだけだ。


「必殺……」


 地面を強く蹴りだすと同時に、短剣を横に振り抜きつつ体を旋回させる。私の体がコマのように回転しながら敵に向けて飛び出す必殺技。


「スパイラルエッジ!!」


 私に一斉にかかってきたタコ足全てを切り刻みながら、私はタコ本体へと最接近する。

 滅っ茶苦茶目が回りながらも私はどうにかバランスをとり、地面に着地した。


「おえっ……っとと」


 さてこのタコどう調理してくれようか。嘆きの一撃を当てるのが一番なのは分かっているが、問題なのはどこが首かだ。いや嘆きの一撃ならアバウトに撃っても首に当たりそうな気はするが。


「うーん。適当に使いたくは無いな。一応決め技のつもりだし。不本意ながら。まあここは順当に」


 私は一気に跳び上がってジャイアントオクトロードの顔と足の丁度間ら辺を短剣で切り付ける。大体顔の下は首だろう。予想通りというかなんというかダメージはあったが、あまり効いていない。


「まあこんなもんだよねー……私のただの物理攻撃じゃあ」


 それに毎度毎度ボス相手に少人数で挑んではいるが、こいつもそれでどうにかなるのかという心配もあった。PKがメインコンテンツみたいなところはあるにしても、ボスを二三人程度でどうにかしてしまうのも間違っている気がする。


「ん……これ……」


 私が何もしていないのにジャイアントオクトロードのHPバーがガクンと減ったのを確認した。おかしい。私の攻撃に後から効くようなタイプの物はない。考えられるとしたら、私の後ろにうねうねとうねっているあのタコ足どもとHPを共有している説だが……。


「エイルとリュドミラにもタコ足が襲い掛かってるとしたら……」


 その可能性は高いとみていいだろう。それだとしたら、私のやることは一つだ。だがそれをする為にはこの場所は危ない。ここでは確実に邪魔されてしまうだろう。

 私が動こうとした時、タコ足の一本が私の右足に絡みついた。


「ちょっ?!」


 タコ足を切ろうとするも間に合わない。右足から宙吊りにされるように、私の体は持ち上がる。そしてぐわんと鞭のようにタコ足が動き、私は投げ飛ばされた。


「ぐ……っ、これは……ちょいヤバめ」


 弾丸もかくやなスピードで吹き飛ぶ私はそのまま地下空間の壁に激突した。ズドンという甲高い衝撃音をたて、辺りに瓦礫が舞う。


「痛っ!」


 ガクンと減って真っ赤になったHPバーを見て安堵する。我ながら紙装甲過ぎた。ジャイアントオクトロードからはかなり離されてしまった。近付くにも縮地はまだクールタイム中で再使用までは時間がかかる。それを待っていたらきっとタコ足に滅多打ちにされて死ぬだろう。

 だが、これがいいのだ。


「ここに来たかったんだよ。生えてるタコ足全部を見渡せるここにさ!」


 私はスキルを発動させる。キーンという音を立てながら魔剣ベイリンが消失すると共に、右手に眩い光が集まる。フラッシュステップによるチャージは無いが、あれだけのタコ足を全て巻き込んだならワンチャン倒せるかもしれない。


「……」


 私の攻撃に危ないとでもAIが判断したのか、タコ足が一斉にこちらへと伸びてくる。

 良かった。逃げられたら大変なことになっていた。

 逃げずに私に向かって来てくれたから、確実に奴らに嘆きの一撃をブチ当てることが出来る。


「チャージ完了! 一気に、吹き飛べぇぇぇぇ!!」


 私の手から伸びる光の柱は、私に向かってやって来るタコ足全てを巻き込み、ジャイアントオクトロードへと迫る。移動手段を持たないジャイアントオクトロードは墨の溶解液を出して抵抗をするも、あっけなく光の柱に飲まれて消滅していった。


「……つか倒しちゃってるし」


 やっぱりダンジョンで遭遇するようなボスはレイドボスと比べて弱めに設定されているのだろうか。まあそりゃあそうだろうという話ではある。ただでさえ狭い道も多いダンジョンを10人単位で行軍するなんて地獄でしかない。


「私がギルドを作るのは無理だな。うん」

 

 いつか大きなギルドを作ってみたいという、かすかに浮かびかけていた私の夢はこうして人知れず消え去っていくのだった。


  

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