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第14話 決闘

ここから色んな登場人物を出していこうと思います!

ソロプレイヤーノエルの成長の時……!

 【ジエンマ廃坑街】。そこは鉄と火、それから鉱山の街だ。近くには巨大な火山もあり、しょっちゅう噴火しているせいか、このエリアの空はずっと雲に覆われている。雨の日以外はほとんど綺麗な青のルミナリエとは大きな違いだ。

 私はそんなジエンマ廃坑街の酒場に来ていた。ここは名前の通り廃坑に作られた街だ。暗い土の中を工事現場の明かりのようなものだけが照らす場所。熱くて、空気が悪い場所だ。絶賛街開発中なのか、NPCの人通りも多い。他の街ではというかルミナリエではNPCとぶつかっても、何も言われないのだが、ここでは結構な剣幕で怒られるので、私は既に二度ほど強制ログアウトをしている。

 酒場もアングラな空気感のあったルミナリエと違い、活気と男の汗に包まれている。まさに働く男の休憩場といった感じだ。小娘一人でいるとアウェー感がある。周りを見ると既に満席だが、女性プレイヤーは私しかいない。だからか、さっきから視線を感じたのは。奇異の視線は落ち着かない。

 街の中ではPKをされないため、安全だと思っていたが、その手のナンパとかの危険もあることをすっかり失念していた。

 カウンター席で水をちびちびと啜っていると、背後から男性プレイヤーが近付いてきた。自然と背中がこわばる。


「ねえ君、一人かい?」

「え、えっと……そうですけど……」


 ダメだ。顔もまともに見れない。声量も自然と下がっていく。女性プレイヤーも怖いが、男性プレイヤーはもっと怖い。現実でも兄と父以外で男性の知り合いなんていない。免疫が付いてないのも当然だ。私に声をかけてきた男は、何て言うか気さくそうな人で、声は綺麗だ。多分、顔もカッコいいのだろう。


「俺も今、一人なんだけどさ、どうかな。一緒にパーティ組まないかい?」


 これは私にとっての初めてのパーティ勧誘だった。彼の思惑は違うのだろうけど、初めてのパーティ勧誘に私は舞い上がってしまっていた。この人が男だとか、もしかしたらナンパされているのかもとか、そういった諸々は既に思考の外にあって、私はただパーティ勧誘をされたことを喜んでしまっていた。隙だらけだと自分でも思う。

 そして口の動くままにいいよと言いそうになった時、


「無理よ。その子は私とパーティを組むんだもの」


 横合いから女の子が現れた。現れたという表現は正しく、この女の子は今この瞬間、酒場に現れたように感じたからだ。

 雪の様な綺麗な白髪、透き通るような白い肌、そして赤と黒の絵の具をぶちまけて混ざったような色をした怪しげな瞳。ピンと張ったまつ毛に、ドレス衣装。そのどれもが完成された芸術のようで、とても人とは思えないくらいの美しさを放っていた。目を奪われるほどの美少女。今この酒場という空間で、彼女以外の人間は誰の視界にも入っていないだろう。それほどの存在感。

 ドレスは胸元や背中、腕が大胆にも露出しているものだが、不思議と無防備さは感じない。彼女の威光に照らされていた男ははっと意識を取り戻すと、彼女につかみかかる。


「無理って何だよ。俺が先に声かけたんだから、あんたにとやかく言われる筋合いはねえよ。それともなんだ? あんたの方が俺に興味あるのかな?」


 男は不躾な視線を彼女に送る。彼女の顔を見て、それから体を舐めるように見ていた。私を見ていた時との違いは感じた。そりゃあ女としての格の違いは歴然だろう。女の子は正に国宝級のスタイルを持っているし、私なんかと比較するのも気が引ける。

 もはやコールドゲームだ。だけど何だか納得がいかない。

 女の子は怪しく笑いながら、男の視線を受け入れていた。そしてまるでそれが当然であるかのように、彼女に手を伸ばした男の手を彼女は優しく手で包み込んでいた。


「ふふ、それ以上はハラスメントになるわ。それに、私の相手をするにはあなたは弱すぎる。無論、彼女の相手をするのにもね」


 唐突に話題にされた私だが、何も言えなかった。彼女の目を見ていると何だか吸い込まれるような気がするのだ。思考が中断される。何も抵抗が出来ない。

 しかし弱すぎるとは。面と向かって言うのはいくら何でも失礼過ぎないか。おまけに私より弱いと言ってしまっているし。

 男は当然の如く怒っていた。


「お前な、俺がこの街でなんて言われているか知っているか? 【暴食】のディランだぞ。男も女も食い殺す。その俺を弱いだと……?」

「食い殺すのは怖いからでなくて? それともあなたは自分の本当に実力に気付かない愚か者さんなのかしら?」

「それは喧嘩を売っていると取っていいんだな?」

「どうぞご自由に」


 男……ディランは指を動かしていた。

 きっとあれは決闘を申し込もうとしているのだろう。女の子もそれに応える。酒場にいる他の男達も彼女らが何をしようとしているのか気付いたらしく、テーブルや椅子を動かして開けた場所を作っていた。

 【決闘システム】というのがある。互いの合意の上で、プレイヤー同士が戦うものだ。PKと違うのは合意があるという点で、その為、決闘で相手を殺しても何もドロップしない。レッドプレイヤーになることもない。私は気に留めてもいなかったが、やる人はいたらしい。

 二人が一定の距離をとって向かい合う。参加者でない私には分からないが、決闘が承認されると、それぞれのプレイヤーにはここに立てと示す何かマークのようなものが見えるらしい。2メートルほど離れて向かい合う2人。人によっては既に必殺の間合いだ。


「これはすごい戦いになるぞ……」

「ああ伝説が、始まる……! 俺たちはその証人になるんだ!」


 隣にいる男性プレイヤー二人組がそんなことを言っていた。よく分からない。

 ディランと女の子が武器を構える。5秒のカウントダウンが終わるとほぼ同タイミングで二人は動き出した。

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