第28話 炸裂! 竜魔術!
「「「「ドラゴン・アロー!!」」」」
カードに彫り込まれた魔術構成に元素力が注がれ、風の矢が襲撃者たちに降り注ぐ。
構成に元素力が充填されるまでの僅かな時間で、6人のうち2人が防御魔法を完成させる。
「ウィンドシールドっ」
「バカ、避けろ!」
ガラドが叫ぶが、もう遅い。
術者の周りに渦巻いた風の盾を突き破り、魔術の矢が血をしぶかせる。
防御魔法で弱められたので軽傷で済んではいるが。
一方、防御魔法を使わなかった4人は位置をずらして魔術の矢を避ける。
「魔術での攻撃なんだから、真っ直ぐ飛ばすのが関の山。避ければすむことだろうが!」
「す、すまん」
襲撃者たちが魔法使いであり、相手である生徒らも魔法使いだという認識が生んだ判断ミス。
だが、まだ致命的なものではない……と襲撃者らが反撃の魔法構成を編み始めた時。
とりあえずユキと抱き合うのは止めたものの、どう動いたものか迷っていたエルヴィナの耳に、モトリが囁く。
「エルヴィナさん、風の精霊力を強化してほしいっす」
「できるけど……いいの?」
精霊王はその場の特定の属性力を強化したり弱めたりできる。しかし、その効果は味方に限らない。つまり、風の精霊力を強化すると、襲撃者たちも風の魔法を使いやすくなる。
それでもいいのか、と問うたエルヴィナにモトリはニンマリ笑みを浮かべる。
「ぶっちゃけ、いま皆が使ってるアレ、エルヴィナさんが風の精霊力強化すること前提で組んでるので」
「この地にある風の精霊たちよ。ひと時の間、力を貸せ」
精霊王の呼びかけに、中庭のあちこちで風が渦を巻く。
「第二斉射!」
「「「「ドラゴン・アロー!!」」」」
アーベルの号令に応え、風の元素力が皆の持つカードに吸い込まれていく。
魔力を元素力に転換する普通の魔術とは比べ物にならない速度で第二斉射の矢が放たれる。
襲撃者らは慌てて――今度は6人全員が――回避する。しかし、魔法の構成を編む方を重視した1人がかわし切れずに膝に矢を受けた。
「ふざけんな! なんだそれ!」
あり得ない連射速度に、ガラドから抗議の声が上がる。
普通、魔法と魔術なら魔法の方が早いというのが一般常識だ。
魔法は魔力で構成を編むのに少し時間はかかるが、その後の元素力を得るのが早い。
魔術はあらかじめ作った構成に魔力を通すだけでいいのだが、その後魔力を元素力に転換するのに時間がかかる。
合計時間では魔法の方に軍配が上がるのだ。しかし、
「魔術と魔法のいいとこどりってことか…?」
ユキの驚きに、モトリが嬉しそうに答える。
「そういう事っす。魔術と同じあらかじめ作っておいた構成カードに、魔法のように周りの元素力をそのまま注ぎ込めば、最短時間で発動できるってカラクリっす」
カードをこっそりクラスメイトに配り歩いたのもモトリの功績だ。
「竜魔法、いや、魔術ベースやから竜魔術て言う方がはまるやろか」
カードを作らせ、配らせたアーベルも満足げだ。そもそもこの竜魔術はイラズアが吐いていたブレスの仕組みを参考にしている。
だが、ここで襲撃者の反撃が始まった。
膝に矢を受けて跪いた一人が、そのまま魔法を完成させる。
「ロキめ、天罰を受けるがいい! セブン・パニッシュメント!」
「サンダーシールド!」
とっさに雷属性であることを見切り、ユキは自分の身を守るために魔法を使う。
しかし、次の瞬間判断ミスを悟った。
中庭上空に現れた雷の弾は、呪文名の通り7つあったのだ。
1つはユキに、1つはエルヴィナに、1つはアーベルに。残り4つもクラスメイトらを分散して狙っている。
ユキに出来たのは、とっさにエルヴィナを抱き寄せて魔法の盾の中に入れるところまでだ。
アーベルは自身を狙う雷弾をただ眺める。
魔法は対象を自動追尾するので避けられるものではないし、もとより車いすの彼女に回避行動は出来ない。
「斬魔一閃!」
ライルの呪文が響き、魔法をのせた剣の刃がアーベルを狙った雷弾を切り裂いて無効化する。
他の4発は、皆慌てて防御魔法を唱えたが、1人間に合わなかった。
まともに食らって倒れたクラスメイトを見て、アーベルが指示を飛ばす。
「ライル、エディの救護に入ったって。モトリは仕掛けをはじめ。撃てるもんは第3斉射B!」
クラスメイト達がカードを掲げるが、その数は三分の一ほど減っている。防御魔法で威力を削いでも、結構なダメージだったのだ。
それほどに襲撃者と1年生の実力差は大きい。完全に防御できているのはユキだけだ。
「ユキ、あの人を狙って」
ユキの腕の中で、エルヴィナが襲撃者を指さす。まだ負傷しておらず、ユキからはかなり離れたところにいる一人だ。
「え、でも」
「いいから!」
負傷者から先に戦闘不能にしていこうかと思っていたのだが、エルヴィナに押し切られてユキは編み始めていた魔法構成の目標を変える。
「「「ドラゴン・アロー!!」」」
3発目ともなると、襲撃者たちの対応も慣れてきている。5人は魔法の構成を編みながら、跪いた1人ですら、そのまま倒れ込むことで矢を避けた。
避けたはずだった。
外れたはずの風の矢が、突然向きを変えて襲撃者のうち3人を襲う!
「何だとっ!」
予想外の動きに、狙われた3人は避けることはおろか防御魔法の発動も間に合わず、複数の矢にめった刺しにされた。
同時に、ユキは残った3人のうちの1人をめがけて魔法を放つ。
「エアーマシンガン!」
「ウィンドシールド!」
攻撃魔法の構成を捨てて、一瞬で防御魔法の構成を編んだことは評価に値する。
エルヴィナが風の精霊力を活性化させていたため、ギリギリで発動が間に合った。
出来上がったばかりの風の盾を、ユキの放った風の弾丸が叩く。
貫通力の無い球状の弾丸は、盾を大きく歪めただけで終わった。
「はっ!」
意外と大したことがないな、と続けたかったのだろう。だが、その前に2発目の弾丸が盾をさらに歪める。
3発目はついに風の盾を破壊し、4発目、5発目、6発目、7発目が襲撃者の身体を打ち据える。
「やった!」
快哉を叫ぶエルヴィナ。6人いた襲撃者をあっという間に2人まで減らしたのだ。
だが、ガラドの顔に焦りはなかった。
「流石の火力だな、ロキ。だが、まだ終わりじゃないぜ」
ユキの周囲がふっと暗くなった。
多対多のバトルは難しい。
分かったうえで挑んでるんですけどね。
こう書いた方がいいんじゃないか、ってご意見があればお気軽にお願いします。




