表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/31

第27話 俺はユキだ

「違うよ。ユキはユキだよ! アーベルだって、ほんとは分かってるくせに!」

 モトリの腕を振り払い、エルヴィナはアーベルに詰め寄る。

「ユキはユキの世界が嫌いだった。ユキの世界にいても良い事無いって。

 ユキはユキも嫌いだった。自分なんか、何も良いところ無いって。

 だから、ロキに入れ替わられて、この世界に来た。

 でも、あたしは知ってる。ユキはいいところたくさんあるよ。

 この世界にもいいところはいっぱいあるよ

 あたしがそれを教えてあげるから、だから、この世界を好きになってほしい。

 あたしはそう約束したよ!」

 アーベルに、そして学校中の皆にそうまくし立て、最後にエルヴィナはユキを見た。

 空の色を写し取った青い瞳が、たまった涙で揺れる。

「ユキもユキだよ。うつむいてないで、顔を上げてよ。私を、みんなを、世界を見てよ!」

 思わずエルヴィナに向けて一歩踏み出そうとするユキ。

 それを阻んだのは、首筋に当てられたままの鋼の刃だった。

 斧の刃を掴み、その持ち主と向き合う。

「アーベル、俺はユキだ。ロキじゃない」

「さっさとそう言えばええねん」

 アーベルの目が変わる。詰問から、わずかに笑みを含んだものに。

 斧を引くアーベルを見ながら、ユキは一つ理解する。

(ああ、そうか)

 何を言いたいのか分からなかったのは、ユキが何かを言わせようとはしていなかったからだ。

 ユキが何を言っても、それを聞いてくれるつもりだったからだ。

「ユキっ!」

 斧が無くなったのを見て、ユキに向かって飛んでくるエルヴィナ。

 エルヴィナを待つユキの背をライルが平手でたたいた。

 これまでのいらだちと励ましを一緒にした、叩いているようで押しているような、そんな一撃。

 それに押されるようにして、ユキはエルヴィナとの最後の一歩の距離を詰めて抱きしめた。


 抱き合う二人を横目に、アーベルは斧を襲撃者に向ける。

「聞いての通りや。ロキなんて生徒はうちのクラスにはおらへん。

 誰にガセ情報聞かされたんか知らんけど、さっさと帰りなはれ」

「どう見てもロキの顔した奴が、自分で否定したからって、『はいそうですか、失礼しました』ってわけにゃぁ行かねぇだろうがよ」

 拒絶する襲撃者のリーダーに声をかけたのは、ティカだった。

「じゃ、じゃあ、ロキかもしれないってだけでユキくんを殺すんですか。後輩なのに」

「後輩? じゃあ、この人たち先輩なんすか?」

 ティカの手に金属のカードを押し付けながらモトリが問う。

 ティカはいつも通り自信なさげに。でもしっかりとうなずいた。

「私が魔法を使おうとしたとき、『今の学園生も』って言いました。

 つまり、以前の学園生を知ってる。

 学校の状況とか、どの教官がどこにいるとか分かってた感じだし。

 それに魔法の構成の編み方の癖に見覚えがあって……」

「ほんとに勘が良いな、一年生」

 ティカの推測を遮り、リーダーは自分の頭巾に手をかける。

「お、おい」

「心配すんな、俺が俺の勝手で顔をさらすんだから、あんたらにゃ迷惑は掛からん」

 止めようとした他の襲撃者を制止し、リーダーは頭巾を脱いだ。

 精悍な顔つきで、長い耳がエルフであることを主張している。

 彼は瞳に強烈な憎しみを宿してユキを一睨みした後、ティカに視線を戻した。

「俺の名はガラド。確かにお前らの先輩だよ。

だがね、俺の後輩はそいつ一人じゃない。かわいい後輩たちがロキに騙されるのを放っておけない」

エルヴィナを放し、ユキはガラドに語り掛ける。

「俺はロキじゃない。同じ顔なのは理由があって……」

「それをどうやって証明する?」

「それは……」

 言いよどむユキ。ロキと世界を越えて入れ替わったから、と説明することは出来る。でも、証拠は何一つない。嘘を言っていると思われたらどうしようもないのだ。

 そんなユキを、エルヴィナが背中から抱きしめ、ガラドに向かって舌を出した。

「証明なんかしなくても良いよ。あたしたちは信じてるもん」

「お友達なら信じてくれるかもな。でも、普通の奴は納得しない。そして、ロキを殺したがってるのは俺たちだけじゃない。

 今日、ここで素直に俺たちに殺されろ。じゃなきゃ、大事なお友達が巻き添えで死ぬぞ。

 そこのドワーフみたいに、半欠けで済むって保証は無いんだ」

 ユキは思わずアーベルを見る。

 足を失ったドワーフの姫は、柔らかく包容力のある笑みを浮かべ、ゆっくりとユキを諭す。

「気にせんでええよ。ウチが自分で決めたことやし、負けはしたけど、失った物より多くを得た自信があるんよ」

「でも……」

 ユキが反論しようとしたとき、アーベルの後ろに戻ってきたモトリがアーベルの肩を叩いて合図した。

 アーベルは腹心に親指を立てて見せると、声を少し大きくする。

「ほな、決をとろか。リエル組の中で、ユキをユキと信じ、クラスメイトを害そうとする敵に立ち向かえるもんは挙手を」

 アーベルの声に応え、いくつもの手が上がる。

 モトリの、ライルの、ティカの、他のクラスメイトらの。

 その数合計18。ユキとアーベルを除いたリエル組の生徒全員分だ。

 そして、その手のすべてに同じ柄をした金属のカードが握られていた。

「決まりや。第一斉射!」

「「「「ドラゴン・アロー!!」」」」

 カードに彫り込まれた魔術構成に元素力が注がれ、風の矢が襲撃者たちに降り注ぐ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ